┅ ✤BLを含む完全妄想のお話です✤┅ 









「う〜、今朝も冷えたな〜」


週の真ん中水曜日、オレはゴミ袋を一つ持って部屋を出た。


それをマンション専用のゴミステーションに置いて、通い慣れた駅への道を歩き出す。


途中、戸建ての住人が使用するこの地区のゴミ置き場の前を通る。


道路に面したそこにはネットがあって、カラスに散らかされない為にキチンと中に入れるようになっている。
きっと当番なんてのもあるんだろうな、マンション住まいの俺には無縁だけど。




「やっぱりお前はまだここにいるんだな」


ネットに入りきれないコイツ、大きなクマのぬいぐるみに話し掛ける。


電柱に立て掛けられるように座らされてるコイツを見るようになって一週間


座っててもオレの胸元辺りまであるコイツは、投げ出された足の長さから立たせたらきっと俺くらいの身長になるだろう。


この辺では粗大ゴミ扱いとなるこの大きさのコイツは、通常のゴミの日では回収されないらしく一週間前からずっと同じ位置に座り続けていた。


証紙を買って粗大ゴミセンターに収集依頼の電話をして……面倒になった持ち主が不法投棄したんだろう。



一週間前、はじめて見た時
まだまだキレイなクマに向かって


「可哀想になぁ……」


今考えれば不思議だけどその時はホントにそう思ったし、潔癖ってわけでもないけれど普段なら絶対しないのに、ふと手が伸びて柔らかそうな頭をぽんぽん……


「行ってきます」


そうしたのは何か惹かれるものがあったからかもしれない



当然帰りも同じ道を通るわけで


ただいまの挨拶をして


「今夜も冷えそうだぞ?暖かくしろな?」


今週に入ってますます寒くなってきている。
出来ないのはわかってるのにそう声をかけていた。動けないコイツが暖を取る事は難しいし、そもそもふわふわの毛並みのクマなんだ、毛布なんて必要ないのかもしれないだろうけど。


いやいや、まてまて
そういう問題じゃない
コイツはぬいぐるみだ
寒いわけはないんだよ


「ふはっ、俺何言ってんだ(笑)」


自分が言った事に笑みがこぼれた


それでもやっぱり気になるコイツ


そうだ、明日アレを持って来てやろうか……


「一晩我慢してろよ?」


俺はクマにおやすみと声を掛けてその場を立ち去った。