「じゃあ櫻井、またな〜」

「おう、また明日」


親しい友人と別れ、いつもの場所へと向かう。


大学構内の付属図書館。


一般の図書館とは違って、子供向けの絵本やキッズルーム、雑誌や趣味の本などはない。代わりに講義に関する資料や文献なら大抵の物は揃う。

今はネットを使えば何でも調べられるけど

レポートに必要な本を探し選んで借りる

こんな昔ながらのやり方も嫌いではない。


今日は夕方からのバイトにここから向かう為、時間潰しも兼ねてこのまま館内で過ごす。

窓際に一人用のデスクが等間隔に配置されている。その一つに荷物を置き、目当ての本を探しに行く。3冊程見繕って席に着く。


講義室がある一般棟や、学食やカフェテラスから離れたこの図書館は木々に囲まれた静かな場所にある。もっとも今は1月。木々の葉っぱは落ち、外からは丸見えだ。

隣接するのは事務室や教授室のある管理棟。生徒の出入りは少ない。

換気の為に窓を開けても騒がしく感じる事はなく、お気に入りの場所でもある。

そんな好立地であるはずの図書館の唯一の建築ミスと言えば、教授室の窓が丸見えというところ。


窓が西の方角に面してる教授室。

その部屋のカーテンが、西日が射し込む午後のこの時間に空いているのは珍しい。



こちらからは1階上にあたる、カーテンの開けられたままの部屋の窓際に人影が見えた。


陽の光に包み込まれるように空を見上げる、綺麗でいて、どこか寂しげな表情をしている人がそこには居た。