最近、やっと教室で写真を撮る余裕ができてきた。




今日は羽化したアゲハを逃がした。




わたしがアゲハの写真をとろうとする。





子供が言う。








「ねえ先生、ぼくのこと、撮ってよ!」




わたしはその眉間にシワを寄せて訴える視線をおよそ驚くほどに愛しく微笑ましくおもう。







わたしは



「わかった、わかってる、ちゃんと撮ってあげますよ」



と言ってカメラを向ける。







子供たちがフレームに溢れるほどに押し寄せる。






「わたしを見て」「ぼくを見て」





「わたしを、ぼくたちを、記憶に刻んで。瞬間を刻んで。いまこのわたしたちを。」






という素直で無垢な気持ちの現れ。





大人になってしまうと、写真写りや諸々を気にするあまりこの素直な欲求を忘れてしまう。というか、現せない。






わたしはこの子たちの純朴な欲求を全て受け入れたいと望む。






それがシャッターを切ることで少しでも叶えられるのなら、わたしはこの子たちのためにいくらでもその行為を繰り返そう。刻もう。わたしは君を忘れないし、残しておくよ。いまここに生きていることの証明を。一緒にいたことの一部分を。









フレームから溢れた君の表情。笑顔。





アゲハが舞う空を見上げて






「鳥に食べられるなよ!バイバイ!大きくなれよ!」





と叫ぶ君の大きな優しい姿。







わたしは見たよ。確かに見たよ。覚えておくよ。






君を、撮らせてね。
愛しそうにも見える眼差しでわたしを呼ぶ。








「お姉ちゃん」








わたしは妹を愛していると実感する。




それはもう無条件なほどに。






わたしはこの子と血が繋がっているという確かな実感。




似ている口元。




妹を愛することは自分を愛すること。




自分を愛することが許される瞬間。








近頃、妹がとても痩せた。





尖った肩。





その肩を心で抱く。






泣いていいよ。わたしが責任をもって受け止めるから。






大丈夫だから。






わたしはこの子の糧になる。



わたしはこの陶酔に一生浸ってしまうのだろう。

高い声がでなくなった。





驚くほどに。








いくら飲んでも





いくら咳をしても





いくら声を出しても







枯れることの無かったこの声をほんのちょっぴり自負していた。







それが、今は。








高音が出ないんだ。








夢のハスキーボイス。そう思えれば楽なのだが。








きっとこれは神様からの忠告。と、考えてみる。










優しく。美しく。よりしなやかに。









そうすれば取り戻せるよ。







今のわたしは自分で自分の喉を絞めてしまっている。






強く慈しむような力で。自らの手で。








その手を





優しくほどけるようになったとき








きっと35人の首にかかる手もほどかれるのね。









もっともっともっと 上手にならなくちゃ。








わたし。せんせい。上手になるからね。待っててね。ごめんね。














一人の夜は





いろんな人を思い浮かべて





その一人一人と会話をする。







会ったらこれを話そう。飽きるまで。話をしよう。





あの子のあの人の時の流れに。少しだけでも。乗っからせてもらおう。





寄り添って。浮かんで。流れて。おなかいっぱいでおうちに帰ろう。








涙の過去も全部綺麗な桃色に塗り替えて。









愛した記憶を嘘にして。








一緒だね、ってゆってくれたことに依存してしまおう。





一緒だね、ってゆってくれることに甘えてしまおう。









なんだか急に恋しくなるよ。













今ならごめんねってゆえるかな。





今なら伝えられるかな。







ううん






ゆえなくても伝えられなくてもいいよ。







ただあなたが大丈夫であることを確認させて。







わたしなしでうまくうまくできていること。







残酷な現実を突きつけて。









すっかりすっきりさせて。








話をしよう。