少しずつ行動を起こせるようになってきて、それに自信を持てるようになって来たのは、
冬間際の事だった。
なかなか昼間起きられずに、夜寝られずに、夜遅くに散歩をしてみたり、
1時間ほどかけて図書館に歩いて行って見たりすることもあった。
それでも、自分で決めたことをやれた時には、疲れと同時に少しずつ達成感も
味わえるようになっていた。
感情が、心が動いているのを感じられた。
それと同時に、心が動くと疲れるんだという事も分かった。
身体を動かす以上に、感情が動いたときにはどっと疲れる。
知り合いに会ったり、友人と話をしたりすると、心が動く。
そうすると、なんだかそのあとはマラソンでもしたかのように
身体がつかれる。
緊張などもあったのかもしれないが、
心も身体も疲れるのだ。
それが心地よく感じられることもあれば、
そうではない時もあった。
そうこうしながら、何とか自分で心のバランスを穏やかに保つことが
できるようになってきて、
また新しい問題が出てきた。
生活費。
お金の問題だ。
私が鬱であることは、会社の社長夫妻以外、まだ誰にも言っていなかった。
6か月間の休職を経て、退社することになった。
失業保険なども出るのは出るが、それでも生活が苦しかった。
気持ちも体調も安定してきたとはいえ、仕事ができる状態かと言われたら、
また迷惑をかけるかもしれない。
そしてそれがストレスになることは目に見えていた。
もう生活ができない。
そう危機感と焦りを感じ、
相当な勇気を振り絞って、実家に帰った。
クリスマスの夜だったと思う。
寒い中、突然帰ってきた私に動揺を隠せなかった母だったが、
何かを察したかのように、
一万円札が数枚入った封筒を黙って渡してくれた。
「私、鬱になった」
泣きながら、やっと絞り出した言葉がそれだった。
実家までは車で30分ほどしかかからない。
お盆やお正月に実家に帰っても、「うん」「へぇ」「そう」等の返事しかしなかった私が
突然帰ってきたかと思ったら、その言葉。
母もきっとたくさん言いたいことはあっただろうが、
お互い余計なことを言うことなく、言葉少なに会話をして、実家を出た。
やっぱり、母はいつまでも私の母だった。
