小学校の頃からわたしは亀を飼っていた。
母がバザーのようなところで買ってきたミドリガメだ。
理科の時間、水の中の生き物について勉強する時には、亀を学校に連れて行ったこともある。
よく脱走する亀だった。
ウサギとかめの話なんて嘘だと思うほど、うちの亀は逃げ足が早かった。
外に出して少し目を離すと、ダッシュで逃げようとする。
一度脱走し、隣の家で発見されたことがある。
そんな亀だったが、我が家で20年程生きていた。
普段は黒い壺のようなものに石と水を入れ育てていた。
ある日、叔母が亀用にと白い大きなコンテナーをくれた。
そのころには主に世話をしていたのは祖母だった。
祖母は「よかったね~」と嬉しそうに亀を白い入れ物に移し替えた。
ところが数日たったある日、亀が突然お亡くなりになった。
後でわかったのだが、白がストレスを与えてしまったらしい。
かわいそうなことをしたなと思ったが、誰も悪くない。
わたしは大人になっていたのでさほど悲しむこともなく、そもそもとっくに自分で世話をしていないのだから当然なのだが、亀が死んでしまったという現実を静かに受け止めた。
祖母がわたしのところに死んだ亀を見せに来て、
「亀ちゃん死んじゃったよ。」
と悲しげに言った。
わたしが育児放棄したためにおばあちゃんが一生懸命育てたのだから、さぞ悲しかっただろう。
「じゃあ、もういい?」
といい、祖母はそっと亀を生ごみに捨てた。
おばあちゃん、マジか。
そこは庭に埋めるとかでしょ普通。
祖母曰く、腐って臭いがするのが嫌だったらしい。
あっけなく我が家の亀はおばあちゃんの手により生ごみとなった。