じゅんさんのまゆげ | ○○な話

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すべらんなー

わたしが中二の時、同じクラスにじゅんさんという女の子がいた。


じゅんさんは帰国子女で本当はわたし達より一つ年上だった。


そういう理由もあり、みんなは彼女をさん付けで呼んでいた。



じゅんさんの見た目を一言で表すと


ゲジまゆ


誰もが同じ印象を持つほどの身体的特徴があった。


帰国子女だからということもあり彼女の空気を読めない感じや少しずれている感じを、クラスメイトは快く思っていなかった。


やがて男子も女子もじゅんさんをゲジまゆとかゲジゲジと陰であだ名を付け、呼ぶようになっていた。


それに気付いた彼女は、担任の先生に言いつけた。


その時の担任の先生は20代前半の女の先生だったが、いつもジャージでとてもかわいいとは言い難い、メイクもほとんどしない男性の様な人だった。


いわゆる熱血青春ドラマタイプの先生。


その日のホームルームに、先生は泣きながらみんなに訴えた。


「じゅんのまゆげは亡くなったお父さんの形見なんだ!それを悪く言ってからかうなんて!!」


いつも男のような先生がそんなに泣くなんて。


いけないことをしたと誰もが反省した。


それから彼女をゲジまゆと呼ぶものはいなくなった。





そんな出来事も時とともに忘れ去った。


高校生になった頃、アムラーという言葉が大流行した。


安室奈美恵ちゃんの髪形やメイク、服装をまねる若い女の子たちが街にあふれた。


わたしも例にもれず、流行に乗っていた。


ワンレングスにシャギー、茶色い髪。


鮮やかな色のアイシャドーと細い眉。


台形ミニのスカートにブーツ。


当時みんなが同じ出で立ちだったのだ。



ある日わたしは駅で久しぶりにじゅんさんを見かけた。


そして愕然とした。


なんと彼女も完全なるアムラーに華麗な変身を遂げていたのだ。


そう、あのお父さんの形見のゲジまゆを、安室ちゃんをまねた細眉にしていたのだ。






。。。形見だよね?亡くなったお父さんの。



あの時の先生の涙を返してあげてほしい。