前回ブログの続き、水泳の基本「木を見て森を見ず」からの脱却を⑤です。
今回は陸上競技について考えます。
・陸上短距離のモーリス・グリーン選手
次に陸上で考えて見ましょう。
陸上短距離で有名な選手といえば、ボルト選手やジョンソン選手、その以前カール・ルイス選手の後にモーリス・グリーンという選手がいました。2000年のシドニー五輪、男子100m走の金メダリストで元世界記録保持者です。9秒台を記録した回数が50回以上。50回以上というのは、彼を含めて2人しかいません。
そのグリーン選手が陸上短距離の走法を大きく変えた選手として有名です。それ以前の選手はスタートしたらすぐに身体を起こす。しかし、グリーン選手はスタート後、しばらくは前傾姿勢を保ち、徐々にカラダを起こす。今ではそれが催促のための必須技術として当然ですが、当時は画期的でした。
此処でもポイントは重心の移動。陸上100m走は、100m先のゴールに向けて如何に速く重心を移動させるかという競技です。スタートの場面をイメージしてみましょう。クラウチングポジションからブロックを後方に蹴って、100m先のゴールに向けて…。目標は水平方向100m先にありますし、蹴り出しもブロックがあるお陰で真後ろに蹴れます。カラダを起こすのは=垂直方向への力の分散ですから避けた方が良いことは至極当然です。スタート後、カラダを直ぐに起こしてしまうのはブロックが無かった頃の名残ということです。
もっとも、カラダを起こしての走力と、前傾姿勢を作ったままでの走力とのパワー発揮の比較も大切です。フィギュアスケートのジャンプに比べると、そのジレンマは殆ど無かったようで、数年内に全てのトップ選手はグリーン選手のような低重心でのスタートダッシュに取って代わりました。
さて、此処で…、羽生選手の飛距離を伸ばしても回転軸が伸びないジャンプが、端から意図したものか?或いは無意識からの結果なのかは不明ですが、ことモーリス・グリーン選手の例にでは、明らかにそれを意図して計画的に身につけていったことが明らかです。
当時、グリーン選手が在籍したハワード・スミス・インターナショナルでは、当時グリーン選手以外の多くの選手がこの走法を実践していました。このクラブは、アト・ボルドンなども在籍した名門クラブで、日本のトップ選手 山縣亮太さんも一時期?今も?在籍していたことで知られています。
・前下がりの細長い楕円を描くためには
フィギュアスケートや陸上短距離の細かい技術にのみ関心を寄せることなく、氷上での“重心移動”、陸上での“重心移動”という“森”を見ることでのみ行き着く結論です。水泳然り、フィギュアスケート然り。陸上競技然り。細かいスキルに目を奪われること無く、まずは泳ぎの、スケートの“森”を見ることでのみ競技の本質に気付きます。
続きまた次回。次回は水泳の話に戻しましょう。