ちょっとちがう~世にもケッタイな物語 | みぶ真也 の 職業:怪談俳優

みぶ真也 の 職業:怪談俳優

浪速のユル・ブリンナー

おはようございます、大阪の俳優みぶ真也です。

今までとはちょっと違う、こことはちょっと違う世界へ迷い込んだお話です。

 

 

「そろそろ時間だな」

 近所のコンビニで買ったばかりの新製品「Dココアドリンク」を飲み干してラジオをつける。

 ぼくの怪奇ドラマ「深夜のみぶ」が始まる時間なのだ。

「不思議ものがたり・三田しんじの今夜の三田」

 あれっ?

 タイトルが違うぞ。

 語りの声はまさしくぼくの声だ。

 話もぼくの書いたものとちょっと異なっているような気がする。

 聴き終えてからラジオ関西に電話を入れた。

「局長をお願いします」

 しばらく待つと、

「はい、局長の白川です」

「え?局長のお名前は黒川さんじゃなかったですか?」

「何、言ってるんです。その声は三田しんじさんですね。今夜の話も面白かったですよ」

「ぼくはみぶ真也ですが」

「あ、新年から名前変えるんですか?もうタイムテーブル印刷しちゃいましたよ。次から変えておきますね。じゃ、忙しいんで、また」

と切られてしまう。

 どういう事情かあるのか、さっぱりわからない。

 スマホでラジオの番組表を見ると、

「今夜の三田」

「出演:三田しんじ」

となっていた。

 念のためスマホのプロフィールを開くと“みぶ真也”と名前が出る。

 おかしいのはラジオ局の方だ。

 こうなったら今から局へ行って確認してみよう。

 部屋を出て振り向くと、玄関の表札には「三田しんじ」と書かれている。

 

 外を歩くと、街の風景も少し違っている。

「みぶさん」

 不意に声をかけられた。

 振り向くと、以前ドラマで共演した女の子がいた。

「あ、君か。名前は確か篠崎ゆりさん」

「良かった。みぶさんは覚えててくれたんですね。今夜、何故かみんなから篠山ユミと呼ばれるんです」

「君もか。ぼくも自分の番組で三田しんじという名前になっていた」

 何かがちょっと違うという被害者がここにもいたのだ。

 何があったのか互いに考えてみる。

「夕方、Dココアドリンクを飲んで出かけたらそれからおかしくなったんです」

「そうか。ぼくもそれを飲んでからだ」

「私、買ってきます」

 彼女が駆けだしてコンビニに飛び込む。

 もう一度ココアを飲めば元に戻るかも知れない。

 買ってきたココアを飲む。

「あ、SNSの名前が元通りになりました」

 嬉しそうに言う彼女。

 スマホの番組表のタイトルも「深夜のみぶ」に戻っている。

「こっちもだ」

「ほんとですね……あれ?」

「どうした?」

「出演者の名前が」

 見ると「出演:みぶ真之介」と書かれていた。