おはようございます、大阪の俳優みぶ真也です。
今日はグッタリ疲れて撮影現場から帰宅した時遭遇した出来事をお話しします。
ある日、家に帰ると知らない女の人がいた。
テーブルに肘をついて、お茶を飲みながらTVを見ている。
「ど、どちらさんですか?」
玄関で固まったまま尋ねた。
周囲を見ても、自分の部屋に間違いない。
「ま、いいから、気にしないで」
こっちを見ようともしないで、芸人のギャグにケラケラ笑っている。
「あの、上がってもいいですか?」
と訊くと、
「どうぞ。自分の家なんだから遠慮しなくていいじゃん」
という返事。
「では…お邪魔します」
間の抜けたことを言って部屋に上がった。
「あの、どうやってこの部屋にはいったんですか?」
ここの鍵はぼくが持っている。
合鍵を作ったこともない。
「あははは~今の見た?」
罰ゲームで全身水浸しになった芸人を見て、彼女はテーブルをどんどん叩きながら笑い転げている。
「どうやってここにはいったんですか?」
もう一度尋ねる。
「そのへんは、私にもよくわからないんだけど…あはは、見て、見て!これ、ばかみたい、ははは」
また、テレビに見入っている。
「あのう、着替えてもいいですか?」
「いいよ、私、気にしないから」
バラエティ番組から目を離さずに言った。
こっちが気にするんだけど…
と言おうとすると、
バタン
ドアが開いて男が入ってきた。
「すみません、あ、やっぱりここにいたか」
彼女を見つけて言う。
「さ、もう行くよ」
「いいじゃん、この番組が終わってからで」
二人で何か言い合っている。
「すみません、どういうことですか?」
と尋ねると、
「実は彼女は」
と言った時、女が芸人のギャグにギャハハハと笑い言葉がかき消された。
「…なんです。それで私は<ギャハハハ>なので、<ギャハハハ>しようとして…」
女の笑い声がうるさくて肝心なところが聞こえない。
ひとしきり笑った後、おとなしくなったと思ったら番組が終了していた。
「じゃ、行こうか」
彼女の方から男に言う。
「実は、彼女はさっき交通事故に遭いましてね。即死でした。私は、それで彼女を案内しに来た者です。死神というやつです。ところが、彼女がこのどうしてもこのTV番組を見てから死にたいと言って」
彼女が言葉を継いで
「見たいと思ったら、そのままこの部屋に来て番組が始まったの。じゃ、死神さん、行こうよ」
二人はそのまま壁をすり抜けて外へと消えていった。