おはようございます、大阪の俳優みぶ真也です。
泣いても笑ってもこの番組はあと二回!
今夜の“不思議ものがたり・みぶ真也の深夜のみぶ”は
「五人と一匹」(前編)
ラジオ関西AM558khz 毎週月曜夜21:00~21:15
「ヒロノツトムの走れタコ!」
番組後半のコーナーです。
ラジコでもどうぞ
おはようございます、大阪の俳優みぶ真也です。
NHK朝ドラ「ばけばけ」好調ですが、その裏にはこんなエピソードがありました。
「みぶさん、NHKの朝ドラ、絶対役が決まると思います」
事務所で打ち合わせしていると、見習いマネージャーのレミくんが飛び込んできて言った。
レミくんは東南アジアから実習で来ているのだ。
オッチョコチョイだが行動力はある。
「本当か?」
「ええ、ぼくこれからBKへ行って来ます」
BKとはNHK大阪放送局のこと。
はなかなか頼もしいことを言い残し出て行った。
「おはよう、台本貰いに来たわよ」
入れ違いに花ノ木リリカさんが部屋に入って来る。
リリカさんは新地でバーをやってる妖艶なお姉さんだ。
「政治家の愛人役か。たまにはホステスや愛人以外の役もやってみたいわね」
ドラマの台本を読みながらリリカさんがつびやいた。
この派手な化粧では無理だろう、と言いたいのを抑える。
怒ると怖いお姉さんなのだ。
三十分もしないうちにレミくんが肩を落として戻って来た。
「みぶさん、ごめんなさい。ぼく、間違ってた」
「どうしたんだ?」
「朝ドラのタイトル『ハゲハゲ』と読み間違えてたのでスキンンヘッドのみぶさんプッシュしたらBKの人から笑われました」
「慌て者だな」
「すみませ……あ」
と花ノ木リリカを見て、
「リリカさんなら絶対朝ドラOK貰えます」
また、飛び出して行った。
「今夜はお金はいいから呑みな」
朝ドラの夢が消えてがっかりしてると、花ノ木リリカさんが新地のバーに誘ってくれた。
リリカさんはこの店のママなのだ。
時間が早いので他に客はいない。
「『ばけばけ』と『はげはげ』を読み間違えるなんてレミもバカね」
「まあ、まだ日本語に慣れてないから……」
「でも、今度はリリカさんの役貰うって張り切ってましたね」
「朝ドラだから、私も健全なお姉さん役かしら」
この化粧でそれは無理だろうという言葉をこらえる。
「リリカさん!」
ドアを開いて、いきなりレミくんが飛び込んで来た。
「私の役決まった?」
「それがまたBKの人に笑われました」
「どゆこと?」
「ぼく今度は『バケバケ』を『ケバケバ』と読み間違えてて、西日本で一番ケバい女の人うちにいますってリリカさん推薦したんです」
「なんですって!」
彼女の目つきが変わった。
「あんた、ケバいの意味分ってんの」
「ええ、しわしわの顔、厚化粧でごまかした女の人ですよね。リリカさん、ピッタリと思った」
あっけらかんとレミくんが言うと、リリカさんの両手がワナワナ震え……
後の展開が怖くて、ぼくはそっと店をでた。
おはようございます、大阪の俳優みぶ真也です。
「倉虫山にクマが出たらしい。猟友会へ行って来る」
そう言い残して父は猟銃を持って家を出て行った。
倉虫山のふもとには伯母が住んでいる。
ぼくは心配になり、伯母の家に駆けつけた。
「シンちゃん、久しぶりやねえ。お茶でも飲んで行って」
「おばちゃん、それよりクマが出たらしいやん」
「そうなんよ。今朝、私が見つけてびっくりしたの」
「おばちゃんが見たの?」
「ええ、すぐに役場に電話したわ」
「何処でクマを見たん?」
「うちの中よ。洗面台に向かったら鏡にクマが映ってて足がすくんで体が震えたわ」
「そ、そのクマは何処に?」
「ここよ」
伯母は黒ずんだ目の下を指さした。
「気をつけてたんやけどね、このところ睡眠不足が続いたから……」
「おばちゃん、もしかして、それは目のクマ」
「クマを見たらすぐに役場に連絡するように言われてたから、慌てて電話したんよ」
伯母は昔から天然なのだ。
「うぉー!」
その時、二階から声が響いた。
「今のは?」
「伯父さんよ。休みにはいつも朝からお酒を飲んで騒ぐの」
「酒がないぞ、さっさと買って来い!」
伯母は伯母はため息をついて、
「今度はトラが出た」