「…私の言う普通の幸せって

好きな人に明日も会えるってことだから」

 

 

ふつうな僕らの1巻

湯木のじん・マーガレットコミックス

(別冊マーガレット掲載)

 

 

★あらすじ★

東京から田舎に引っ越してきた花川椿。

市内に行けばそれなりに便利だけど、雪の深い街。

椿は高校入学前に「運命だ」と思った人に出会った。

そして、同じ高校にいるとわかった。

彼は二年生の草野一颯。しかし、彼は耳が聞こえない。

彼のやさしさに惹かれている椿は筆談などをするが、

「そういうのを偽善というんだ」と拒絶される。

普通の恋がしたい。

でも、椿の「ふつう」はまた違うのだ。

 

追いかけても縮まらない距離、もどかしく厚い壁。

そんな二人のふつうの物語。

 

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「これは愛じゃないので、よろしく」がゆるゆるほのぼの恋愛漫画で楽しく読めたので作家買いをしたのですが、

予想以上に話が重くて驚いています。

でもよく考えたら「青山月子です」も大変な話でしたよね…

 

最近、パーフェクトワールドがドラマ化されましたよね。

無印マーガレットで執筆していた森下suu先生は現在デザートで耳の聞こえない主人公の漫画を描いています。

そういうお話が多くなったな、と感じてはいます。

 

というわけでこちらは耳の聞こえない男子に恋をする物語です。

草野くんは6歳のときにおたふく風邪の後遺症で耳が聞こえなくなり、補聴器をつけても言葉は聞き取れない。口唇でだいたいの言葉は理解できるものの、疲れるという…

聞こえないことで、高校の日常でも些細なことからズレが生じる。

 

「普通の恋愛がしたい」それを真剣に願っていた椿ですが、

草野くんは彼女のふるまいを冷たくあしらいます。

長年の経験から、「優しくする人」「からかう人」「無視する人」…そういうものにうんざりしているのです。

そして、「優しくする人」の裏側も死ぬほど知っている。

彼は「普通の恋がしたい」という椿に「ほかの人とやって」と告げますが、

 

…椿が田舎に来た事情がここで明かされます。

中学校時代はほとんど学校に行けなかった椿。

重い心臓の病で、移植を受けています。

一日一日、起きれるかどうかの日々を過ごしていた椿にとって

「ふつう」は毎日好きな人と笑うことなのです。

 

まあそんなわけであこがれの学生生活を送れるのでスーパーポジティブ、何をされても草野くんにぶつかり続ける椿。彼を追いかけて写真部にも入ってしまいます。

そこには日高さんという恋愛にだらしない系の先輩がいて、言葉遣いも乱暴ですぐ椿たちに「死ね」などを連発します。

彼女の荒々しさは相当なものですが、草野君に対してだけはど正論を言う。

実は、彼女は草野君の元彼女だったのです…

二人がどうやって出会い、どうやって別れてしまったのか、彼女がどうして今、荒れているのか…椿にはわからない。

でもそう言うと「君は生きるか死ぬかを戦ってきたから僕らのことなんかささいに見えるんだろう 君は明るい世界にいる 僕らからは遠いんだ」と草野に心を刺されてしまうのです。

 

草野くんは部活をやるなどかなり頑張って普通の生活を送っていますが、積もり積もった闇が深かった。

近づけば近づくほど遠ざけられ、椿は絶望してしまう。

 

一方、椿のクラスメイトで草野くんの幼なじみ・柴崎くん。

手話ができ、草野くんとは仲がいい。

でも、周りからは「耳の聞こえない人にやさしくしているいい人!」という見られ方をして非常にうっとおしく、高校ではそういうふりを見せない。

「友達と遊ぶことの何が優しいの」女の子たちに絡まれる柴崎くんに椿は言います。

柴崎君、おそらくは椿のことを…

 

「聲の形」という重い重い漫画とは違いますが、ふとした瞬間に障害がフワっと湧き上がって彼ら・彼女らを惑わせます。

主人公の椿は湯木さんらしい「ゆるっとしたキャラ」で表情も豊かで少々アホでクスリとさせるキャラクター。この漫画の中でホッとする場面をいくつか作っているのですが、

それに対する「重さ」は比にならない。

湯木さんの漫画は「激しくない」。しみじみとゆるゆると、日常を描き出していく。

今回はそれが、田舎の風景と相まってぼんやりとした灰色に見えました。

(この田舎、粗暴な人が結構多いんだよなあ…)

 

椿と草野くんはどうやって近づいていくんだろう。

この真摯な作品、追っていきたいと思います。

 

 

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