「わたしはね

男子に女子として見られる居心地の悪さ知ってるのに

先輩への気持ちに気づいたら

女の子って思われたいって思っちゃったの」

 

 

恋ばっかりの世界でわたしはキミと2巻
柚原瑞香・りぼんマスコットコミックス
(りぼん掲載)


☆あらすじ☆
小学生の頃は考えもしなかった。
中学生になった途端、周りが恋の話を始めてしまった‥

森下ちえり、そんな空気についていけない中学二年生。
同じように「恋の世界」からはじかれてしまった乙桜(さくら)・一果と仲良し。しかしさくらが生徒会長と付き合い始めてから、三人の仲は少しずつ変わっていく。

ちえりには何でも話せる男の幼馴染・葵がいるけれど、他の女子が近づいているのにモヤモヤする。

一果はクラスメイトの山吹に「ナシ女」とからかわれているが、本当は小学生の時一番話せる男子だった。

遠足で一果と山吹がモメてしまい、それを自分と葵に重ねたちえりはいてもたってもいられず…?

なないろ革命で人気を得た作者の、幼くもクリアな友情ストーリー。


☆☆☆

自分と他人の区別がつかず周りを振り回すフレネミーと戦ったホラー漫画「なないろ革命」。しかしその作者の新作はとても暖かく、たわいもない身近な題材を扱ったものになっています。
りぼんの「うつまんががかり」が牧野さんに移ったので、ああいう漫画を描かなくてよくなったのでしょう。よかったですね。

私はりぼん世代でりぼんっ子でした。しかしりぼんから学ぶものは何もありませんでした。しいて言うなら青酸カリからアーモンドの匂いがすることくらい(有閑倶楽部)ですが、どうもそれも実際は違うらしい。
「親が夫婦交換」とか「不良が猫を拾ってる」とか「子どもタレントで家族が複雑」とか、りぼんの世界はファンタジーだったのです。一方で現実以上のスクールカーストをたたきつけるちび…子ちゃんが退路を断ち、困惑していました。

 

 

「中学生になって男女関係が変わってしまった」

こういうどこにでもある地味な話、ちゃおでは結構読めるんですよ。

森田ゆきさんがその先駆者で、恋愛はよくわからないけど友情関係を保つためだけに先輩の男子を好きな振りするとかそういう漫画を描いていたりします(さかのぼればやぶうち御大になりますが、御大の漫画は少々派手な面もある)。

こういうものが小中学生の時に読めたらどんなに救われたんだろう。結構思うことがあります。

ようやくりぼんでこういうのが読めるようになったのです。

ちゃおに5年遅れ。


男子がなんとなく怖いちえり、男子ウケする外見のため誤解されやすいさくら、背が高くかっこいい性格の一果。
周りが恋バナをし、男女が近づいたらウワサをし、はやし立てる。

三人はそれにウンザリしていましたが、それぞれが少しずつ変わり始めています。

 

一果は小学生の時山吹と仲が良かったのですが、山吹は4年あたりから周りに「女と遊ぶな」と言われだし、「こいつは男だ」「ナシ女」と言ってそれをごまかそうとしていた。

でもそれは、一果にとっては「自分が全否定されてる」言葉だったのです。

山吹はとりあえずもう誰かにいじられても一果に酷いことは言わなくなりましたが、まだ二人の関係はこれから。

 

一方葵が同じクラスの花野さんに告白されてしまいます。

もともと自分の事を話そうとしない葵ですが、様子がおかしいのでちえりが勇気をもって問いただすと、

「自分の行為で喜ばせたり悲しませたりするの、考えてたらいろいろできなくなった」

と言われてしまいます。

中学生男子にしては思慮深い葵らしい部分だなと思いますが、

ちえりは受け止めきれない。だって、葵のことが…

 

葵の事が、「何」?

 

葵が花野さんの事を女子として扱い、

ついに花野さんへ「ごめん」と答えるも、「ちえりを彼女としてみるのは絶対ない」と言っているのを聞いてしまうちえり。

胸が張り裂けそう。

それは「好き」なのです。

 

冒頭の抜粋は先んじて恋愛をしているさくらの言葉です。

さくらは甘い外見をしているため、いろいろとひどい目に遭っている。それでも恋愛を選んだ子です。

「女性が男性に女性として見られる」事について、難しい論議がされていますけれども…さくらは生徒会長が好きだから、女子として見られたい。それはかなりの勇気だったと思います。

「好きじゃない・それ以外」の部分に男女の問題があり、その悪意だけを煮詰めたのが「さよならミニスカート」だと思ってください。

 

葵はちえりのことを十分大事に思っている。かたい信頼関係がある。

だから恋愛対象には見られていないけれど、それは永遠ではないはず。

ちえりは葵に、どうにかして女の子として見られよう、と決心します。

が、これは波乱があるだろうなと思います。

葵がそれを見せつけられて、困ってしまうかもしれません。

その前に一果が戸惑ってしまい(山吹と一悶着あります)、「女子として見られるのが嫌だなんてちえりに言えない」とさくらにこぼしてしまうのをきいてしまい、ちえりは自分の身勝手を責めるのです。

 

でも、それでも。ちえりは葵にある宣言をします。

 

ちえりは他の男子は無理なままです。ただ、葵だけが好き。

幼くて、葵とだけ犬の散歩ができればいいと思っていた状態から、一歩進んだだけのことです。

それでも「子供から女子になる」ってなんだかすごく薄汚れた言葉だな…と感じたりもしました。

しかし女子って、女って、汚い物だろうか。

逆に男子って、男って、汚い物だろうか。

そういう根源的なことを考えたりもしました。

…刃傷沙汰とか逃避行とか大げさな表現をしなくても、

伝えられることは伝えられるとも思っています。

 

あと友達三人で話し合いをするのがいいですよね。

ちえりとさくらと一果、お互いがときどき分かれて相談してしまうんですが、それでも話し合いができるのは大切。その場面があるだけでホッとしてしまう(前作がなかったから余計に)。2人じゃなくて3人だからこその良さかもしれません。

 

それから山吹、しょうもない系男子だけどリアクションとか結構ツボってます(笑)。

 

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