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タイムマシンがあってものらない 1 (ちゃおコミックス)
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「なんでって今日荻窪誕生日なんだろ
なら荻窪が楽しくないと意味ないんじゃない?」
タイムマシンがあってものらない1巻
笹木一二三・ちゃおコミックス
(ちゃおDX掲載)
★あらすじ★
一年前、周りの雰囲気に押されて付き合った荻窪叶(かなえ)と大崎史(ちかし)。
でも何をしていいかわからなくて、周りに冷やかされるのも嫌で、一緒に帰っていたのも友達を優先するようになり、クラスが分かれて「自然消滅」した。
でも叶はもともと大崎のことが大好きだったし、今もずっと目で追いかけている。
あの時、何を話せばよかった?メールは長すぎるとダメ?
もしタイムマシンがあったら聞きたいことがいっぱいあった。
でも、もしかしたら…
リアルな恋愛を描かせたら最高峰、笹木一二三の増刊連載作、遂に1巻発売!
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笹木一二三さんは「明るく元気で夢がいっぱい」なちゃおという雑誌において、かなり特殊な作家さんです。
ちゃおで連載された「おやすみメモリーズ」も一回目で幼馴染を取られた主人公が彼女とド修羅場を展開し、女の子の「表に出してはいけない感情」をうまく書き切り、さらにそれを昇華させるというスゴ技をやってのけました。
今年から増刊で連載が始まったのでこれは単行本が楽しみだな~と発売を待っていました。
今回は「自然消滅したカレカノ」というテーマです。
中学生ですから付き合うもなにもないと「大人の目」では見てしまうのですが、本人たちは必死です。
でも、恋をするということが何かわからず、「周りに冷やかされる」ことの方が怖かったりする。
だんだん関係が遠くなって周りには別れたことになっているけれど、主人公の叶は大崎の事を諦められない…
でも一体何を話せばいいのか、向こうは別れたと思っているのか、それを聞くのがとても怖いのです。
全体的には「色んな事を考えすぎてしまって行動できない主人公がやらかすりぼんの漫画」っぽいなあと感じてしまいましたが(話を動かすのはいつも大崎)、今のりぼんでこういう関係性や、繊細なモノローグを短編連作で描く人はいません。
ちゃお読者にしてみれば「読んだことのない漫画」なのです。大人っぽすぎてとっつきにくいかもしれませんが。
それで、よいなあと思ったのが4話目の誕生日のお話です。
これは叶と大崎が付き合う前の「一年生」の時の話なのですが、
叶の誕生日に、友達がいきなり駅ロッカーのカギとメモを渡すのです。ロッカーを開けるとまたメモがあり、「これは最後にお祝い会場に誘導されるサプライズってやつだ」と叶は気づきます。
こういうのが正直苦手な叶ですが、でも友達が考えてくれたし、楽しんでやらなきゃいけないよね?と夏の暑い中メモ探しをするのです。
そこで大崎と出くわすのですが、状況を理解した大崎は叶より先にメモを見つけ、破り捨ててしまいます。そして冒頭のセリフ。
そうですよねえ…誕生日って本人が楽しいものであって、企画する側が楽しむものじゃないですよねえ。
「見つけられなくて迷ったことにすればいい」と大崎に言われ、ホッとする叶。これが恋に落ちた瞬間だったのです。
大崎はかなり器の大きいキャラというか、しっかりしているというか、物事の本質を見ている。
「こんな中学生はリアルにいない」とわかってるけど、
いなきゃ付き合わなきゃいいだけのことですからねえ。
今回の話は主人公が「受け身」であることがちょっと気になりますが、繊細すぎるほど繊細なモノローグにいちいち引き付けられます。次の巻も楽しみです。
また、同時収録の「さばくの夜に話すこと」という読み切りも秀逸です。正論で友達を傷つけてしまって何も言えなくなってしまった主人公とチャラい男の子の話。
主人公の「正論」がものすごく説得力あって好きです。

