ピンポンドライブ(3)<完> (講談社コミックスなかよし)/講談社
¥463
Amazon.co.jp




「『楽しむ』
それが技術を引き上げる
‥いや
技術を超えたプレーを引き出すのです」


ピンポンドライブ3巻
吉田はるゆき・KCなかよし
(なかよし掲載)


☆あらすじ☆
小学生の時卓球に出会った双子の兄妹・宝と珠。
宝は小学生チャンピオンになったが、珠は卓球から離れ普通のおしゃれ好きな女の子に。
強豪・成生男子中学に受かった宝だったが、珠をかばって車にはねられ意識不明となってしまう。
珠は責任を感じ、宝に成りすまして男子校へ潜入する。

卓球をあきらめた身で男子と対戦し全く太刀打ちできない珠だったが、彼女は卓球の神に愛されていた。
宝が組みたいと憧れていた藤波とダブルスをすることになり足を引っ張り続ける珠だったが、新人戦を足掛かりに全国へ‥?!


突然現れた新人の、突然の「熱い」卓球漫画がなかよしに!
恋愛のれの字もないそのラストを見届けよ!!


゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆

双子の兄に成りすまして男子校に入り卓球をやる話なのに、全寮制なのに‥まったく恋愛になる気配がない!!
というか漫画内に寮もベッドも壁ドン用の壁もない。あるのは体育館と卓球台だけ‥ただひたすら卓球に青春を賭け、血と汗を流していました。

これが「なかよし」の漫画なのです。他の連載は「恋愛ありき」なのに、何故ここまで徹底できたのか。結局この漫画は3巻で完結となってしまいましたが、巻末のおまけすらフラグが立っていません(一人だけがんばってたけど‥)。
よくやったな、と思いました。


全部読んでから何故恋愛を持ち込まなかったんだろうと考えました。
本来なら主人公の珠はダブルスの相手・藤波と組みながら愛を育む‥それが少女漫画の文脈です。
私は「男女を越えて仲間として卓球をやりたかったんだ」と思います。
女として生まれてしまうと、男性とはある程度関われるものの「一緒に戦う仲間」になりきることは難しい。特にスポーツでは。
しかし珠も藤波も恋愛より「卓球はいかなるものか」をひたすら追求していました。
特に藤波は、卓球へのやる気をなくしかけていた。ところが珠が「卓球が楽しい!好き!」と気づき始め、藤波すらいないところ(ゾーンかもしれない)へ行ってしまいそれに巻き込まれるカタチになってしまいます。
これが冒頭の抜粋です。楽しいという気持ちに努力が合わさると、技術がどんどん向上し、さらに相手を心理的に追い込める。
藤波も卓球の楽しさを見つけゾーンにも入り、前進することになります。
珠は全国大会を最後に(宝が意識を取り戻したため)元の場所へ帰ります。しかしこの一年半間違いなく彼女は成生中卓球部の「仲間」だったのです。


また、この漫画は3巻で終わりましたが言い換えると3巻で全国大会行っちゃったんですね。

日本の卓球人気は上がりつつあるものの、「卓球漫画」はなかなかヒット作が出ません。
そして少年漫画だとガッツリ試合を濃密に表現するため、一点を取るのにページを割きます。
で、あえなく打ちきりになると「俺たちの卓球はこれからだ!!」と締めるか、気がついたら最終4Pぐらいでいきなり優勝する「キンクリ現象」を起こします。
こうなっちゃうと、どの少年漫画も「卓球の極み」を表現できないまま終わってしまうのです。

ピンポンドライブは3巻の途中で突然10ヶ月ワープしますが、この省略のお陰で最後の試合ををちゃんと表現できました。しかもワープ前と話は繋がっています(ワープは打ちきりが決まったせいでしょうけれど‥)。
道具や技やいろいろを省いて「楽しい」卓球することに重点を置き、主人公の「勝ちたい」気持ちを優先しながら試合も要所だけおさえて表現した。これは「感情至上主義の少女漫画だからできたこと」なのかもしれません。
ピンポンドライブは卓球少年漫画がなかなかできない「卓球の凄さ、頂点」を表現してしまったのです。

どんどん具体性やリアルさが追究されガンガン長くなっていくスポ根少年漫画。成功すればいいけれど、それはほんの一握り。ほとんどが読者にスポーツの凄さを伝えられないまま終わります。
少女漫画の「感覚重視主義」でスポーツの楽しさと魅力を伝えられるなら、これからもっとやっていいのでは?と思います。

これから吉田先生はどうなさるのでしょうか。なかよしで単行本3冊は「成功」なので是非また連載してほしいですが、恋愛漫画なのでしょうか。

にほんブログ村 漫画ブログ 少女漫画へ
にほんブログ村