- 町田くんの世界 1 (マーガレットコミックス)/集英社
- ¥432
- Amazon.co.jp
「もっと 猪原さんのことを教えてほしいんだ
人と仲良くなるのが怖い?」
町田くんの世界1巻
安藤ゆき・マーガレットコミックス
(別冊マーガレット掲載)
☆あらすじ☆
町田一(はじめ)くんは町田家の長男。弟と妹に愛されています。
メガネ男子なのに成績はわるくて、体育も苦手。携帯をほとんど使わないアナログ人間だけど活字も苦手‥悩みもそこそこあります。
しかし町田くんはみんなにそっと愛されています。なぜなら、人を愛しているから。
美人だけど人と関わろうとしない猪原さんとの出会いから、少しだけその世界が変わりそうなのですが‥?
やさしい世界が広がる、静かな物語。
☆☆☆
なんとなく気になっていた漫画です。
数年前は別マを毛嫌いしてたはずなのだが‥変わったもんだよ私も。暗い漫画が多いイメージでした。
いやまったく、超大当たりでした。もっと早く買えばよかったと思います。なんつーか、じわりと胸が暖かくなった。
主人公は物静かなメガネ男子町田くん。しかし勉強も運動もできない。不器用で要領も悪い。
本人的には「俺に取り柄はあるのかな」と思っているようですが、家族は彼を「かっこいい」と賞賛しますし、隣の席に座ってるギャルと普通に会話する。
彼はただ、人が好きなのです。
ボールが当たっても水をかけられても怒るどころか相手を誉める。困っている人がいれば助ける。口元にごはんつぶがついてたらとってあげる。
町田くんは何かを求めているわけではなく当たり前のことをしているらしいのです。
だからこそ、周りは彼に一目置いている。ひそかに恋してる女子もいるかもしれません。
彼は全く気づいてませんけど。
二話目から猪原さんという女子が登場します。ほとんど授業に出ず、人づきあいを全くしない。家族や中学でひととおりのダメージを受けてきたタイプです。人が嫌い。
別マにはよくいる感じですよね。
町田くんは猪原さんと保健室で出会い、なりゆきで猪原さんが町田くんのケガを手当てすることになります。
「人が嫌い、関わりたくない」‥だけど包帯がわりにハンカチを巻いてくれた猪原さんがそんなわけない‥
「人がみんな好き」な町田くんは猪原さん「も」ほっとけなくなり、猪原さんは町田くんの誤解を生む言動にドギマギしていきます。
「博愛」な男子が増えてきたなと思います。俺物語の猛男もそうだし、彼らは見返りを欲していない。ただ、読むこちら側は男子が「何かを求めている」と気づいたら萎えてしまうくらい‥病んだのかもしれない‥。
わりと町田くんの「人が好きで仕方ない」という感情を追ってるのが面白い。こういう人間の出来たキャラクターには「突っ込み役」「狂言回し」がそばにいてそちらから眺める感じですから。
町田くんが自分についてそれなりに劣等感を抱き少し悩んでいるからでしょうか。それほど深刻じゃないですが。
‥それにしても、
人を好きになるってどういうことなんだろう。
「めんどくさくてうるさくてこちらに迷惑をかける、友達というものはいらない!」真逆を貫く「湯神くんは友達がいない」という漫画がありますけど、正直私は湯神くんに共感してしまう。
ただし湯神くんは祖父ゆずりの偏屈で、アイデンティティとして人を拒むわけでして、家庭的にはなんら問題がありません。
猪原さんみたいに人が信用できなくなる環境に置かれたら、まあ人を好きになろうとは思わない。そんな人は多いだろうし、みんなどうしたらこんな自分をやめられるんだろうと思ってる。
一方町田くんは兄弟がたくさんいて、さらにお母さんも精一杯愛してくれる。ハグしまくりの世界で育っています。
そりゃあ人を好きになるよなって納得すると同時に、「私にはないものを持っているんだ」と感じたりします。
人を愛し愛される事を考えるとき、フルーツバスケットの杞紗ちゃんを思い出します。
先祖代々の宿命を背負っている杞紗ちゃん。小学校でいじめられて不登校に。
先生からはこう言われます。「もっと自分から人を好きになっていきましょう」
しかし透の友人うおちゃんは「人を好きになるためには誰かに愛されるのが先じゃないのか」と。
そう、人を愛するにはエネルギーがいる。ゼロの状態では愛し方もわからない。
杞紗ちゃんは透によって救われますが、そんな出会いが万人にあるわけない。
しかし愛してくれる人がいるから人を愛せるとなると、例えば子供が母に愛される、ではその母はまた親に愛されていて、さらに‥と考えていくとどうもゼロから人を愛した人がいたということになるんですよね。
本当はみんな人を愛する力を持っているはずだけど、いろんなものに埋もれてそれが見つからなくなってる。
「町田くんの世界」は「愛されたい」のではなく「愛したい」気持ちの溢れる漫画です。町田くんの言動に触れ続けていたら、いずれ愛する心が見えてくるような気がして、そしてふと「いい漫画だな」と思うのです。
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