黒虎 1 (少年チャンピオン・コミックス)/秋田書店
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「自分(てめえ)の道を
黒船なんかに託すな!!!!」


黒虎1巻・2巻
鈴木快・チャンピオンコミックス
(週刊少年チャンピオン掲載)


★あらすじ★
今は昔‥徳川幕府と十二人の神将に護られた国・日ノ本。平和な江戸の町で少年虎鉄は神将である母のようになりたいと日々修業に励んでいた。兄の虎春には遠く及ばないが‥
ところが空から黒船の集団・ハルシオンが降り立ち圧倒的な力によって幕府は崩壊した。
国民は困窮し、母も兄も、虎鉄は何もかもを失い‥そして7年後‥

失われた国を取り戻すため、少年は仲間を集めようと立ち上がる!チャンピオンの新星鈴木快が描くチャンバラ活劇。


☆☆☆

‥というわけであらすじを読めば「それって銀たm‥」とうっかり口にしそうな感じで連載が始まりまして。
チャンピオンを愛好する濃ゆい紳士淑女は「何故ジャンプみたいな漫画が始まるんだ?」と不満だったのです。
鈴木快先生のデビュー作「ポストマン」も、つかめない感じのテガ●バチ的な配達人がクライマックスで隠していた能力を発揮し見開きで必殺技をかますという「見事すぎるほどのジャンプ読み切り」で‥私も正直なとこ「黒虎」には全く期待していなかった。

しかも「干支になぞらえた十二人の神将を集める」というでかすぎる目標を掲げてしまい、どうすんだよこれと思いました。
チャンピオンだとよほどでないかぎり(弱ペダレベルを指します)単行本が2ケタいくまでに終わっちゃうんです。最終回に残りがわーっと集まって「俺たちの戦いはこれからだ!」ジャジャーン、で締める絵をすぐに想像しました。


そんなわけで私も途中まで流し読み。時に突っ込みを入れたりしてました。


ところが!

ところがなんですよ!



‥さて記事のタイトルにある通り、日本にはおそらく千人くらいの「ジャンプ打ち切り漫画愛好家」というのがいます。
厳しいアンケートシステムの中半年で終わっちゃう、さらには3ヶ月で突き抜けるジャンプの残念な漫画たち。中でも圧倒的に多いのがバトルものですよね。そして作者がうっかり大風呂敷を広げて「この世の108ある○○を全部集める」とか言い出すのです。
愛好家たちはムリムリムリと思いながら主人公が江戸やら中世やら近未来やら冒険するのを眺め、伏線が回収されないまま終わるのを見届け、単行本を保存するのです。

「まあ仕方ない」と思うときもあるし、「なんで終わったんだ」と嘆く事もある。「酷すぎて伝説になった」と喜ぶこともある。
彼らはジャンプの理不尽さを楽しんでいるのです。


愛好家だと初回から「あ、これダメだな」と感じることもあるでしょう。
しかしその打ち切りルート確定な漫画を「単行本は2ケタまで行かないがとりあえず様子を見てくれるチャンピオン」で連載するとどうなるか。
答えがこの「黒虎」で示されてしまったのです。


まず今月発売されたばかりの2巻までイッキ買いする事を薦めまして、読んだ前提でこの先の話に移ります。
1巻までだと予想通りのジャンプ展開で終わっちゃうんです。しかもヒロインぽい女の子がジャンプのあの子に似ているという‥


黒虎 2 (少年チャンピオン・コミックス)/秋田書店
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虎鉄は「戌」の神将がいる犬守家を訪れ、息子の愛茜(あかね)と出会います。忍者なんだけど忍ばない、自分の力を過信しているけれど明るく虎鉄とウマが合いそうな性格です。
ところがそこに、ハルシオンの「刺客」として猿飛佐之助が現れます。彼もまた「申」の神将。
佐之助は幕府の無力さに見切りをつけて寝返ってしまっています。しかも忍びの家系らしく狡猾。簡単に説明しますと「あそこまでじゃないが御堂筋くらいは狂ってる」キャラクターです。虎鉄の信念を、夢物語を嘲笑う。

この憎たらしい佐之助を虎鉄と愛茜は力を振り絞って倒すことに成功し、追っ手が来る前に旅立とうとするのですが‥


同行するのは誰か?愛茜だと思いますよね。

なんと、佐之助なのです。

佐之助は忍びとして育ち、自分の意志は殺すよう教えられてきた。だから幕府がなくなればハルシオンに付き従うしかなかった。
彼からするとバカなりに信念を貫く虎鉄はウザい以外の何者でもないのですが、「道がないなら拙者の夢を見届けろ」と言いきる虎鉄に興味を持ってしまったようです。かといって改心したわけでもない。

チャンピオン読者は騒然としましたし、当時の作者コメントも「設定と違う展開になった」とありまして、どうもキャラクターが「自分から動く」状態になったようなんです。

佐之助は敵側にいたため虎鉄にその内情を明かすことができますし、仲がいいわけではないのでフラッと出掛けては周りの様子を探って知的に行動することができる。交渉術にも長けている。物語を引き締める役割を担っており、ぶっちゃけ虎鉄よりはるかに有能。
佐之助のクレバーさと暗黒面がジャンプ的な凡庸さを破壊してしまったのです。


そして、2巻後半からはもう一人ヒロインが現れます。
かわいくてワキむき出し、健康さが身体中からあふれる猪頭祈。虎鉄とは幼馴染み、もちろん十二支神将の家系です。めちゃくちゃかわいいのに怪力で大食い、能動的なキャラです。
健康的な女の子は大好きだし、チャンピオン読者も祈の登場で大喜び(チャンピオン読者はワキが大好き)。
ジャンプのヒロインは刺身のツマみたいなもので、気がついたらいなくなっちゃいます。
祈ちゃんは消えろと言われてもはねのけるタイプで、チャンピオンらしいヒロインなんですね。

佐之助も祈も3巻収録分以降さらに大活躍しまして「‥主人公は?どこ?」状態になったりします。
しかしそれが妙に面白い。


主人公が必ず活躍しなければならないのか、主人公は一番強くなければならないのか?
ジャンプは長い間このジレンマと戦っています。
が、「黒虎」の主人公虎鉄は活躍してないし大して強くない。夢を語り無謀に動いているだけです。
テンプレジャンプ漫画が「主人公縛り」をやめたらこのザマです。面白くなっている。
このまま主人公が変わる可能性もチャンピオンだからなきにしもあらずでして‥そう、この漫画の弱点は強烈なレギュラーに対して主人公がフツウすぎることなのです。


ジャンプ打ち切り漫画愛好家の方々、いかがでしょうか?
王道がガクンとレールを外れていく瞬間。あなたも見届けてみませんか?

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