- 國崎出雲の事情 19 (少年サンデーコミックス)/小学館
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「これがボクの気持ちだ!
好きって言ってくれたくせに、
自分の気持ちを偽って遠ざかるなんて
反対だからな!!」
國崎出雲の事情19巻(完)
ひらかわあや・少年サンデーコミックス
(週刊少年サンデー掲載)
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さて、最終巻感想裏面です。
サンデーを毎週購読して、全部読んでいる男性はこの漫画をどう思ったんでしょう?
私は女ですから、「小学館なのにすげーことやったな」と思うだけなのですが。
國崎出雲は両親が別居をしたため8年間歌舞伎から遠ざかっていた御曹司。
しかも、普通の女の子よりかわいい。
しかし母親が海外旅行へ行くことになり、出雲は父の家で暮らすことになってしまった。
父親が芸能科のある四条河原高校へ入学手続きをしたため、出雲はなし崩しに学校生活を始めます。
そこで最初に出会ったのが、「歌舞伎界のプリンス・栂敷紗英」です。
高飛車で自分のことを「生けるブランド」とか言い出して、女子が必死で渡したクッキーを捨てたりする。
それが二人の出会いでした。
2人はすぐに「鳴神」の舞台をやることになり、出雲をぎゃふんと言わせたい紗英。
ところが出雲も加賀斗と結託し、その対策を講じます。セーフティカップ(笑)と、あんドーナツ。
鳴神には官能シーンがあり、マジで女形はいろんなとこ触られるんですよね。
で、紗英は出雲を「歌舞伎のために男装してる女の子」だと勘違いします。
その後の紗英は出雲にベタぼれで、粂寺先生が出雲を狙っていると察したら「近づくなー!」と騒いだり、菅原兄弟が出雲と絡むとあれこれ妄想して真っ青になったり、出雲の前に白馬にまたがって現れたり、コスプレで賑やかしたり、この漫画にとっては「欠かせないギャグ要員」となっていきます。
睫毛バリバリでいつも薔薇を持つベッタベタな美形キザキャラ。その外見でやらかすギャップがたまらない。
勘違いしている男子が「男の娘」のやることに翻弄される。
これは「男の娘」モノにはよくあるハナシです。
私も「勘違い」で生まれる笑いが大好きで、本当に楽しく読んできました。
ところが。
7巻から二人の関係は変化します。出雲の身を守るために土下座をしてしまう紗英。毎日薔薇を浮かべたお風呂に入るきれい好きなセレブが、プライドを粉々にしてしまう瞬間でした。
さらに12巻では出雲をかばって車にはねられ、脾臓破裂と骨折で手術&入院するハメに。
麻酔で朦朧としている紗英は、「君がとても大事なんだ」と告白します。
出雲はそこで、紗英の気持ちに引きずられることになってしまう。
「大変なことになったな」当時の私は思いました。
ボーイズラブというものは巷にあふれていますが、普通の少年漫画誌で男同士の恋愛が出てくるなんて。
紗英と出雲の関係は、ずっと「ギャグ」で行くものだと信じていたのです。
なぜこういうことになったんだろう。14巻ではメイド仲間の杏李が出雲を好きになる。女の子がちゃんと出雲に好意を寄せてきたのに、出雲の気持ちはどんどん膨らんでいった。
しかし出雲は男。いくら可愛くても男。頭の中は、男です。
「アイツが女だったら苦労しないのに」「このまま隠してていいのかな」と悩み始めます。
13巻のデートはうれしはずかしな反面、とても切ないものになっています。
ですがこの「恋」が女形の演技に大きく作用していくんですよね。
ここらへんから、私は「出雲がいかに歌舞伎で相手と戦うのか」よりも「出雲と紗英は本当にくっついてしまうんだろうか」というヒキの方が気になってしまいまして。そういう部分で「続く」となられちゃうと一週間悶々としてました。
「國崎出雲の事情」は出雲が國崎屋にいる一年間の「成長」を描いた話でした。
しかし同時に、高飛車な敵キャラ・栂敷紗英の「成長」物語でもあったのです。
19巻で何故紗英が「高飛車になったのか」が明かされるのですが、これはこれで彼も大変だったんだろうなと。栂敷家は役者の家なのに会社も起こしていて、あいさつ回りもしてたりするのです。
周りが持ち上げてほめそやさなければつぶれてしまってたんやろなーと。
でも出雲と出会い、ファンの女の子へ優しくなったり、何をすれば出雲が喜ぶのか一生懸命考えたり、セレブならではの「ズレ」を補正していったり、バンデラス(山城名護弥)との対立で一皮むけたり。
そして、無意識に「大切な人を守ってしまった」ことから真剣に出雲への愛情を考え始める。
久しぶりに1巻を読み返すと、それはもう、全然別人なんですよ!
最後にはキザでもなんでもない、ちょっと面白い系の普通のにーちゃんになってました。
勘違いから始まったけれど、「恋」は人を変える。
こんなに変化した男子キャラ、少女漫画でもなかなかお目にかかれません。
ええ、私は栂敷紗英さんが大好きなんです。
大好きで大好きで、同人誌を何冊も描いてしまったくらい好きなんです。
イケメンなのにやることなすこと残念で、でも時々ちゃんと出雲を支えている。こんな面白い友達いたらいいのにと何度思ったことか。
だから、19巻の収録部分を本誌で読んだとき、泣きました。
出雲が決死の想いで「男だ」と告白した後の話。
抜粋のセリフ、紗英らしくなく言葉遣いが荒々しいのも、すごく好きです。
さらに「ボクが勘違いしてただけで、國崎くんは会った時から何も変わってないのに…嫌いになる理由なんか何もないだろ?」
これは、真理です。
もともと、紗英は出雲のことマジで「女の子」としては見てなかったと思っています。
無意識でうすうす気づいていた。
だから出雲のことを「好きっていうか…大切な人」と説明する。
1巻を読み返しても、出雲は男らしさを見せつけるのみです。その清廉さにひかれただけだったりします。
私は実はボーイズラブってやつが本当のところよくわかっていません。
男性同士の深い友情と愛情の間に何の違いがあるのか。というか友情は愛情じゃないのかと。
出雲を男だと知った紗英は梅樹を呼び出し相談します。
梅樹は「オレたちはじーさんになるまで一緒なんだぞ」と言い、一生ゆっくり考えればいいと答えます。
井神さんと幸嶋屋さんのように長生きして、一緒にいられるのなら、もし奥さんをめとったとしてもずっと付き合いが長いんですよね。
ここに愛情は存在するんだと思います。すでに「きのう何たべた?」みたいに行為とかすでに枯れ切っちゃった男夫婦の漫画があるのですから。
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私は・・出雲と紗英の間に本番はないんじゃないのかなと思っていたりします。
むしろ、あるならば・・男らしさの度合いから言うと出雲の方が上と言いますか。
2人の未来に幸あれ。おめでとう。
しかし、この「シフトチェンジ」は危険な賭けだったと思います。
「ほも」というだけで男性は逃げ出してしまいますから。本物の男性にとってそれは恐怖だったりすることもあるのです。なぜ、こんなリスクを背負ったんだろう。
(石渡治「Love」はそれこそ男装した女の子の話だったんですが、先輩との人工呼吸から読者層が変わってしまい人気が落ちたと言われています)
でも当時ブログ仲間のタヌキの人が「出雲はあれでよかったんです。最近歌舞伎のバトルでマンネリ化していたから。だからあの要素を入れたのは良かったと思います」とおっしゃってまして。
たしかに、そうなんです。12巻周辺が決定的だったわけですが、生徒会とのバトルが終わったものの、そのあと出てきた井神さんは「いかにもな悪役」であり、「出雲」でなくてもいい展開になりつつあった。
おそらくは担当が代わり、あのKさんが寛容であったこともあると思います。
てこ入れ・・かもしれない。
ひらかわ先生自体はどうだったのか、わからない。
もしかしたら、加賀斗の方を目立たせたかったかもしれませんよね…?
それはきっと、わからないままでしょう。
オマケの漫画も幸せでしたね。
一方対抗馬だったはずの杏李があの扱いだったのはちと残念。
もっと絡めばよかったのに…!君らはお似合いだと思うんだよ…!
逆に蓮が大変なことになってましたね。
まあそんなわけで私にいろんな感動を与えてくれた漫画でした。
ひらかわ先生、お疲れ様でした。
…まあせっかくですし、ちょっとだけ。
今まで書いた同人誌はここにためてあります。気になりましたら、どうぞ。
