- おやすみメモリーズ (ちゃおコミックス)/小学館
- ¥450
- Amazon.co.jp
「私の心も
こんな風に
きれいになれたらいいのに」
おやすみメモリーズ
笹木一二三・ちゃおコミックス
(ちゃお掲載)
★あらすじ★
幼なじみの朝哉に突然彼女ができた。そして紹介された。
蘆名織(あしな おり)は衝撃と共に、嫉妬と怒りと、自分に対する嫌悪感で悩まされる。
いつもどおりに振る舞おうとしても悲しいだけ‥
そんな時、不思議な存在感を持つ津野智鹿太郎(つの ちかたろう)に出会う。彼の「石部」活動に加わり、海岸でシーグラスを拾う内に織は‥
ちゃおでこんな漫画が読めるなんて!!
沸き上がるマイナスな感情を認め、成長してゆく中学生ふたりの物語。
☆☆☆
「ちゃお」は幼年漫画雑誌です。対象年齢は小学4年生から卒業するまでと言われています。
低年齢の読者にわかりやすいよう、コマは簡易、台詞は平易。物語はポジティブで、将来に夢を抱けるものでないといけません。
完全に「いけない」わけではないのですが、読みづらかったり暗い漫画だと読者が敏感に感じ取ってそっぽを向いてしまうんですね。子供だと思って甘く見ると痛い目にあうわけで、10年前からこの路線を外さないちゃおは現在競合誌に大差をつけています。
私から見ても少女漫画にリアリティを求めるのはもっと上でいいと思ってますし、レディース誌になると逆にポジティブな漫画が好まれたりします。
で、この「おやすみメモリーズ」です。本誌で見て驚きました。よく編集部がこれを載せたなと。
主人公の織は幼なじみの朝哉に片想いをしていましたが、自分とは全然違うタイプの彼女を連れて来ました。まず、主人公が全否定されたことになります。
そしてぐるぐる悩んでいる織に、彼女(名前の設定がない)がストラップを見せ付ける。
それは織と朝哉が誕生日に送りあったものと同じ。
彼女に全く悪気はなく、織と仲良くするためにお揃いを探したといいます。しかしそれは読者にとって「ド修羅場」。第一話はここで終わります。
こういう漫画がちゃおに掲載されるのは非常に珍しいです。リアルでヒリヒリするというか、やり場のない怒りがすさまじいというか‥
かつてちゃおでもシビアな作品は掲載されていましたが人気がなかったらしく、その作家さんが連載をとることはありませんでした。
編集部がわざわざ「鬼門」のジャンルに手をかけた。ちゃおにとっては一大事なのです。
りぼん以上の雑誌でこういうドロドロ漫画は普通です。が、読んでいて気分のいいものはあまりありません。
この「おやすみメモリーズ」が連載コンペを勝ち抜いた理由は二話以降にあります。
お揃いのストラップに我慢ができなくなり叩き壊す織。そしてふさぎ込んで部室で泣いている。ここまででだいたい4P。
そのあと織はどうしたでしょうか。
自分を痛め付けているでしょうか。
それとも彼女をどうやって傷つけるか考えるでしょうか。
または、朝哉との仲を引き裂くのでしょうか。
なにも出来なくてずっと放浪したり周りに心配かけたりするかもしれません。
答えはたった8Pで出ます。その「早さ」、早い割に納得のゆく流れ、私は唸りました。
これがりぼんなら一話まるまる悩んだり、彼女たちと顔を合わせる事もできず逃げまくったりして約32P潰してしまいます。
ちゃおの連載は短期ですからサッサとカタをつけなければなりませんが、それが逆に作用してしまった。
りぼんで冗長に悩みを描く理由はわかります。りぼんの読者は思春期真っ盛りなので「こういうことあるよねダメだよねでもやっちゃうんだよね」という共感を狙っています。
ですがちゃおは共感よりも啓発なんですよね。「こういうことあるけど違うこと考えようか」なんです。
智鹿太郎との関わりも、織に気づきを与えて成長に繋がります。
それからストラップを壊された彼女もえらく物分かりのいい娘さん。りぼんだったら少々落ち込んだり怒ったりしてるんじゃないかと(つまりキャラクターが作者の心理ワールドから出らんない)。
友達が共感、同調で存在せず全く違うことを考えているというのはちゃおだと割と見られるんです。仲間のなかでいざこざがあって、私はハブられてないか?と悩んでも結果は違ったという話がかなりあります。
そんなわけで「おやすみメモリーズ」はとてもちゃおらしい少女の成長物語だった。
だから連載になったのでしょう。
それから一つ。
この漫画‥恋愛漫画ではないんです。
そこが徹底しているのもすごいと思います。
私はこの作品を画期的と考えますが、当のちゃお読者はどうだったんでしょう。主人公たちが救われていくまでの過程は丁寧ですが地味だし悲しいし、キスもない。ただ読者がおとなしい漫画に慣れて来ているので、反応が楽しみでもあります。
この作者さんのギスギスした作品をまた読みたいですが、同時収録されている読み切り「うそつき彼氏」のラブラブっぷりも完璧だったりします。大した新人が出たなぁと思っております。
あと、智鹿太郎って不思議な名前ですよねぇ。最後の最後こうなるだろうなとは思ってましたが。
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