アリスと蔵六 1 (リュウコミックス)/徳間書店
¥650
Amazon.co.jp



「おれは 曲がったことが大嫌いなんだ」


アリスと蔵六1~2巻
リュウコミックス・今井哲也
(コミックリュウ掲載)


☆あらすじ☆
一人の少女が「ある世界」から逃亡した。
歌舞伎町で商売をする老人・蔵六はその少女・紗名と出会う。
何も知らないくせに横柄な紗名。蔵六は少女の「正体」も知らず頭を小突き説教をする。
蔵六は紗名にまつわる事件へ巻き込まれていく。突如出現する鉄球、弓矢、ブタ‥?歌舞伎町が破壊される。だが蔵六の態度は揺るがない。筋は通し、曲がったことは許さない蔵六に、紗名は‥

アフタヌーンで活躍していた今井哲也が新しい世界を開く。
ふとした瞬間に涙がこぼれる、やさしい世界の物語。


☆☆☆

書店をウロついていたら、見覚えのある絵に出会いました。それは2巻だったのですが、裏表紙に「絶対泣ける」とあり気になって古本の1巻を買ってみました。

読んでからあわてて2巻を買い、ヤバイ!!と叫んでしまいました。これは大きな掘り出し物です。


アフタヌーンには「四季賞」という新人賞があり、受賞作は別冊付録になります。レベルが高く、下手な連載より面白い。今井先生は「トラベラー」で大賞受賞しました。
正直絵はうまくない。しかし物語やキャラクター設定がやたら細かい。アフタヌーンの漫画ではよくあることですが、今井先生の作品は絵がかわいらしく「好き!」と言えます。
初連載「ハックス!」では主人公の明るさと周囲の見方が非常にズレていました。魅力的なような、でも友達にはなりたくない女の子。作品から楽しさと苦々しさを味わいました。
最終回掲載号が出たときは真っ先に読んだはずです。

その後アフタ購読をやめてしまったので、違う出版社から新作が出ているとは思いもよりませんでした。


さてこの作品。まず主人公の組み合わせがぶっ飛んでます。
謎の少女・紗名は金髪で生意気で世間知らず、ぶっちゃけ「CV:●宮理恵」なキャラクターです。「ある場所」から逃げ出し、仲間である「アリスの夢」に追われています。紗名は想像したものを全部具現化できる凄まじい能力の持ち主です。

ところが彼女が出会ったのは「曲がったことは大嫌い」が口癖の頑固ジジイ。「僕はいたって普通の高校生だ」と言い出す少年ではありません。

このジジイ・蔵六が強烈。紗名たち「アリスの夢」が何者であろうと、悪いことをすれば頭をはたき、正座させて説教する。

この世界では正しいと思っても周りを気にして「正しい」とは言えない。正しいと口にした途端、何か失ってしまう気がして、それが怖いから。
戦前生まれの蔵六はそんな小さな事を気にしない。古臭く、しかし漫画では新鮮なキャラクターです。


蔵六は70才ですから(実孫の早苗もいるし)「祖父と孫」みたいな組み合わせなのですが‥平成のいわゆる「じぃじ」は孫にベタ甘なのでそれとはかなり違います。怖い怖い、昭和のおじいちゃん。
強大な力をもちながら何も知らない紗名。彼女は蔵六からたくさんの「正しいこと」を学んでいきます。


孫の早苗、国家公務員の内藤と一条、たくさんの魅力的なキャラクターがかかわり話は盛り上がっていくのですが、2巻まで買って一気に読んでいただきたいのでこの先の事はあえて書きません。


‥私の祖父はどちらも立派な人物で、一人は厳しく無茶苦茶で、一人は真面目でやさしい。
厳しい方の祖父は十年前に亡くなりましたが、祖父の遺した物はあとになって私たち家族に大きく関わって来ています。
もう一人の祖父はまだまだ元気に農作業をしています。規則正しい暮らしを欠かしません。

私は一緒に暮らしていたわけではないので、特別に何か伝えられたことはありません。ただ、その生き様だけはなんとなくわかる。


その「なんとなく」がそのまま描かれている漫画なのではないか、と私は思います。

とにかく一読を。今年一番面白い漫画です。

アリスと蔵六 2 (リュウコミックス)/徳間書店
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