1/2 にぶんのいち (フラワーコミックス)/小学館
¥420
Amazon.co.jp



「なんだ
みんなも合わせたり
ムリしたりするんだ
正直に言ってもひかれないんだ
なぁーんだ なんだ‥」


1/2~にぶんのいち~
森田ゆき・ちゃおコミックス
(ちゃお掲載)


★あらすじ★
トロくて周りに迷惑をかけ、泣いてばかりだった小学生時代。隣町に引っ越したのをきっかけに、美乃里は中学デビューしました。
クラスの目立つグループに入り、「イケてる」毎日を送っているのですが、実はみんなにあわせて笑っているだけ。
そんな美乃里の前に突然、もう一人の自分「みのりん」が現れます。地味でトロくて泣き虫な小学生の時の美乃里そのものなのですが‥?!

ちゃおで個性を貫きなおかつ考えさせられる、大人が読んでもためになる作品。


☆☆☆

森田さんの漫画が好きで好きで、単行本の発売を待っていました。前作「沢渡さんを攻略する方法」も、ちゃおに掲載されながら上の雑誌より内容が高かった。今回も本当に素晴らしい!!


さて「ゲド戦記」に始まりドラゴンボールでも使われた「もう一人の自分との戦い」。
嫌な自分を切り離し忘れようと思っても、それが追い掛けて来る‥これは心理学で言う「シャドウ」であり、人間誰しも無意識の中に押し込めているものです。
たまにこれを押し込めることができなくなって苦しむことがありますが、これは邪魔なものではなく「自分を高めるきっかけ」でもあるのです。


この「1/2」はこれをたった三回96Pでまとめています。しかも小中学生が普段感じている「些細な事」だけを拾って読者にわかりやすく書いているのです。


主人公は「ダメな自分」を封印し、クラスの中心的グループに入ることができました。
クラスの決め事に口を出し、誰も逆らえない‥漫画のジャンルが違えば「いじめグループ」になりえる集まりです。
ですから主人公の美乃里は友達になった亜矢と由未子に話を合わせながら少しおびえて付き合っています。アイドルもそこまで好きじゃないのにテレビを見たり‥

そんなわけでものすごく「疲れる」のです。

そこにいきなりもう一人の自分が現れます。彼女は「みのりん」と呼ばれ、前から存在していたかのようにクラスになじんでいます。
みのりんは美乃里のダメな部分そのものであり、ヘマをしたり泣いたりするたび美乃里は過去を見せ付けられ何とも言えない気分になります。


ところが、クラスメイトの間柴くんはそんなみのりんを受け入れてしまう。
美乃里は言いたいことをはっきり言う間柴くんが好きなので、思いがけずみのりんとライバルになってしまうのです。


ここからは実際に読んで感じて欲しいのですが、例えば美乃里が本音を口にしてイジメられるとか間柴とモメるような陳腐な展開は訪れません。
ぶっちゃけ、何も起こりません。物語はただただゆっくりまったり進みます。

「沢渡さん~」もそうでしたが、森田さんの作品は大変な事が起こりそうで起こらない。
そのかわり訪れる平穏な展開を眺めていると、「本当はこんなもんだよなあ」と感じるのです。

少年向け少女向けを問わず漫画はメリハリが必要と思われている。だからトラブルが起こり泣いたり喧嘩したり、時には戦闘があり傷ついたりします。

だけど日常はそうでもない。怖いと思っていたことを実際やってみると意外とスムーズだったり、トラブルが起こった!と思って慌てているのは自分だけだったり‥

本当に怖いのは、なんでもない日常を「なにかある」と怯える自分の影なんじゃないでしょうか?


この漫画を中学生の自分に読ませてやりたかったと感じます。こういう漫画は昔存在しませんでした。
今のちゃおっ子は幸せだなと思います。

「昔の漫画はよかった」‥私たち大人はそう言ってしまいがちですが、こういう漫画があると今の漫画だって十分素晴らしいと思えますし、これからもワクワクしながら漫画が読めるはずです。


また単行本に収録されている読み切り「君の声を聞いている」は主人公が一回も笑わない作品です。異色作ですがこの作品も何気なく通り過ぎる日常の話です。
大人になって「こんなことがあったよ」と笑って話す出来事。誰でも経験したすこし苦い思い出。
なんでもないことをあえて書く森田さんの次回作を期待しています。


にほんブログ村 漫画ブログ 少女漫画へ
にほんブログ村