バーバ・ヤガー 3 (アライブ)/きづきあきら+サトウナンキ
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「その瞬間 私は決めたのだ
呪いをかけることを」


バーバ・ヤガー3巻
きづきあきら+サトウナンキ・MFコミックスアライブシリーズ
(コミックアライブ掲載)


★あらすじ★
それは四年前の出来事だった。子供会のキャンプで起きた「山姥」の事件。犬丸ほのかは山姥を見たという。そして豊田乃亜という高校生がいなくなった。

犬丸はそれから山姥の幻覚にとらわれ異常な行動ばかりとるようになるが、唯一溝呂木奈江にべったり。溝呂木も、犬丸を見捨てていなかった。

本格的に「山姥」を探そうとキャンプ地に再び入った溝呂木と犬丸だが、光岡に襲われ、逆に崖へ突き落してしまう…
山姥の呪いは、解けないのか?


どんなホラーより怖い、きづき+サトウ両氏が放つ多角的ミステリー。


☆☆☆

「うそつきパラドクス」で大人気のきづき+サトウ両氏のサスペンスです。しかし、この巻で終了。
私はお二人の漫画がとても好きなのですが、全部読んだ後なんとなくこれは急いで完結に持って行ったんじゃないのかな?と思いました。


4年前起きた乃亜の失踪事件。それをきっかけに犬丸ほのかは「山姥のせいだ」とおかしなことを言いだし、周りの人間は犬丸を相手にしなくなった。それでも、溝呂木は彼女を信じ、真相を突き止めようとします。
ところが二人の周りで奇怪な事件が起こる。本多アッコは犬丸が狂気の末にやったと思い込むが、彼女も失踪してしまう…

事件は犬丸のせいではない。溝呂木と犬丸は交際している松田と共に現場へ向かうのですが、乃亜の件にからんでいるらしき光岡が3人を襲います。


…このお話は全体的に「山姥の呪い」がかかっています。

呪いとは、誰かを殺すだけではない。言葉でもって人を束縛し、人の行動を誘導することもあります。
そして呪いをかけた本人が死んだとしても、呪われた人間が「呪われている」と感じている限り永遠に続くのです。
「呪い」の怖さは、本当は後者ではないでしょうか。



ここからはネタバレ、かつ自分勝手な解釈です。


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2巻でうすうすとなんで無害そうな松田が溝呂木についてきて事件を解決しようとしてんのかな、怪しいよなと思っていましたら、全部の黒幕はやはり彼でした。

しかし彼はほとんど手を汚していません。乃亜に暴力をふるい続けた富士昴を殺したのも、アッコの口を封じようとして殺したのも光岡です。

4年前光岡と松田は乃亜を監視するよう昴に言いつけられた。乃亜は二人を使い、キャンプのどさくさに紛れて逃亡しようとするのですが、富士に見つかって瀕死の状態に。
そして誰にも見つからない穴に彼女を放り込み、「失踪」ということになった。

ところがその場面を犬丸は目撃してしまった。富士は犬丸も殺せというのですが松田が「一生見張る」と懇願し犬丸を帰した。

しかし犬丸の口を封じるため、松田は犬丸の部屋に盗聴器とスピーカーを仕掛けて毎日毎日彼女に「お前は死ぬ」とつぶやき続けるのです。これが犬丸の心の「山姥」です。

松田は心理的な方法で犬丸の記憶を操作し、ないはずの過去を作ったりし、狂わせて、彼女の言葉を誰も信じないようにさせたのです。

ところが犬丸の中の「山姥」は松田の予想を超えて大きくなり、溝呂木を動かしてしまう。
そして光岡も乃亜のことを穿り返されないためにアッコを殺し、溝呂木と犬丸を、さらに共犯である松田を全部殺そうと思いいたる。

ところが光岡も松田に操作されていた。おそらく犬丸と同じような暗示をかけていたのかもしれません。
無意識に「ポジショナルアスフィクシア」を利用させ、ちょっとした力で富士を殺させてしまいます。富士は乃亜と同じ穴に放り込みますが、光岡の「恐怖」は止まらない。

その暴走を使って、松田は犬丸を使い光岡を「正当防衛」で穴へ落とします。

松田は溝呂木と交際していますが、犬丸の存在を拒まなかった。ある意味溝呂木を「共有」し(うそパラでもやってますね)、犬丸の信頼を得たのです。
犬丸は二人を守るために光岡に立ち向かい、相討ちとなる。


松田は共犯の光岡と目撃者である犬丸を消したかった。それは見事に成功し、警察も誰も疑わない。

ただし、溝呂木はすでに気づいていた。
しかし彼女がそれを訴えても証拠はなく、誰も信じない。溝呂木は犬丸と同じ状態になったのです。

しかし溝呂木は真犯人である松田と「生きよう」と決心します。松田は犬丸が連れてきてくれた「家族になりえる相手」だったから。
それは、松田にとって最悪の結末だったのです。


この事件の一番最初、豊田乃亜の話に戻ります。
乃亜は生い立ちからして男性の暴力を引き付けてしまう不幸な女性でした。
富士昴も最初彼女を心配して囲うのですが、だんだんと暴力をふるうようになる。
そして逃げようとして彼に殺されかけた。

乃亜は最後に「このまま消えたくない」という思いで松田に頼むのです。「私の息の根を止めて」と。

乃亜を最終的に殺したのは松田。
そして松田の手には乃亜の首の感触が「呪い」として残った。

松田はおそらく、乃亜を殺したために犬丸を殺せなくなったのでしょう。だから犬丸に「呪い」を感染させた。
犬丸の呪いが増大して事件を繰り返すことになりましたが、邪魔な人間はみないなくなった。

ところが、犬丸の中にあった「山姥の呪い」は溝呂木に渡っていたのです。
松田は溝呂木を一生監視することになりました。
溝呂木はこの真相を一生明かすことはないでしょうが、逆に松田を縛り付けているといえます。

彼らが死ぬまで、乃亜の「呪い」は続くのです。子供が生まれれば、それはずっと受け継がれる。

「山姥」というよりは「魔女」だった乃亜。彼女の一生はなんだったんだろう。
彼女は自分の生き方を振り返ることもなく、ただ憎しみを一人の少年に渡した。
考えてみると、非常に怖い話です。

ですが「運命」というのは呪いのようなものかもしれません。
犬丸を盗聴していたからこそ松田は溝呂木を愛してしまった。
溝呂木も犬丸によって松田を許した。
彼らは千切れることない「絆」を手に入れたのです。
純粋な愛情より、強い絆。


きづき+サトウ両氏の作品はとことん「愛」について描いているなと思いました。
いろんな形の愛がある、ゆがんでいても強い愛がある。
そんなことを考えさせてくれる作品でした。これからもご活躍を期待しています。



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