3月のライオン 7 (ジェッツコミックス)/羽海野 チカ
¥510
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「『思いやり』‥?
うーん
あんまりピンとこないっていうか‥
偽善?みたいな」


3月のライオン7巻
羽海野チカ・ジェッツコミックス
(ヤングアニマル掲載)


★あらすじ★
ひなたが友達を庇っていじめに遭っていると知った零。辛くても戦いつづけるひなたに心を揺さぶられ、零は新人王を獲得した。
ひなたの教室に光が射し、零にも新たな道が開けて行く‥しかしそれは嵐の到来だった。


「ハチクロ」でヒットし、大人気作家となった羽海野先生の激流のような将棋と人生の物語。


☆☆☆

5巻で始まったひなたへのイジメにようやく変化が現れました。いじめや思春期について考えさせられるセリフが散りばめられており「見事」としかいいようがありません。


とはいえ、これは「変化」であり「決着」とは言えないのです。

まずひなたの担任が倒れます。
6巻でひなたばかり責めており「ことなかれ主義」で腹の立つ存在でしたが、彼女の最後の叫びからして倒れるのも無理はなかった。
毎年毎年何かしらのいじめやハブりを見てきた。最初は真面目に取り組んだのでしょう、しかしいろいろな圧力に折れ、押し黙るしかなくなった。
それでも「これはいけない」「何もできない」「そんな私はダメだ」と思っていたんじゃないでしょうか。
でなければ倒れることなくのうのうと担任をやっていたでしょう。

自分も担任が倒れるの経験したんで‥しかしクラスは救われなかったよなあ‥いろいろとすさんでて大変だったよ。


で、学年主任である国分先生が臨時の担任に就きます。ベテランで頼もしい先生であり、あっという間にクラスの闇を払います。
しかし何故佐倉ちほが転校しひなたが京都で寂しく過ごしたのを看過したのか?という疑問が出てくるわけです。

これは教師の間にある領分の問題ですよね。
国分先生はひなたの担任をぎりぎりまで信じていた。途中で割り込んでは彼女のためにならないと思っていたのでしょう。
ひなたの担任も、言うに言えなかったでしょうし。
あと今の教師は超忙しいですからね。公務員ってだけで叩かれるし。

国分先生はイジメグループを早急に囲い、見て見ぬ振りをしなければならなかった他の生徒にも変化を与えます。ひなたはクラスでの位置を取り戻したわけですが‥


このイジメにはいろいろな被害者がいます。転校に追い込まれたちほ、ひなた、ひなたの担任。ひなたは頑張りましたが他の二人が受けた傷は計り知れない。また、怯えて暮らしたクラスメイトたち。


ところがいじめの首謀者・高城メグミは毎日国分先生と面談し口先で「ごめんなさい」と言うだけ。
自分が何をしたのか自覚していないし、「自覚したとこで何かあるの」と国分先生に尋ねるのです。

さらに冒頭のセリフ。この子はこのまま大人になってしまうのかと考えさせられます。高城の母親も「損得感情」で物を考え「偽善」という言葉を多用しているのでしょう。


‥ちほが通っている「心のケアセンター」の光景がでてきます。友達を作るプロセスを教えてもらったり、優しい大人に囲まれて頑張っています。
でもなんでちほの手紙はですます調で描かれているんだろう。

戦慄のいじめ漫画「ライフ」の悪役だった安西愛海は最後に女子少年院‥というより教育センターらしき所に送致され、ジャージ姿で花を植えていました。

私はちほと愛海が同じ事をしているようにしか見えなかった。
たしかにちほは回りの子より「成長」がある意味遅れていたかもしれない。手厚い保護が必要なのはわかります。しかし、やりきれない。


いじめ問題はこれ以上の対処ができないんだな‥と痛感しました。だからひなたのクラスの問題は解決していないのです。

羽海野先生はフラットに話を動かしたんだなと思います。本当はどうすればいいのか、こちらに問い掛けている。

それでもちゃおやなかよしで大量生産されているいじめ漫画が束になってもかなわない。
私は子供向け漫画を愛していますが、いじめ漫画に関しては大人がどうするとか、大人も完全ではないとか、「実際どこに訴えればいいのか」が全く描かれていません。ただ情緒的に「イジメはよくない!」と叫んでいるだけ、そして加害シーンはやたら残酷に描く。
読んだいじめっ子は手段を増やしますし、いじめられっ子はただ呆然とするだけなのです。

「3月~」が「ヤングアニマル」に掲載されているのが悩ましい。「うそパラ」と同じ雑誌なのだし。



‥さていじめについて長々と書いてしまいましたが、主人公は棋士の零でした。

ひなたと零は今回の件で共に一つ階段を上がったのでしょう。
自分の知らないうちにひなたが明るくなり、「何もできなかった」という零。ひなたは怒ります。
京都に来てくれたことがどれだけ心強かったことか。新人王になったことがどれだけ誇らしかったか。でも零は自分の行動にはピンときていない。そういう子です。

「結果が全てじゃない」林田先生の言葉はいつも素敵ですよねー‥。

そしてこれから、またそれを痛感するのではないでしょうか。

新人王を獲得した事で宗谷名人との記念対局をすることになった零。
将棋は最強、しかし人間としての存在が「皆無」の宗谷名人。零も彼のようになる可能性はあります。

将棋は息を止めて潜ることに似ている、と山崎順慶は言います(ヒールだった彼の気持ちまで掬ったのがスバラシイ)。命懸けで潜っても手ぶらで帰ってくる事が殆ど。だから怖い。
しかし棋士は何度もひるまずに潜って高みに上り詰めていく。

宗谷名人はその「恐怖」どころか「呼吸すること」もしなくなっているんじゃないのかと思ったりします。そうすれば何度もいつまでも潜り続けられる。

零が宗谷と戦い、「呼吸」を無駄と感じてしまったらどうなるんだろう。

帰っておいでと待っている川本家に背を向けることになるのでしょうか。


あと島田八段が相変わらずしおれてますがかっこいいし、新キャラのアルピニスト桜井七段がナゾですね(笑)。



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