空が灰色だから 1 (少年チャンピオン・コミックス)/阿部 共実
¥440
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「私を待たすの嫌い
だからいつも嫌い
玄関前で嫌い
漫画を読んで嫌い
待って嫌い
お前が嫌い私が嫌い
お前が私を大嫌い
私をお前も大嫌い」


空が灰色だから1巻
阿部共実・チャンピオンコミックス
(週刊少年チャンピオン掲載)


★あらすじ★
恥ずかしがりすぎる19歳、運命に逆らう女、内臓に美を求める男子高校生、モテない女子高生三人組・・・
ありふれた日常で「ありふれない」男子と女子がさまざまな感情を見せ合う。
そこで生まれるのは希望か絶望か。
チャンピオンで連載されるや否や大反響、読んでいると心がざわつく、モヤモヤするオムニバス。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

ついに単行本発売です。この日を待っていました。

阿部先生はチャンピオンの新人漫画賞でデビュー。デビュー作「破壊症候群」を読んだとき「なんだこの人は」と思いました。チャンピオンはヤンキー漫画が多く、ペンタッチも荒々しいものが多い。ですが阿部先生の漫画はサンデーか?と思うようないわゆる「萌え系」の絵なのです。
しかし、その絵に反し内容は何とも言えない・・いろいろな「闇」と「エグさ」に彩られていました。

そして三回連載「空が灰色だから手をはなそう」が始まります。10ページ程度の短編でありながら構成力とインパクトが強烈でたちまち大反響。その後すぐにタイトルを「空が灰色だから」に変更して本連載へ移行しました。
単行本化が決定した時、「これは話題になるだろうな」と思いました。そして、他の少年三誌に比べちょっとマイナーであるチャンピオンのイメージも変わってくると期待しています。


「空が灰色だから」略して「空灰」がどんな漫画であるか?
コメディなのかシリアスなのか、学園ものなのかホラーなのか?実は、全くつかみどころがありません。
コメディだと思ったらものすごいオチが待っていたり、ホラーだと思ったらひっくり返されたり、毎回毎回最後のページを読むまで気が抜けない。
そして、読んでから数時間落ち込んで立ち上がれなくなるような話にぶつかることもあります。落ち込みながらもいろいろ考えさせられ、「空灰」という漫画のことで頭がいっぱいになってしまう。
この魔力はなんだろう。

冒頭のセリフは第二話「お前は私を大嫌いなお前が大嫌いな私が大嫌い」のものです。
これはごく一部の抜粋なんですが、「病んでいる」ことが理解できると思います。


「空灰」はオムニバスでつかみどころがないと言いましたが、一部を除いて主人公が学生であり「思春期の恥じらいをひた隠しにしている」という共通点があります。

思春期はいろいろフクザツなお年頃です。
自分が考えていることを他人に知られるのが一番恥ずかしい事だったりします。
だから自分を偽って大げさなことを言ってみたり、好きな人を「あんたなんか好きじゃないんだからねっ!」と言ってみたり、いろいろな理由をつけて自分の本音をごまかしたりする。
ごまかしすぎて自分がわからなくなったりもする。
そして、自分に嘘ついたことを後で猛烈に反省する。苦しむ。

思春期はある意味での「ヤマイ」です。なにしろ、苦しいのですから。
「中二病」「ツンデレ」もヤマイの一部でしょう。

マンガの世界ではツンデレや中二病の人間がいたとしても、周りの人に許され、揚句にチヤホヤされます。
「ただしイケメン・美少女に限る」というハードルをクリアしているからでしょうか。読者がそのヤマイに共感してしまうからでしょうか。

しかし「空灰」の「病んでいる人間」は許されません。彼らは行き詰まってしまうか、断罪されてしまう。
「かわいらしい萌え絵」につられて読むと、大打撃を食らうと思います。
自分も学生時代こういう過ちに陥りかけたなー・・・と思って何回も落ち込みましたが、好きな人やモノに対しひどい事をしてでも「ちっぽけなアイデンティティを守ろうとする」漫画のツンデレさんたちに対して疑問を持っていたので、
しばらくするとえらくスッキリした気分になったりします(中二病の人も周りに結構迷惑かけますよね)。


そして「空灰」のすごいところは10ページの短編を毎回続けていながらどの回も構成が巧みであること。
たまにはネタが切れたり、先生自身のスタミナが切れることもあるだろうに「つなぎ回」「一休み回」が存在しません。
ジャンプなど、週刊で毎回短編を書くのは本当に大変。しかしその半分のページで話をきれいに終わらせる能力は超人的としか言えません。

おそらく二巻以降も刊行されると思いますが、今は先生の「書き続ける力」が尽きてしまわないかが心配だったりします。それでもこれからのチャンピオンを牽引する漫画であることは確実です。

この漫画の存在が知られ、評価されることを切に願っています。


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