- 黒薔薇アリス 5 (プリンセスコミックス)/水城 せとな
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「2年前のあたしは
本当に光哉のこと 好きだった‥‥」
黒薔薇アリス5巻
水城せとな・プリンセスコミックス
(月刊プリンセス掲載)
★あらすじ★
百年前ディミトリが愛し奪おうとしたアニエスカ。しかし彼女はそれを拒み自殺してしまう。
吸血樹のディミトリはアニエスカの抜け殻を日本に持ち帰り、現代になって新しい魂「菊川梓」を手に入れた。28歳の教師だった梓は恋人の命と引き換えにアニエスカの身体に入り「アリス」と名乗る。アリスの使命はただ一つ、吸血樹を繁殖させること。そのために4人の吸血樹から優秀な「オス」を選ばなければならない。
アニエスカに罪の意識があり一歩引いているディミトリ、アリスに食事とデザートを作ってくれる双子の櫂と玲二、そしてアリスに服を与え場を和ませてくれる優しいレオ。しかしレオは死んでしまった。新しい種を瞳子に託して。瞳子も種を撒いて命を終えた‥
梓がアリスになってから二年が経過していた。ピアノの音に引き寄せられ、「菊川梓」を愛した光哉が静寂館にやってきて‥?
恋と繁殖をめぐる、痛々しいまでの人間模様。
☆☆☆
3巻の感想で「いつの間にか二年経ってる」事を書きました。その時は二年もあったのにアリスがなにも出来なかった、ということを言いたかったのですが‥
ここにきて何故「二年」だったのかが判明します。
菊川梓だった時に愛していた教え子の光哉がやってきます。アリスの中の梓にも気づきます。
しかし光哉はもう「生島光哉」ではなかった。事故で助かってから引きこもり、家族が崩壊して離婚。そして大学に行かずフリーターとしてふらりと生きている。
二年前梓が愛した光哉はそんな男性ではありませんでした。教師を愛してしまうような無鉄砲さはあったけれど、情熱があって生き生きしていた。
今の光哉は目がうつろです。そしてなんとなく気持ちが悪い上に、子供っぽい(幼稚な感じがする)。
アリスの周りが何十年も生きてる吸血樹だったからでしょうか?
「二年」はアリスと吸血樹にとってなんでもない時間でした。
でも人間は違う。新陳代謝を繰り返し、情報の波に翻弄されたり、毎日毎日をせわしなく生きている‥
時間は残酷です。
光哉は梓を「俺が殺した」と思っていました。愛したばかりに事故にあったのだと。助かった自分だけが幸せになってはいけないと、自堕落になっている。
命を捧げて光哉を救ったと思っていたアリスはショックだったでしょうが、これはアリスが悪いわけではない。
光哉が「梓のため」と言って自分を楽でダメな方向に持って行ってしまっただけなのです。
(かたやアリスは身体を失ったのに割り切りは早かった)
もし光哉が、アリスが願ったとおり幸せに生きていたらどうなったんだろう?アリスは光哉を選ぶ事もできたはず(そのあと繁殖すればいいから問題なかった)。
しかしアリスはもう、光哉を恋愛対象とは見られなくなっていました。二年間で一歩踏み出しているアリスと停滞した光哉。アリスは「先生」として接することはできるでしょうが、それ以上はない。
恋は永遠じゃない。つくづく思います。どうしても、どうしてもお互いが一緒に成長するわけではないから。どんなに昔狂おしく相手を想っても。
ところで、舞台から下りたと思われていた光哉が最悪のカタチで戻ってきたのは何故だったのか。櫂と玲二、そしてディミトリに影響を与えるためでもあった。
ディミトリにしてみればアリスは「アニエスカの身体」。今回アリスは光哉から「梓の精神」を問われたわけですが、ディミトリはそれと対照的です。
「精神」すら変わる。では「身体」は?
今までディミトリは吸血樹の中ではアリスから心情的に遠い存在でした。いや、ディミトリがわざとそうしていたと思います。ディミトリにとって二年間で何があったでしょうか?この巻で彼の言動が何故あんなだったかようやくわかってきた気がします‥
そして玲二。光哉のセリフと振る舞いから吸血樹になる前(死ぬ前)の記憶を断片的に思い出してしまいます。あまりに疑わしくおぞましい記憶。ここでディミトリが遠くに旅立ってしまうので、怖くて怖くてたまりません。
何かの引き金になりかねないので、願わくば光哉はもう出てこないで欲しいですが‥まだ「梓」には教師としての責任があるかなあ‥
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