「この目で 視れないだろうか
道標を」
黎明のアルカナ１～５巻
藤間麗・Cheese!フラワーコミックス
(Cheese!掲載)
★あらすじ★
北にセナン、南にベルクート。小さな島に二つの国があった。国はいつもいさかいを起こしていたが、半獣半人を奴隷として働かせ、黒髪を持つ者だけが王侯貴族として君臨していた。
一時休戦するためセナンの第一王女ナカバはベルクートの第二王子シーザに嫁ぐ。しかし、王族のはずのナカバは血のような赤い髪をしていた。
「人質」のような婚姻。だがこれが世界を変える物語の始まりだった‥!!
☆☆☆
講談社デザートが変わりつつある。エ ロ描写に頼らない本気の作品が出てきています。そして似たような雑誌である小学館Cheese!にも。それがこの漫画です。
まだ別コミに渡辺多恵子・田村由美先生がいた頃は小学館でもファンタジー漫画があちこちで当たり前に存在しました。ところがflowersが創刊されると小学館でのファンタジーはそちらだけになった。ですから、Cheese!名義でファンタジーのコミックスが出てきて首を傾げたものです。
昔１巻を見て買おうかな？と思ったんですが、後ろのあらすじを見る限り「強引でわがままな王子がお前は俺のものだと言う」とか書いてあるので、
「なんだ、舞台背景が違うだけでやってることは一緒か」とガッカリしやめてしまいました。
ところが最近、小学館で「BIG４フェア」ってのがあります。好きです鈴木くん、電撃デイジーに並んでコレが入っており「売る気満々だな」と思っていたらブク●フで３巻まで発見。
読んで‥５巻まで揃えました。
なるほど、ダテに推してない。
これは掘り出し物です。
主人公のナカバは第一王女でありながら母親の駆け落ちで生まれたため髪が赤い。そのせいで嫁ぐまで城の外に出ることは許されなかった。ナカバが信頼しているのは半獣半人(亜人)のロキだけ。
嫁いでも赤い髪を好奇の目で見られ、親族から蔑まれる。特に国王グランの仕打ちはハンパないし、過去に深い因縁がある。
ロキも亜人なので差別が甚だしい。
正直な所、３巻まではあまり面白くないかもしれません。３巻までずーっとナカバがひどい仕打ちに耐えながら、俺様なシーザをデレさせていく感じの話になっています。
ところが、３巻の中盤に砂漠の国リトアネルから第五王子アーキルがやって来て事態は変わります。
ナカバは赤い髪だけでなく、父親から譲り受けた「力」があった。それまでは血を見ると忘れたい過去がフラッシュバックして辛い思いばかりしていたのですが、
アーキルによってそれは「時のアルカナ」と教えられます。実は使い方次第で過去だけでなく未来も見えるらしいのです。
この力を使ったら、世界は変えられるのだろうか？そう感じナカバが立ち上がってからの物語は「王家の紋章」に近い爽快感があります。
「王家」のキャロルの現代からもたらす知識はいわゆるチート能力ですが、あれを使われるとドキドキしましたよね。ラブシーンより銅の鉄格子を布で折り曲げるところがずっと好き。
それからなかなか少女漫画で見られなかったギスギスしていて重苦しい世界観がたまらない。
少女漫画のファンタジーは主人公が不幸な生い立ちでもわりと周囲からチヤホヤされ、温かい物語が多い。赤髪つながりで「赤髪の白雪姫」を読み返しましたが、しんみりとほの暗い部分はあるけど毎日の生活は保証されてるなあと確認しました。
この漫画の全体を行き渡っているのは差別と偏見。黒髪の人間でなければ上に立てない‥それはこの世界でも似たようなものです。ナカバはどんなことをされようと、相手が王族だろうと屈しない。誰にも甘えないし、こびない。ヒロインとしてどっしり立っています。
Cheeseだからそれなりの恋愛描写もあるだろうと覚悟してましたが、キス以上がない。シーザが俺様なわりにコドモでナカバに何をしていいかわからないのです。不器用でちょっとアホいシーザですが、ナカバとの出会いで彼の成長も楽しく見守る事ができます。
そして、絵が抜群に上手い。
３巻までを「暗い世界観の説明」だとするなら、この物語は相当長くなると思われます。ぜひ「ふしぎ遊戯」を超えるシビアで殺伐としたお話になってほしいです。
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