ジャンク的漫画日記-100917_132439.jpg


「あたしは自分が失望して傷つくのが一番嫌で
舞い上がってひとりで恥をかくのが嫌で
それで男の人や恋愛自体をすごく否定的に考えたりするの
可愛いげのない女だったんだ
‥今も同じ」


黒薔薇アリス4巻
水城せとな・プリンセスコミックス
(月刊プリンセス掲載)


★あらすじ★
百年前ディミトリが愛し奪おうとしたアニエスカ。しかし彼女はそれを拒み自殺してしまう。
吸血樹のディミトリはアニエスカの抜け殻を日本に持ち帰り、現代になって新しい魂「菊川梓」を手に入れた。28歳の教師だった梓は恋人の命と引き換えにアニエスカの身体に入り「アリス」と名乗る。アリスの使命はただ一つ、吸血樹を繁殖させること。そのために4人の吸血樹から優秀な「オス」を選ばなければならない。
アニエスカに罪の意識があり一歩引いているディミトリ、アリスに食事とデザートを作ってくれる双子の櫂と玲二、そしてアリスに服を与え場を和ませてくれる優しいレオ。

レオは寿命を果たし、アリスが受け入れることはなかった。レオは死んだ。玲二がアリスに求愛を始めたが、まだ気持ちのまとまらないアリス。そんなとき、納戸から古い日記帳を見つける。
それはディミトリたちを引き取った和泉小路伯爵令嬢・彰子のものだった!!
そして、レオの「遺言」が形としてやってくる‥


恋と繁殖をめぐる、痛々しいまでの人間模様。


☆☆☆

月刊ゆえに刊行はスローペースですが、毎回読むとたまらない気持ちになります。水城先生はやはり神ですね。


今回は2ケースの「繁殖」がありました。

まず、日記帳からわかる彰子の姿。
ディミトリはヨーロッパにいられなくなりマクシミリアンと共にオカルトが趣味だった和泉小路伯爵の元に落ち着きます。娘の彰子はディミトリに恋をしますが、ディミトリは寿命が近づいたマクシミリアンの妻になり繁殖しろと言うのです。
違う人と繁殖しなければならないのに、受け入れた彰子の心中は恐ろしく冷静で寛容だったと思います。


それから、レオが何度か交際していた小説家の鳴沢瞳子。実はアリスに断られた後寿命が尽きる前に彼女と繁殖していたのです。

繁殖すると雄はすぐに死にますが、雌は種をまくまでに30日の猶予を与えられます。もともと不治の病を抱えていたので瞳子にはむしろ延命だったのですが、吸血樹の樹液(体液)を貰わないと無事に種を作れないのでアリスたちの館にやってきます。

最初ディミトリがずっと唾液を与えていたり(つまりキス)居心地が悪く拒絶するアリスでしたが、瞳子はアリスにレオからの言葉を伝えます。

瞳子が種をまく瞬間まで一緒にいて見届けて欲しいと。
それで繁殖相手を見つけるか、繁殖することを拒むか決めてほしいと‥

レオは死ぬまで非常にアリスに優しかったのですが、死んでもなおアリスたちの事をずっと考えていた。

そして瞳子自身がアリスに大きな影響を与えます。
瞳子はアリスの中身・梓と同じく聡明な女性です。死期を悟るまでもしかすると頑なな梓と同じ恋愛観だったかもしれない。

冒頭のアリス=梓の気持ちは、女性なら一度は考える事です。自分も非常にわかります。
ですが瞳子は彼女に一番最後、「本当に好きになった人を選んだ方がいいと思うよ」と告げるのです。

ところでこの時瞳子は六角形の部屋を見てたまらず涙を溢れさせてしまうのですが、瞳子には何が見えたのでしょうか。
アリスには何も見えなかったし、こちらにもわかりません。
ただ、瞳子が「ちょっとくらいダメな男だっていいじゃない」と続けるのです。

彼女が見たのは昔付き合ってきた人の中で一番好きだった人なのか。
それとも神様を見たのか‥?

彰子が日記に残した最後の言葉もコレに関する事なのではと思うのですが、

そうするとアリスが繁殖するとき何を見るのか。
ディミトリだったとしても、繁殖した相手は違うかもしれないし‥



ところで自分はニュースなどで親が子を殺したりその逆の事件が流れると、「子は親を選べないが、これは宿命であり本当に避けられないことなのだろうか」と考えてしまいます。
「地球へ‥」などになると、子供は平等に親から離されて育てられています。


吸血樹の種は蝶になり、事故などで死んでしまった若い男性を選びます。子供から育つのではなく最初からオトナ。

だけど繁殖する前のマクシミリアンはディミトリに「繁殖するのが怖い」と言います。
マクシミリアンはディミトリの前に仕えていたブラッドレイに愛していた女性・アレクサンドラを渡している。吸血樹の忠誠心は並々ならぬものですが、マクシミリアンは心のどこかにディミトリ=ブラッドレイへの憎しみがあるのではないかと恐れている‥

種にはまいた吸血樹の意思が乗り移ります。まかれた人間はそれまでの記憶や環境を忘れたりしませんが、種の意識が混ざってちょっと変わってしまう。

マクシミリアンの種はおそらくレオと櫂と玲二に宿ったのですが、種にもいろいろあってレオはディミトリに最後まで忠実でしたが双子は‥

これからの伏線でしょうし、アレクサンドラについてもまだ何かあるかもしれませんね。


それから吸血樹の繁殖方法は都合よく跡継ぎを選べるから効率いいかと思いましたが、「環境」ではなく「情念」が遺伝してしまうわけですから大変ですね。人間より大変かも。

さらにレオの「遺言」が本当なのか、レオの意図しない未来があるのか。レオが瞳子に繁殖が「おぞましい」と言ったことが忘れられません。

最後、とんでもない人物が再登場しているし、ますます楽しみです。

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