「ま、ぼくらがやるのは女形だけどさ。
舞台の上ではみんなヒーローなんだよ」
國崎出雲の事情1巻
ひらかわあや・少年サンデーコミックス
(週刊少年サンデー掲載)
★あらすじ★
國崎出雲16歳。歌舞伎一家に生まれ、計り知れない美貌を持つため学校では男性から追い掛けられる程モテる。
‥が、彼は「男」である!
男に生まれたからには男の中の男として生きたいのに、別居していた國崎家に戻ることになってしまった。
腐っても國崎家の跡取り、周りが放っておくわけがない。出雲はだんだんと「女」にされていく‥?!
サンデーに久々現れた新鋭作家のファーストコミック。
☆☆☆
そういえば最近「オトコの娘」というのが流行っていて、それ専門の雑誌が出ましたよね。つーか流行ってるのか‥と驚いてます。
「今更?」というイミで。
主人公出雲は小さい頃女形を演じて(当時女形の意味を理解してなかった)人気を博していましたが、「息子萌え」が激しい父親に愛想をつかし母親は出雲をつれて別居してしまいます。
それから8年。母親が気まぐれで一年間海外旅行へ行ってしまったので、出雲は國崎家に戻らなければならなくなりました。
ただ出雲は幼少時からの根強いファンも多く、それから天賦の才能があるらしく見事に女形を演じちゃったりします。
そんなこんなで変態の父親以下、いろんな人に振り回されるコメディというわけです。
読んだ後、いろいろと考えました。
とにかく、主人公の出雲が激しくかわいいです。中盤から出てくるライバル(?)の栂敷紗英が「跡継ぎがいないから男として育てられたんだ!!」と勘違いしますが、むしろその方が自然(笑)。
作者も女の子だと思って出雲を描いているような気がします。
正真正銘の女の子もいますが、仲村柚葉(出雲の幼なじみ)は容姿も性格も半端。料理が絶望的にヘタ等、ラブコメに死ぬほどいるタイプの女の子で魅力がありません(コ●ンの蘭みたいなキャラクターです。自分は絶対灰原派なのでそれも受け付けない理由かな)。しかもあまり出てこない。
だから、今の所は「ヒロイン不在」の漫画です。
が、多分この漫画のヒロインはずーっと出雲であり、出雲がかわいければ読む側としては全然OK、なんだろうと思います。
それから出雲が出ていったのと入れ違いに養子として入って来た皇加賀斗。同じ女形なのですが出雲とはタイプの違う「キレイ系」で、男性に戻るとかなりカッコイイ。女形の練習と称して女装癖を持つのですが、出雲に女形のよさを伝えたりアドバイスする。もし「男装した女の子の少女漫画」だったら彼が「ヒーロー」です。
ではBでLな展開になってしまうのか?と思ってしまいますが、BでLな漫画の受け側キャラクターは「女の子みたいな美少年」であっても男性の身体をしており、出雲はぷよぷよしていて本気で女の子みたいです。根本的なものが違います。
‥男装する少女漫画が何故ウケるかといえば、男装した女の子にはじめじめした女の子の性質がないからです。読者の少女たちにはそういうコンプレックスがあります。
この漫画は男装少女漫画のエッセンスを少年漫画に持ち込んだのではないかと思います。もともと少年漫画におけるヒロインは、ラブコメでない限りはサシミのツマ。しかもジャンプに多いのですが、女性キャラを少女漫画と同じようにジメジメ書きたがる。魅力がなくなるのは当たり前で、人気がないのでどこかに追いやられたり囚われたまんまだったりします。
ではどうすればいいのか?
チャンピオンだと「対等に戦う」漫画が発生したし、サンデーには本気で男装して男子と戦った「Love」が存在しました。
ですが精神がいくら男性に近づいても、何をどうやっても「女の子の身体」なのです。
そんなわけで「オトコの娘」というのは、外見が女の子という「記号」であり、それ以外中身が何であろうが不問。女の子の精神をハナから持たないためにどろどろジメジメしないし、BでLとまではいかないけれど「背徳性」や「そこからくるドタバタと笑い」が楽しめるわけです。
‥なんて言っては見たものの、サンデーには前々からこういう漫画があります。
ハヤテはよく女装してるし、井上和郎「葵デストラクション」は主人公の父親が超絶かわいいというすごい設定です。たまに「葵」が復活しないかと思ったりします。
この漫画が「惜しい」と思うのは出雲を傍観して惚れたり困ったりするキャラクターがいないことでしょうか。一貫して出雲の主観で話が動いているので、出雲のアタマのワルさがだだ漏れしちゃうんですよね。
その「完璧でないオトコの娘」な感じが逆に武器になればなと思います。
しかし、サンデーとしては稀に見る新人さんです。「ハヤテ」の畑先生・「結界師」の田辺先生以降一切新人が育たなかったため渡瀬先生が入ってくるなどサンデーは新人に恵まれませんでした。
本当に新人?と思うほど絵が達者で動きも滑らかです。そして非常にサンデーらしい漫画だなと思います。
多分メディア化も考えられる作品ですが、とにかく「あと一歩」。おとなしくてかわいらしい女の子を出して出雲と絡めたら一見「聖母様が云々」な絵になるでしょうし、出雲に対してもっとジレンマ抱える男子がいてほしいです。
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