ジャンク的漫画日記-Image2427.jpg

「熱子‥!! 俺‥お前と離ればなれになりたくねーよ‥‥!!
でも‥ゴメン 俺が‥
俺がバカなばっかりに‥!!」
(熱子=AKY108の後前田熱子)


保健室の死神2巻
藍本松・ジャンプコミックス
(週刊少年ジャンプ掲載)


★あらすじ★
常伏中学に養護教諭として赴任して来た派出須(ハデス)逸人先生は何故か顔にヒビが入っていてコワイ!!
しかしハデス先生が赴任してきた理由は生徒にとりつく「病魔」を倒すことだった!!
今回はヤンキー妹尾の女子嫌いから発する事件、シンヤの弟が無断外泊する謎など、若く悩み多き中学生たちの心をまたまた先生がズバリ解決。最後には恐怖の定期テストが?!
コワイようで愉快痛快、学園ホラーコメディ。



☆☆☆

男子女子!!と言い合いし、接近していれば冷やかされ、個性を欠点だと悩み、誰かに憧れ、または嫉妬する。大人になれば「なんであんなことで泣いたりケンカしたりしたんだろう」と思うのですが、当の本人は精一杯だった‥それが「思春期」です。

「保健室の死神」はそんな心に付け込んでくる「病魔」を倒す話ですが、ハデス先生の力で「咀嚼」する前に病魔に取り込まれた本人が悩みと決別することが大事であり、そこを主として書いているのでたまに「咀嚼」シーンが省略されてます。
ですが、力を持たない中学生が今あるだけの力と心で成長する、というスジは非常に好きですし、中学生らしいちっぽけな悩みはいつもほほえましい。
少年ジャンプですからもっと「でかい力」でドーンとやった方が読者ウケもいいのでしょうが、こんな漫画があっていいと思います。
というか応援しています。

で、2巻のイチオシなんですが、一番最後の「恐怖のテスト週間」です。この巻で一番しょーもない話なんですが、大好き。

美作の友達というのか悪友なんでしょうか、スケベで超・一般男子な「安田貢広」の話。今までモブ扱いのキャラクターだったのですがいきなり主役格に。
安田は定期テストで平均点が取れないと母親から「AKY108」のグッズを全部燃やすと言われてテンパっています。冒頭の台詞はそんな安田の愛の叫びです(笑)。

テスト中答案用紙を見つめて苦悶していたら、答案用紙から目の化け物が!!
病魔は安田の右目になるのですが、右目はどこにでも移動でき、学年一秀才の本好の答案を覗くことができたのです。

こりゃいいやと思っていた安田ですが、病魔はさらにささやきます。「テストだけなんて小さいのう‥わしの目はどこでも覗ける。例えば女子更衣室や女風呂‥」

安田の煩悩が爆発し‥爆笑の顛末になるのです。ハデス先生が出ることもなかったという‥


安田についた病魔もちゃっちいのですが、安田の使い方もしょーもない。
短編ですが非常に上手い作品です。しかも安田は他の中学生と違い「懲りない」ので3巻ではまた別の病魔にとりつかれます。成長しないあたりもいいですね。
というか「煩悩」は切り離せないんですよねえ‥


ところで2巻は実はシンヤの弟・刀哉が無断外泊をして映画館に居つく話がメインであり、この巻のほとんどを占めています。ですが掲載時に作者本人が「長すぎてごめんなさい」とコメントしていました。
この話は今までで最強の病魔との戦いであり、ハデス先生の持つ最大の力が発揮される話だったのですが‥メインキャラであるはずの明日葉・藤・美作の3人が出てこなくていつもとテイストの違う作品だったので票が取れなかった模様。
ここからしばらく短編が続き、現在はあまりシリアスな話を展開していません。
自分もメイン抜きで話を動かすのはどうかなと当時思っていました。現在また長編がありましたが、この経験が生きて3人が割と出てくる話になっていました。
ジャンプの中ではいまだ微妙な位置の漫画でこれからが心配ですが、路線が固まったらすごく面白くなると思います。

最後にヤンキー妹尾の四人の姉のことですが、よくこういうシチュエーションに憧れる方多いんですけど…
「お姉さん」というものは幻想です。マジで。

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