黒薔薇アリス 3 (プリンセスコミックス)/水城 せとな
¥420
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「なんだか間違ってる気がしたの
これじゃ選んだんじゃなくて 選ばされてるみたいに思えた
だって 自信をもって『レオを選んだ』って言えるほど
みんなのこと あたし 知らないよ」


黒薔薇アリス3巻
水城せとな・プリンセスコミックス
(月刊プリンセス掲載)


★あらすじ★
百年前ディミトリが愛し奪おうとしたアニエスカ。しかし彼女はそれを拒み自殺してしまう。
吸血樹のディミトリはアニエスカの抜け殻を日本に持ち帰り、現代になって新しい魂「菊川梓」を手に入れた。28歳の教師だった梓は恋人の命と引き換えにアニエスカの身体に入り「アリス」と名乗る。アリスの使命はただ一つ、吸血樹を繁殖させること。そのために4人の吸血樹から優秀な「オス」を選ばなければならない。
アニエスカに罪の意識があり一歩引いているディミトリ、アリスに食事とデザートを作ってくれる双子の櫂と玲二、そしてアリスに服を与え場を和ませてくれる優しいレオ。

しかし吸血樹には個体差があり、レオの寿命が尽きようとしていた。そんなことを全く知らずレオからアプローチを受け続けるアリスは‥?!


☆☆☆

「失恋ショコラティエ」とコレの差は一体何だろうと思います。評価を受けるのはあちら側。「アリス」は表面がゴスロリだからでしょうか。そうしたらあちらは表面が「大人が読んでも恥ずかしくない漫画」というコーティングをされているだけに感じます。
コーティングを外せば全く差がありません。


さて3巻ですが非常に驚いてしまいました。人間とは異なる存在「吸血樹」と16歳の身体を持った28歳の女性、なんとも奇妙な5人の共同生活に欠かせなかった筈のレオ(日本人。本名は楠瀬太一郎)が寿命を終えてしまうのです。
レオのように場の空気が読めて協調性のあるキャラクターはこの先ずっと話の流れを調整する役だと思っていました。


死が近づいている事を察し、アリスのそばにいてアリスに何度も愛を告げるレオ。しかしレオはアリスに「死期が迫っている」ことを一切告げなかったのです。
寿命の事を言ってしまえばアリスがそのことで身を委ねてしまうから。レオはそんなことで勝利したくなかったのです。

アリスはこの時点ではレオを一番「好き」だったでしょう。しかしそれは身を委ねてもいい「愛してる」ではなく、困った時にすぐに頼れる人であり一番信頼できる「友達としての好き」でして、アリスはそこから進展させる気はあったのだけれどレオに「時間が欲しい」と要求した‥
レオにとってなんとも残酷な要求でした。

しかし世界で流れる「時間」と人それぞれが体感する「時間」は別です。腐れ縁の間柄もあれば「ビビビと来た」で結婚してしまう関係もある。
残念ながらアリスとレオはいくら時間をかけたとしても縁はなかったように思います(レオも最後にそう判断しました)。しかし縁というのは「友達」であろうと「恋人」であろうと価値は同じだと自分は思うのですが‥レオは消える時に何を思ったでしょう。


というか。
実はちょっと変だなと感じた部分があるんです。
アリスが目覚めてから一年が経ったということでお祝いのケーキが出たシーンがあります。2巻の途中で梓がアリスとして目覚め、静寂館をリニューアルし、3巻に至ってすぐだったはずです。自分は「あれ、もうそんなに時間が経っちゃったんだ」と驚いたんです。プリンセスは月刊だしリアルな時間は4ヶ月くらいと見ていい。漫画の時間の方が早く流れているのです。
だというのにアリスはレオ以外にも‥冒頭の台詞のように一年間「何もわからない」まま過ごしてしまったのでは?と思いまして‥
聡明な筈だった「梓」でも、いや聡明だったからこそなのか4人に対しかなり「距離」を置いて生活していたのかなと思いました(ディミトリたちもレオに遠慮していたのですが‥)。
オスたちはアリスに選んでもらえるよう努力をしていますが、アリスも一つずつ試練を乗り越えていかなければならないのでしょう。

ディミトリたちは寿命の短いレオの為にアリスをあてがったつもりだった。しかしレオは消えた。
レオはいろんな意味でタガであって堤防でした。それがなくなって物語はかなり混乱を見せるような気がします。結局巻末では玲二が一歩アリスに近づきました。
そしてレオがシンパシーを感じて接触した小説家の瞳子。余命僅かだった瞳子にレオは延命を施した。しかしそこには何か「取引」があったようですね。瞳子も梓と同じく聡明な女性かと思います。レオは「おぞましい要求」と言ってましたがそれはディミトリの言う「おぞましいこと」と同じなのか気になります。


あとは根源的な「愛とは何なのか」というテーマです。
動物は繁殖しますが人間は愛し合う。しかしそれは人間のくだらない妄想。結局は繁殖でしかなく、それを包み隠すために「愛」なんて言葉を使う。
ただそんな小難しい言葉を作ってしまった為に繁殖で思い悩むのが人間です。
カマキリは交/尾をしたあとメスがオスをバリバリ食べますが、思い悩むことはありません。
もしかするとカマキリぐらいの事が発生するんじゃないかと思っていますが、水城先生はこの漫画でどのような結論を出すのでしょうか。