- 失恋ショコラティエ 2 (フラワーコミックスアルファ)/水城 せとな
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恋は所詮オタクの所業。
オタクでなければ恋は実らない。
失恋ショコラティエ1・2巻
水城せとな・flowersフラワーコミックスα
(flowers増刊凜花掲載)
★あらすじ★
決して美人ではない。甘ったれた仕種を器用に使い、欲しい男はなんでも手に入れて来たサエコ。彼女に恋をしてしまった年下の小動(こゆるぎ)爽太。彼氏になれなくてもいい、そう思ってずっと近くにいて、一旦うまくいったと思ったら「彼氏とヨリを戻すの」-。爽太の失われた恋は、チョコのように溶けた。
5年後、フランスで修業してショコラティエになった爽太。情念で溶けたチョコを、綺麗に固めてサエコの口に入れてやりたい‥
ところが久しぶりに会ったサエコから出た言葉は「私の結婚式のデザートを作ってほしいの」‥!!
学生の頃からずっと爽太を見ていた年上の薫子、フランスで友人になったオリヴィエ等を巻き込み、ショコラのように折り重ねられる恋というより執念の物語。
☆☆☆
そういえば1巻の事は書いていなかったかなと思いました。「このマンガがすごい」12位、16日には待望の3巻が出る「黒薔薇アリス」と、今月は水城先生祭りですね。
「ダイヤモンド・ヘッド」で衝撃を受けた自分はすっかり先生のトリコではございますが、ダイヤモンド・ヘッドが最終回を迎えた頃の小学館の水城先生に対する扱いは今でも忘れていません。笑顔で「手の平返しやがって☆」と言ってあげますよ。
さて、増刊で少しずつ連載をしているこの作品ですが‥ヒロインのサエコが絵に書いたような「猛禽」です。最初はイラッときます。
(猛禽:虫も殺さないような顔をして男をむさぼり喰う女性のこと。言動は全部計算。「臨死!!江古田ちゃん」から発生した言葉。類義語・かくれ猛禽)
たいして美人ではないのに「モテオーラ」があり、計算を計算に見せない「スキだらけで天然ぽい」ところが男性にウケるのです。
しかし主人公の爽太は猛禽だとわかっていながらサエコを諦めない。サエコは爽太にその気がありません。サエコに何をされても「それでもいい」と言い切ってしまう爽太に「バカだ!!こいつはバカだ!!」とさらにイラッとしてしまうのです。
‥最近男性も少女マンガを読むようになり少女マンガの境目がなくなっていますが、そうやって出て来た作品からは「何故その女とくっつかなければならないんだ?」と首をひねってしまう作品があります。女性から見ると理解できない「女に嫌われる女」が正ヒロインに君臨している、しかしその漫画は人気だとなると‥作者がどうしてそういう物語を作るかを考えるわけです。
しかし男性がそんな女性にホレる理由は読んでいるとなんとなく解るんです。恋や愛は第三者が何を言っても貫き通せるもの。好きなんだからしょうがないのです。そのしょうがなさをこちらが眺めて楽しめたらいいんですよね。それにサエコには意外な長所がありますし。
で、冒頭に乱暴にも「恋愛はオタクの所業」と書きましたが‥
これを読んでいて登場人物が「みんなオタクだな」と思ったんです。
まず爽太の妄想(もちろんあはんな方向)が激しい。
「モテキ」の幸世も激しいですが、あちらの生々しさとは違って少女漫画らしいフランス仕立てな妄想をサエコさんにしてます。しかしその妄想が激しくなればなるほど爽太は「いい男になって悔しがらせてやる」と思い、仕事姿がサマになって本当にいい男になっていきます。人間は欲望と妄想がないと上にはあがれません。
それから一緒に働いている薫子。読んでいる側からすれば彼女の健気さで泣けてくるのですが、彼女も爽太の「サエコに対するひたむきさ」「サエコを引き寄せようとするパワー」につられています。彼女もサエコをひっぱたく妄想をしてたりしますがやりません(だって三十路だもの)。
しかし1番キツいのはもし爽太が薫子に目を向けて薫子を愛したらそんな顔はしないのが明白だってこと。今は全く薫子さんを女性として見ていない爽太ですが、だからこそ薫子さんは爽太に夢を見ることができます。
まあ、アレですよ。薫子さんは腐女子ポジションです。BでLな漫画の男性二人は読者を好きにならないし、(読者が感情移入できるような女キャラとかを)好きになったら幻滅しますよね。
で、オリヴィエが「真性オタク」なのもそこに関連してくる。2巻からは爽太の妹・まつりを好きになったようですが‥この眺め方がまた「育成ギャルゲー」っぽいこと。
サエコもオタクじゃないとはいいきれません。猛禽だって白鳥のように水の中で足をばたつかせているのです。猛禽には猛禽のマニュアルがあり、それを極めないといけないわけです。
世の中にオタクじゃない人はいないというレベルの話かもしれませんが、サエコがたまに見せる本気の表情はほの暗いです。
なんにせよ水城先生の漫画自体が本当は「オタクっぽい(いい意味で)」のです。使うエピソード、小道具等がみなオタク方向です。
しかし他のオタク要素テンコ盛りの漫画と違ってうんざりしないのは、その小道具やディテールを使う為の「理由」が突き詰められているからでしょう。
なぜパティシエでなくショコラティエなのかはチョコレートをテンパリングする場面でよく表現されていたのですが‥この作品のテーマ「情念と執念」そのものです。水城先生はショコラを見ながら考えに考え抜いてこの話を作った、といえます。何故なら今までの作品もテーマがしっかりしているから。この「安定感」は他の作家に求められません。
でも自分は「黒薔薇アリス」のほうが好きです。多分「ショコラティエ」は増刊の為に書いたはずなのに人気で継ぎ足し始められているような気がするし、小学館「FLOWERS」のレーベルを背負っている為になんかオサレ方向で肩に力の入った漫画という印象があります。
その点秋田で描いている「アリス」はラストも決まっているだろうし自由に描いてるだろうしまだ初期段階でも物語の「骨組み」が見えてくるからです。ラストでアッと言わされるのはこちらでしょうね。
ショコラティエでは爽太が最後の最後でオリヴィエに行き着いちゃいました、なんてオチでも驚かないからなあ。
あ、リクドーで働いてるタレ目の人いいよね(またかよ)。
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