ブログネタ:初対面の人にまず聞くことは? 参加中扉を開けた途端に、胸に顔が突っ込んで来た。
ひやりとした。この部屋から「出てくる」人間は決まっている。即座に頭を下げた。
「お前入部希望だな」
先輩は室内に促した。中学と同じ、ホコリと革製品の匂いがする。
「でかいな。身長いくつ」
ドアをくぐるオレを怪訝そうに見る。
「186です」
「腹立つ。体重はよ?」
「68」
「一日何回?」
「はぁ?」
お互いパイプの椅子に座った。
「名前」
先輩の指先に新入部員用名簿。ボールペンを動かすと、叫ばれた。
「あの人の弟かよ?来るって聞いてたけど似てねぇな」
オレの頭を掻き乱す。
「腹違いか何か?」
「違うと思います」
「疑えよ」
「親は似てるっていうし」
「どこが?下か?」
身を乗り出して制服のファスナーをしげしげと見る。
‥いわゆる「洗礼」ってヤツだろうか。
中等部はこんなことなかったし、下品な奴もいなかった。
だけど、先輩は先輩だ。背は普通だけど、体つきからして、「レギュラー」だと直感がはたらく。
黙っているのが得策だと思っていたら、ボールペンを奪われた。
「ポジションは」
「捕手」
「右利き?」
「はい」
「小池里奈好き?」
「は?」
「利き手でやんの?」
「何のことでしょうか」
「男なんだから当たり前だろ」
「初対面の人間にそんなことを話す理由はありません」
「かわいいなあ。一日何回だよ。スタミナは続くか?」
オレは立ち上がり、ミットをはめるはずの拳でテーブルをぶっ叩いた。
「おー‥」
垂れ目が泳いでいた。
「三回だよ!
気に入らないなら最初から言えよ!もっとも、オレは主将に誘われてるから辞めないけど!」
そしたら、いきなり笑われた。そりゃあもう、腹筋を使いすぎて息を切らす程だった。
「三回って‥こりゃあいいや。ウチは捕手不足だから安心だな」
よろしく、と手を握られる。すごいマメだ。
「試したんですね」
「オレは外部入学だからな。中学の奴が懐かない」
「ひねくれた性格だからじゃないんですか?」
先輩が鼻をこすった。
「でも、遠慮がなくなったろ」
―初対面で全てが決まるというけれど、
結局は人柄が肝心なのだと思った春の日だった。
