次の日の朝、潤の家にゲストルームの鍵を渡しに行った。
玄関を開けてくれたのは今日子さんで。
「おはよー、翔くん。・・・こちらが、もしかして、噂の相葉くん?!」
俺の後ろにいた相葉くんがペコリと頭を下げた。
「まぁー!キレイねぇ!これは、潤が振られるのも仕方ないわねー!」
「ちょ!今日子さん!!ヘンなこと言わないでよ!!」
「ふふふ。ウソよ、ウソ。どうぞ上がって行って。今、潤、シャワー浴びてるのよ。これから有岡くんとデートなんですってー。」
「いや、鍵、返しに来ただけだし。」
「そんなこと言わないで、あがっていってよ。潤と別れたら、もうあまり家にも来なくなっちゃうでしょ。」
「まぁ、そりゃ、前のようには・・・。」
「でしょ!だから!ね!」
俺は相葉くんを振り返って。
「じゃ、少しだけ・・・。」
リビングのソファに座るけれど、相葉くんが所在なさげだ。
「・・・なんだか緊張してる?」
「はい・・・なんでだか。」
「別に大丈夫だよ。潤のお母さん、あ、お母さんとかおばさんとか呼ぶと殺されるからな。」
俺がそう言ったところで、今日子さんとお手伝いさんがお茶とお菓子を持ってきてくれた。
「そうよー。今日子って呼んで。よろしくね、相葉くん。」
「あ、相葉雅紀です!よろしくお願いします!!」
相葉くんがわざわざソファから立ち上がってぺこりと頭を下げる。
「あれ、来てたの?」
潤が、上半身裸で髪を拭きながら出てきた。
相葉くんが、サッと顔を赤らめる。
「お前、なんか着ろよ。」
「別に俺の裸なんて、珍しくもないだろ。」
「そうだけど・・・って、そうじゃなくて。相葉くんが恥ずかしがってるだろ。」
「ふーん・・・その分じゃ、昨夜はキス止まりだな。」
相葉くんが、今度は火を噴きそうなほど真っ赤になった。
「ちょ!!潤!!おまっ!!何てこというんだよ!!」
「あら、当たりなの?せっかくのお泊りだったのに?」
「今日子さんまで!!!」
まったく、この親子は!!
「そういう潤は、有岡くんともうエッ チしたの?」
「ママ!!」
潤も慌てる。
「なーんだ。潤もまだなんじゃない。」
「うるせーーーー!!」
「ふふふ。潤も、翔くんも。可愛い後輩の恋人にはなかなかそこまでいけないのね。
いいなー。若いなー。楽しいわねー!!」
もうダメだ。
俺は鞄をつかんで立ち上がった。
「相葉くん!帰ろう!!」
「あ、はい!」
「えー。もう帰っちゃうのー!!」
「鍵返したし!じゃ!!」
「んー。じゃ、また来てね!相葉くん!別に潤がいなくたって、翔くんと遊びに来てくれて構わないのよ。」
「ぜってーー、ヤダ!」
俺はそう言い放って、長い廊下をつたって玄関に出た。
「ごめんな、相葉くん。うちの母親、あんなんで。」
「あ、いえ。そんな全然!」
「まぁ、また、翔と遊びに来てやってよ。」
「・・・はぁ。はい・・・。」
「じゃな。また学校で。」
「あぁ。じゃ、な。」
エレベーターに乗ると、相葉くんが大きく息を吐いた。
つづく