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日頃の出来事と想いを語る

二つの美しいもの…知覧

                     

初めて薩摩の小京都・知覧を訪れた。この町は、私に二つの美しいものを、みせてくれた。

一つは、きれいに整えられた生垣と、その石垣で囲まれた美しい武家屋敷群である。母ヶ岳の優雅な姿を取り入れて、麓一帯を庭園化した見事な町並みである。この屋敷群は、昭和五十六年に、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選ばれたという。また七つの庭園が国の「名勝」にも指定されている。七庭園の内、森氏庭園は、築山山水式庭園であり、他の六園は枯山水式庭園である。

ここの路地を歩いていると、すぐそこの屋敷から、曲がり角から、今にも「お侍さん」が現れて来そうな気になった。きれいに手入れされている庭に向かって縁側に腰を降ろすと、江戸時代の主(あるじ)気分になった。余は、誠に満足であった。

二つ目の美しいものは、特攻平和会館の中にあった。知覧には、一九四二年に大刀洗陸軍飛行学校知覧分教所が開校され、一九四五年(終戦の年)沖縄戦の特攻基地となり、多くの若者が、ここから飛び立って行った。その飛行場跡に、「二度とあの悲惨な出来事を繰り返してはいけない」という願いを込めて立てられたのが特攻平和会館である。館内には、零式戦闘機や三式戦闘機「飛燕」、特攻隊員として若い命を終えた一〇三五名の遺影、遺書、遺品などが展示され、敷地内の特攻平和観音堂には、一〇二六柱の特攻隊員の霊が、祀られていた。

その遺書や遺品の前に立つと、その一つ一つの思いが、読む人の心を捉え、涙無しには見ることが出来ないものばかりである。手紙や遺品は、涙で霞んで十分に見ることが出来なかったけれど、私には、若い先輩たちの心が十二分に観えた。多くの美しい心の日本人が、そこに眠っている。

ここに展示されている『美しい心を持った若い先輩たち』の御かげで、今日の私たちがあることを、決して忘れてはならないのだ、と痛感させられた。今の世の中、経済的な豊かさと反比例して、昔からの美しい心の持主の日本人や、思いやりのある日本人が、少なくなっているように思えるのは私だけであろうか?

昨今「ほたる」「俺は君のためにこそ死に行く」など、話題の映画が上映されている。是非、舞台となった知覧を訪れ、「二つの美しいもの」を肌で感じて頂ければ、と思う。特に若いうちに。

日本人なら是非一度は、訪れておかなければならない鎮魂の町である