心の余裕 | 神経芽腫の娘のこと

神経芽腫の娘のこと

2017年12月3歳9ヶ月、小児がん神経芽腫と診断され、再発を繰り返しながらも懸命に生きた証、治療や娘との大切な時間をどう過ごしたか、それからの事、子どもを亡くした母親の気持ちを綴っています。2023年2月14日永眠。アメンバー申請の際は自己紹介メッセージをお願いします


娘が院内学級へ登校している時、絵の具を使う授業がありました。


授業が終わり、お迎えに行くと、担任の先生が申し訳なさそうな表情で、


『お母さん、すみません…


今日の絵の具の授業で服が絵の具で汚れてしまって…


私がちゃんと見ていなかったから…』


と、謝られました。


見ると、その日は真っ白のお気に入りの服で、


本人もやってしまった…という顔をしていました。


しかし、私はそれを見て嬉しい気持ちになりました。


夢中になるぐらい楽しかったんだ。頑張ったんだと。


娘に、


『服なんて洗濯したら綺麗になるから心配いらないよ!


これは絵の具、頑張った証だね!


どんな事したの?楽しかった?』


と、言いました。


娘も安心した様子で、こんな事したよ。と、色々教えてくれました。


それを聞いていた担任の先生も、


『そう言ってもらえて救われます…


本当、楽しそうに夢中になっていました。


洗濯したら取れるかなぁ。すみません。』


と、言うので、


『先生、謝らないでください。


洗濯でとれなくても、これも一つの思い出なんで全然大丈夫ですよ!』


と、そんなエピソードがありました。



そして、数日前、水族館へ行った時のこと。


魚やヒトデを触れるコーナーがあり、


そこで、4歳ぐらいの男児が、魚を触ろうと必死に追いかけていました。


見ると、服もお腹のところや、脇の方までびしょ濡れ。


服大丈夫かなぁ。と心配しつつも、


その子が必死に魚を触ろうとしている姿に、


いつの間にか見ず知らずの子どもなのに、


頑張れーと見守っていました。


お母さんらしき人は見当たらず。


10分ぐらいするとようやく触れたのか、


その子は母親の元に戻って行きました。


すると、その子のお母さんは、


『何やってるの!!こんなに服濡らして!!


やめてよね!バカじゃないの!?』


と、怒鳴り出した。


そうなるよね…


お母さんはそばに居てなかったし、見てなかったし、その子がどんなに夢中だったかわからない。


それを一部始終一緒に見ていた息子に、


『あんなに怒らなくてもねぇ。


必死で頑張ってたんだから。


ママなら、頑張ったんだね!魚触れて良かったね!


って、まずは笑ってあげるけどなぁ。


子どもって無邪気で元気がいいのに。


服なんて乾くのになぁ。』


と、息子に言うと、


『ママはさすが!!子ども心をちゃんとわかってる!


僕もそう思う!』


と、言われ嬉しくなりました。


『でも、ママの考えは特殊かもしれない。


普通は怒るお母さんが多いと思う。』


と、息子に言われました。


確かに。と納得。


余裕がなかったりすると、どうしても


“服を濡らしてどうするの”


と、なると思います。


娘の事がなかったら、私もこの母親のように怒鳴っていたかもしれません。


良いのかわからないけど、


こんな風に心に余裕が持てるのは娘のおかげ。


少し、視点を変えて考えられるようになりました。


この水族館の出来事で、娘の絵の具のエピソードを思い出して、


なんだか寂しさと心が温かくなるような気持ちになったのでした。