小説『AKB48バトル選抜β』 -2ページ目

小説『AKB48バトル選抜β』

『AKB48バトル選抜β』という小説を書かせていただいています。実は同じような小説を書かれている方を拝見し、インスピレーションを刺激されて、この小説が生まれました。「β」を冠しているのは、その方へのリスペクトを込めさせていただきました。

小説『AKB48バトル選抜β』-is.jpg


名前:秋元才加

能力名:漆黒の狂戦士
読み方:ブラックバーサーカー

内容:ゴリラを召喚し、使役する。

一見ふざけた能力のように思えるが、今回唯一の、生物を操る能力。

欠点を挙げるならば、操る対象がゴリラであることだ。

それゆえ知能の低さがネックとなり、高度な指示の元に行動させることはできない。

しかしゴリラが、そして何よりも秋元才加自身がそれを補っても余るほどの身体能力を秘めていることは、何人たりとも無視することはできない。


「これ…本当にバーチャル空間なんだよね?」

菊地あやかは、森の中、生い茂る木々がちょうどぽっかりと空いた空間に、立っていた。

カサカサッ
試しに自分の近くの茂みに触れてみる。
どう考えても、本物の葉の感触だ。


「あ、そうだそうだ、能力能力っと。」

最先端の技術に驚きながら、菊地は自分の左手首に巻かれた、見知らぬ機械に触れる。


ブワン
文字盤の右、1番上のボタンを押すと、文字盤の上に半透明の板のようなものが浮かび上がった。

「すごーい。未来みたーい。」

見たところ、そこに映し出されたのは地図のようだった。
赤く点滅している箇所がどうやら自分の現在地のようだ。


「ん?あぁ、
エムエーピーって、マップのことか!

えっと、私がいるのがこの森で~
こっちが山で、こっちが海。
ひぇー、草原や砂漠まであるのかー。
ん、こっちは町かー。
ご飯食べる所とかあるかなー。

あっ」


菊地は能力を確かめようとしていたことを思い出した。
地図の確認はそのあとでもいいはずだ。


ブワン
次に文字盤の右の、3つある内の真ん中のボタンを押した。

すると、浮かび上がった画面に表示されたのは、文字だった。


『残り48名』
『アンダーガールズまで、残り27人撃破してください。』
『選抜まで、残り36人撃破してください。』

岩佐美咲 秋元才加 石田晴香
多田愛佳 板野友美 河西智美



そこには3つの文と、メンバー全員の名前がチーム別3行で書いてあった。


「うーん、能力は…
ここでもないのか…。」


真ん中のボタンにはSTATEという、「状態」を示す単語が添えられていたのだが、菊地にその意味はわからない。

「じゃあ…これ?」


ブワン
最後に文字盤の右の、1番下のボタンを押した。
そこはABILITY、「能力」を表示するボタンだ。

浮かんだ文章を読み、菊地は頬にえくぼを作る。


「ふふふ、確かにこれは私にぴったりな能力かも。」


菊地は試しがてら能力を発動させ、使用してみる。

自分に近い木が音を立てて倒れていく。


「これなら…もしかして私がセンターに…?」


菊地の頬に、えくぼが先程より一層深く、刻まれた。


シュッシュッ
同じく森の、西端に着いた者、片山陽加は木々の間を進んでいた。


「こりゃいいわ。」

片山は通常では考えられないほどの早さで、移動していた。
能力に起因するのだろう。


「悪いーけど、わたーしは、純情主義ー」


片山は自身の所属するユニットの曲を軽快に口ずさむ。

そんな彼女は、全メンバーで一番最初に他のメンバーと遭遇することになる。


「なーんとなく筋肉系か、これ系かと思ったけど、こっちだったか…。」

複雑な顔をし、才加は呟く。

才加の能力は【漆黒の狂戦士】。

秋元才加と言えば、真っ先に頭に思い浮かぶ、あの動物を召喚し、操る能力だ。


ウホッ

ウホホッ

黒い動物たちが才加を見つめ、まるで指示を待っているかのように取り囲む。

「ハァー」

才加は溜息をついた。
すると、周りの動物たちがあたふたとし始める。


「あぁごめんごめん、
いいよ、わかった。
決心ついた。」

才加は猛る。
叫ぶ。
高らかに。
宣言するかのように。


「よっしゃあ!!
私はこの能力でセンターを獲る!

ボス猿ナメんな、こら!!」


本当はボス猿ではなくボスゴリラなのだが、この際細かい指摘はやめておこう。

野暮な指摘は躊躇されるくらい、才加の目はギラギラと輝いていた。


一方、南端の砂浜に近い、海の浅瀬。
そこには松原夏海がいた。


否、泳いでいた。

能力を試すべく。

「へー、説明にあった通りだ。
これって…ある意味最強?」


松原も微笑む。
経歴を読み取り、この力が付いたと言うのならば、今までの自分が間違っていなかったと言われているようで嬉しかった。

そしてその能力は上位攻略の可能性を秘めていた。

AKB48きってのペテン師は、今日もペテンを考える。

選抜常連組を、引きずり落とすべく。


また一方、市街地のとある民家の中。

部屋のタンスにあったジャージに着替え、ドライヤーを使って髪を乾かす北原がそこにいた。

「なんで田んぼのど真ん中スタートなんだよ…。」


北原は田んぼに転送された。
そして見晴らしがよすぎる田んぼにいては危険だと判断し、移動し始めた。

田んぼの四方を囲むは、用水路。
不運な北原は、その用水路の縁に足を引っ掛けてしまい、大きな水しぶきを発生させる羽目になったのだった。


「皆なーにしてるんだろ…。
髪乾かしてるのは私だけなんだろうな…。」


慣れているかのように、ネガティブな表情を見せる北原。

「いけないいけない!
今回はポジティブに頑張るって決めたんだから!」


北原は気を引き締めた。

そして、髪を乾かす作業に集中し始めた。


砂漠地帯で能力を確かめ終わったとあるメンバーは、ぼやいていた。


「経歴を読み取って能力が決まる…。
それで、私の能力はこれ…。

何だよそれ…。
嫌味かよー!!」


「ううん、
でもこれ、めちゃくちゃ使い勝手いい…と思うし。」


砂漠にいるこの者は、試しに能力を使用しようとした。
しかし、この環境で使用しても、効果はわかりづらい。


「よーし、まずは誰か探すとしますかー。」

かくして、このメンバーは実験台を探すべく、砂漠を歩き始めた。

砂漠の砂に足をとられ、不機嫌そうに一言を呟きながら。


「…チユウ。」


「これから君たちには、目の前の卵型の機械に入ってもらい、この機械を装着してもらう。」

秋元は両手に収まるくらいの大きさの機械を片手に持ち、ひらひらと揺らした。

つばが無いサンバイザーとでも言えばいいのだろうか、そんな形だ。

「これが1人1人の脳波に干渉し、バーチャル空間に連れて行ってくれる、というわけだ。」


熱心にメモをとる峯岸、佐藤亜美菜。

真剣な顔付きで聞く才加、柏木由紀。

話を聞いているのか、いないのか、ぼーっとしている高城、仲川遥香。

じゃれ合う大島優子と渡辺麻友。

過ごし方は各人、様々だ。


「そしてそのバーチャル空間の中で何で、戦うのか。
皆、そこが気になるだろう?」

秋元の言葉に誰もが頷く。


「君たちには必ず1つ、特殊能力が与えられる。
その能力を活用し、競い合ってほしい。

一言に能力と言っても、身体能力を上昇させるもの、魔法のように火や水を操るもの、そのどちらにも属さないもの、様々な種類を用意した。」

「そして最も重要なこと、誰がどのような能力を手に入れられるのか。
それは、先程見せたこの機械が決めてくれる。」



秋元は手に持つ機械を再びひらひらと揺らす。

「これは装着することで各人の経歴を読み取り、その結果に応じた能力を使えるようにしてくれる。

まぁ、どんな能力が手に入ったのかは、君たちに自動で装着される腕時計でわかるようになっている。
バーチャル空間に入ったら真っ先にそれを確認するように。」

「ちなみにその腕時計には地図やその他情報を表示する機能もあるから、それも各自確認しながら励むように。」


メンバーは各々一様に、秋元の言葉に頷く。

「そして、競い合う、と言ったが、具体的にはどうなったら勝ちで、どうなったら負けなのか。」

「それは至って簡単。
相手を再起不能にすれば勝ちで、されれば負けだ。」


再起不能、という物騒な単語に、一部のメンバーは怪訝な顔をする。

「なーに、そこまで過酷なイメージは持たなくていい。
君たちの体力値を元に、君たちのバーチャル空間内での体力値が設定される。
それがゼロになれば、ゲームオーバー、ってことだ。」


「ふむふむ、HPがゼロになればゲームオーバー、と。」

峯岸はそう呟きながら、メモに文を足した。


「説明はこれで以上だ。
それでは最後に、君たちに激励の言葉を。」


「まず、まだ若く、なかなかチャンスが与えられない者。

君たちは、選抜常連組に対抗意識を燃やしているだろう。
はたまた、自分の方が力が上だと思っているかも知れない。

その闘志。
存分に発揮する機会が、ようやく来たんじゃないか?」


「次に、古くからAKB48に属しているにも関わらず、未だ十分なチャンスが回ってきていない者。

君たちは、挫折という言葉が頭をよぎったこともあるだろう。
もしくは我々運営側に対し、恨みすら覚えているかも知れない。

その雪辱。
晴らす機会が、ようやく来たんじゃないか?」


「そして、選抜に入ってはいるものの、上位陣があまりに強力で、なかなか中央に座せない者。

君たちは、まだまだAKB48の中心を任せるには力が足りないと、我々に考えられているかも知れない。

その認識。
覆して、我々運営側の目を覚まさせる機会が、ようやく来たんじゃないか?」


「最後に、選抜上位陣。

君たちは、酸いも甘いも、その全てを知っているはずだ。
周りは死に物狂いで君たちのポジションを狙ってくるぞ。

易々と、明け渡していいのか?

そんな訳無いよな。

自分たちの背負うものの大きさ、存分に思い知らせてやれ。」


十分に間を置き、メンバー全員を見渡した後、秋元は最後の言葉を発した。


「以上。」


秋元の檄は、その場にいるメンバー全員の心を抉った。

そして、そこに火を灯した。
誰もが決意に満ちた顔をしていた。


「それでは、5分のインターバルののち、開始する。
開始時間までに、自分の名前が書かれた装置に入るように。」