そして汐梨、耀司の前に右手を。中指と薬指の先でトントンと。
耀司、思わず、ゆっくりと目を閉じて、口を噤んで。…そして…。
「た~~くぅ~~~。」
汐梨、
「出したんさい。持ってるんでしょ、その名刺~~。」
「持ってますけど~~。」
口をグンニャリとさせながら。そして、顔を右に左に。そして鼻の孔を大きく。
「はぁ~~ぁあ~~。はいはい。分かりました~~。」
そして、バッグから、2枚の名刺を。テーブルに。
すかさず汐梨、
「どれどれ~~。」
そして…。名刺を見て、
「うん…???…眞鍋…。これ…、何て読むの…???日に光。歴史の史。」
耀司、
「あきひとだって。」
「あきひと。…で、こっちは~~。…って、これ…、女…???…誓。」
「チカって読む。奥様の方。」
「チカ。へぇ~~~。これでチカ。漢字からすると、男に見えるけど…。」
「正真正銘の、女性です。奇麗な人だったよ。」
汐梨、名刺を見ながら、
「ふ~~ん。…でぇ~~~。苗字が、眞鍋。」
いきなり汐梨、
「うん…???…眞鍋って…。最近…。」
そこまで言って、
「音楽教室でも眞鍋…。」
そして、
「凄いね。同じ苗字~~。」
少し間を置いて。
「…で…???…何がどうして、この人たちと一緒に食事をするって…???」
耀司、顔を傾げて、右こめかみを右手でカキカキ。
そして、左手で鼻を摘まんで。そして今度は右手人差し指で鼻の下を撫でて。
今度は左腕をテーブルに。そのまま手を挙げて、今度は、左手で頭をカキカキ。
汐梨、
「ねぇ。」
耀司、今度は、両手で顔を目の下から撫でるように。
再び汐梨、
「ねぇ。」
耀司、今度は鼻で息を。
「ふん。」
そしてまた、左手で鼻先を摘まんで。
今度は左手親指を鼻先を弾いて。また鼻で息を。
「ふん。」
汐梨、ムスッとした顔で、
「めんどくさいなぁ。」
耀司、そんな汐梨に、
「めんどくさくって、すみませんでした~~。」
汐梨、テーブルに両腕を。
「兄さん…???」
耀司、
「はいはいはいはい。」
そして、
「あのですね。」
「はい。」
「つまりは。……。…バッタリ、音楽教室の眞鍋さんに会っちゃったの。」
その声に汐梨、
「へぇ~~ぇえ~~。そうなんだ~~~。」
ゆっくりと瞬き、そして、口を窄ませて、
「ふ~~ん~~。」
いきなり、
「えっ…???…うそっ!!!」
耀司を見て。
耀司、口を尖らせて、テーブルの見つめて、
「いや。うそって。うそで、こんな事言っても。…仕方が。」
「いやいやいやいや。」
汐梨、いきなり目をパチクリとさせて、
「へっ…???…兄さん、音楽教室の、あの、眞鍋さん…???」
耀司、テーブルを見つめながらに、
「そうですよ。あの、眞鍋さんです。」
「うそ。うそうそうそうそ。」
「いや。だから、うそじゃないって~~。」
「いやいやいやいやいや。」
「何よ~~。忙しい人だね~~。」
汐梨、
「いや。だって~~。そんな…。偶然にぃ~~。眞鍋さんとなんて~~。」
口を尖らせて耀司、
「いや。そんな…、偶然に~~って、言われても、偶然に会ったんだから~~。それを否定されても俺…。困るんだけど~~。」
そして、名刺に指差して、
「現に…???…こうして、名刺も持ってるし。」
汐梨、耀司を見つめて、
「えっ…???…って言うか、これって…。この…、ご夫婦って、眞鍋さんの、お兄さん…???…弟さん…???…か、もしかして、お姉さんか、妹さん…???」
耀司、キッパリと。
「弟さん。しっかりと眞鍋さんを姉さんって、読んでたから。」
汐梨、目を見開いて、口を大きく、
「そうなんだ~~~。」
いきなり玄関から、
「ただいま~~~。」
芙美花の声。
リビングからも汐梨、
「おかえり~~。」
リビングに芙美花、
「ただいま~~。ふぅ~~~。かかかかか。しんどい。」
そこまで言って、
「…けど。その分、楽しいっちゃあ~~。楽しいんだけどね~~。」
耀司、芙美花に、
「おかえり。」
芙美花、椅子にカバンを置いて、
「まずは一杯。」
キッチンで冷蔵庫から麦茶のポットを。グラスに注いで口に。ゴクゴクと。そして、
「お~~。生き返る~~。」
汐梨、芙美花に、
「かかかかか。大変みたいだね。」
その声に芙美花、両眉を上下に。
「大変だよ、大変。兼高と屋舗の奴~~。」
耀司も、
「かかかかか。またそれ。顧問と部長の話し~~。」
汐梨、耀司に、
「えっ…???…何、その、顧問と部長の話しって。」
いきなり芙美花、叔母に駆け寄って、隣の椅子に座って、
「聞いてくれるおばちゃん。」
汐梨、
「うん…???何々…。うんうんうん。」
「ほら。この前の話、今度の定期演奏会のサプライズ的。」
汐梨、その話に、
「あ~~。うんうんうん。ラプソディー・イン・ブルー。抽選がどうとか。私、話の途中でママ友からの電話で家に帰っちゃったから、最後まで聞けなかったけど。」
芙美花、
「うんうんうん。…でね。つまりは~~。サプライズ的な~~。てか…。ある意味、デモンストレーション。」

ママでいい…。 vol,038. 「出したんさい。持ってるんでしょ、その名刺~~。」
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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。
