それから2週間が過ぎた。
エレガンザ化粧品。マーケティング事業部。
通常業務以外に、重大なプロジェクトと言う意味でも、海外用のコンペが、
ある意味、メンバーたちにプレッシャーを与えていた事には間違いなかった。
つまりは…、コンペ用の新たなコンセプトが中々決まらないでいた。
ただ、そんな中でも、以前のお重の件で、佐津香、そして菜帆子、愛結美、
そして順平と小埜瀬の、この5人だけは何かしら、
和気藹々と接し会うようになっては来ていた。
会議の中でも、この5人以外にも、メンバーは数名いたが、
特に、菜帆子、愛結美、そして順平と小埜瀬が、意見を盛んに積み上げてはいた。
但し、そんな中にも、それぞれの意見に、
どうしても妥協出来ないと言い張るのが小埜瀬だった。言っている事はとにかく正論。
但し、それをどういう風に形にするのか、そこで常に衝突してしまうのだった。
そして…。会議でもいつの間にか、中心になっているのが菜帆子、そして愛結美、
順平と小埜瀬の4人。確かに、進行役は理江子ではあったが、
そこまで深くは踏み込めないでいた。
そして、基美と恵梨、圭衣子の3人も、プロジェクトチームの中には入ってはいたが、
確かに意見はするのだが、常に平行線を辿っていた。
吉竹は常に冷静に見守るのみ。佐津香も同様に…。
小野瀬、
「だから…。」
その声に菜帆子、
「じゃあ~、言っておきますけど…。因みにこの内容で行くとしますよ。…でも、それだって…。」
順平、
「でもさ…。それをどう持って行くかで、決まるんじゃないの…???…そこまで突き詰めて…。」
愛結美、
「あのね、順平。確かに、正論だって言うのは分かるの。でもね。女性としては…。」
圭衣子、そんな遣り取りを聞きながら、苦笑いをして、
「…また始まったよ。こりゃ拉致が開かないか…???」
けれども、吉竹は、ニコリとしながらも、
「まっ。やらせておけや。」
隅の方で…。
恵梨、吉竹に、
「意外と…、課長って、頑固ですよね。…って、もしかして…、性格的に、短気…???」
吉竹、そんな恵梨の声に、
「へぇ~~~。」
そして、恵梨を見て、
「おま…、そんな風に感じるのか…???…なんと。」
恵梨、目をパチクリと、
「うん。いや…。この間、トイレにって…。その時、男子トイレから出て来た課長、思わず、クソッ。クソッ。クソッ。…ったく~~。…って~~~。私、思わずビックリして、うそ。課長って、そういうとこ、あるんだって思って。」
吉竹、
「へぇ~~~。俺といるときは、そういうとこ、全然見せねぇけどな。」
凡そ2時間。他の業務にも支障を来すとして、
またしても持ち越し議案として見送られた。
そして…。この2週間でもうひとつ、コンペが呼び起こしてくれたのであろうか、
ある新しい景色も生まれた。それが…、理江子からの招待である。
コンペのプロジェクトチームに、少しでも寛ぎを…。
と、言う事で、とある店への招待である。
「ラスカ~LUSCA~」と、言うダイニングバー。これが…、何とも驚くほどに安い。
理江子、
「私の父の親友のお店なんです。リチャード・ブルマン・天樹(あまぎ)さんと言って日本に来てかれこれもぅ~~20年。お店を持って10年。物凄い安いの。」
理江子が小さい時分から可愛がってくれた人物のひとりである。
しかし…、残念ながら、理江子は当日、舞桜との行動で参加出来ない。
それに吉竹に基美と恵梨、圭衣子も、都合悪く参加出来なかったが、
佐津香、そして菜帆子に愛結美、そして順平と小埜瀬、スマホの位置情報でその店に。
そして、テーブルに落ち着いて…。
佐津香、
「へぇ~~。こういうとこ、あったんだ~~。」
菜帆子も周りを見渡して、
「うんうんうん。知らなかった~~。」
愛結美、
「何ともモダン。うんうんうん。いい感じ。」
順平、
「なんか、凄いっすね~~。」
「いやいや。」
そして小埜瀬、思わずにやけて、顔を傾げて。
「中々、こういうとこには…。余り…。」
愛結美、そんな小埜瀬を見て、
「もしかして…、課長…、縁がない。とか…。」
小埜瀬、恥ずかしそうに、
「あぁ。えぇ。」
「…って、普段、課長って、どういうお店…???」
菜帆子。
「あん。」
いきなり顔をグシャリとさせての小埜瀬、
「そんな…。菜帆子さん、虐めないでくださいよ~~。男が行く店…。大概、居酒屋ですよ~~。分かってる癖に~~。さすがに…。」
佐津香、
「門倉でしょう~~。」
小埜瀬、佐津香に、頭を下げて、
「はい。しっかりと。お世話になってます。」
佐津香も菜帆子も愛結美もニコニコと。
「もぅ~~。最初っから、部長に連れて行かれて~~、お世話になってます~~。門倉の峻さん。中々の人物で…。」
気分よく小埜瀬。
好きになれない。 vol,135. それから2週間が過ぎた。
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