「…でも、この際、イチかバチかで…。電話したんだと。」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

THMIS mama “お洒落の小部屋”

好きになれない。  vol.201

ドキドキ そして武一。
「…でも、この際、イチかバチかで…。電話したんだと。…そうしたら、なんと。」
真面目な顔で武一。

峻、ヒョットコの様な口で、
「おぅ…???」

奈菜は笑顔で…。
気まずそうな顔での小埜瀬。

武一、峻と奈菜を見て、
「何と。ビンゴ~~~。」

峻、
「ウッシャ~~。」

奈菜、
「サッちゃん、や~り~~。」

武一、
「そんな訳で~~。その、不動産屋の女性から、住所を聞いて~~。小埜瀬さんの自宅に~~。…まっ。鍵はあちらこちら探して何とか。…けど…。それで終わりでは…。」

峻、口だけ前に、
「へっ…???…まだ何かあんの…???」

「まぁ~~ねぇ~~。何と、タクシー運転手さんも、手伝ってくれたんだと。佐津香さんに替わってねぇ~~。」

奈菜、ニッコリとして、そして両頬に両手を当てて、
「あら、優しい~~。」

武一、ニコリと、
「けけけ。だろ…。私が、小埜瀬さんの左側に回って小埜瀬さんの左腕を首に回したときに、いきなりその腕を解いて、私と替わってくれたのって。凄いと思わないって、佐津香さん。」

奈菜ニコニコ顔で、
「うんうんうん。」

小埜瀬、その声にまた、顔をグシャリと。そして顔を凹ませて…。

けれども、そんな小埜瀬を見ながらも峻は、武一に顔を向けながら、
「へぇ~~。何とも律儀なタクシー運転手だな~~。」

武一、両眉を上下に、そしてまたビールを一口。飲んだ後に、
「そして~~。これがなんとも…、ありがたいじゃないの~~。」

峻、武一のその声に、目をパチクリと顔を前に、
「な、なに…。ありがたい…、じゃないの~~お…???」

奈菜も、
「何よそれ~~。武一~~。まだなんか…???」

刺身を一口。そして食べて、
「あのね。タクシーの運転手も手伝ってくれて、小埜瀬さんを玄関のフロアに落ち着いた。…で、当然、運転手もタクシーに戻るわな。」

峻も奈菜も頷いて、
「うんうんうん。」

「…けど…。その後に…、玄関に…。」

峻も奈菜も、
「玄関に…???」

小埜瀬、吉竹を見て、
「部長……???」

「佐津香さん。電話で俺に。まさかと思った~~。そして…。物凄い感心した~~って。世の中、こういう人、いるんだね~~って。ねぇ~~。」

峻、話を聞きながら、
「おぃおぃおぃおぃ。ちょっと、武一~~。いいから、勿体付けずに言えよ~~。た~~くよ~~。」

下唇を上唇に僅かに被せるように小埜瀬、申し訳なさ程度に吉竹を見ている。
峻も奈菜も腕組みしながら…。

店員の鈴峰神楽(すずみねかぐら)が、
「店長~~。焼き鳥オーダー入りました~~。」

その声に峻、
「あいよ~~。」
神楽から伝票を受け取って、
「サンキュウ、はいな。」

奈菜、武一に、
「…で…???…武一~~。」

武一、口をアヒルのようにして、
「ふん。…でね。その、物凄い感心した~~って。世の中、こういう人、いるんだね~~って、言うのが~~。」

峻、
「おぅおぅおぅ~~。」

武一、小埜瀬を見ながら意地悪そうな顔で…。

いきなりそんな顔の吉竹を見て小埜瀬、困ったような顔をして、
「えっ…???…えぇぇぇぇぇ…???」
そして僅かに体を右に傾げる。

そんな格好を見ての武一、意地悪そうな顔から今度は、いきなり俯き加減に顔を左右に振り、
「いん~~や。かかかかか。そんなに困ったような顔、しな~~い。小埜瀬さん。」
そして口を真一文字にニッコリと。

峻、焼き鳥を並べながら、
「だからよぉ~~。そんな。勿体ぶんなって~~。このぉ~~。」

武一、両肘をカウンターに着け、両手を上下にしてその上に顎を乗せて、
「不動産屋さ~~ん。その20代の女性ね。玄関に入ってきた。」

瞬間、奈菜、目を真ん丸にして、
「え――――――っ!!!」

峻も、口を尖らせて、
「うそ―――――――っ!!!」

武一、そのままの状態で、
「ほんと。」

峻、
「いやいやいやいや。マジで。不動産屋の女性が~~???…またなんで…???…そんな…、夜遅くからだろ。幾ら仕事のためっつったって~~。」

奈菜も峻の声に頷いて、
「うんうんうん。」

小埜瀬は黙って聞いている。

武一、メニューを見て、
「かっらあっげ行っこうっかな~~。」
そして、小埜瀬に、
「いいっすか~~~。」

その声に小埜瀬、いきなり、
「あぁ~~。あ、はい。どうぞ、どうぞ。」

ジョッキをそのまま握ってビールを一口。
そしてジョッキの汗の付いた右手をおしぼりで拭いながら、
「何とも健気と言うか…心温まる。」
そして一拍置いて武一。いきなり小埜瀬を見て、ムスッとしたような顔をしたら、今度はニッコリと。
「その子。…いや、その女性。佐津香さんたちに丁寧にお辞儀をして、こぅ言ったんだと。小埜瀬さん。この人、私の最初のお客様なんです。」








好きになれない。   vol,103.  「…でも、この際、イチかバチかで…。電話したんだと。」

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 


《PR》
庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。

※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。

アメーバ