杏樹の話に美琴、4人の反応を気にしながら…。
そして、その4人は…。それぞれに杏樹の話に頷いている。
葉子、
「帝王学…。それで…かぁ。」
海江田、
「投資…ねぇ…。」
紫、
「なんだか…、バリッバリのキャリア…。」
都沢、
「とにかく…、凄ぇや。」
杏樹、続ける。
「ホテル業界から姿を消しての数年。細々と、生活していたようです。身寄りも誰もおらず、ただ…。」
葉子、
「身寄りも誰もおらず…って、専務…、この方…。家族構成は…、確かに、誰もいらっしゃらないようです…けど…。」
その声に杏樹、
「はい。天涯孤独だったようです。ただ…、この、身寄りも誰も…、と言うのは…。実は、今回の件が表沙汰となって、私たちも知り得た情報で…。それまでは、深く掘り下げてまでは…。」
海江田、2度程頷いて…。
葉子、
「そぅ…、ですか…。」
杏樹、
「続けさせて頂きます。」
隣で尚登、
「えっ…???…まだあるの…???」
コクリと杏樹。
「ただ…。ホテル経営をする前から彼女と交流を盛んにしていた人物がいたらしいんです。ホテル業界から姿を消しての数年は、その方と部屋をシェアしていたと…。」
海江田、
「ふんふん、な~~るほど、ルームシェアって言う奴ね~~。…って事は、生活には、結構、困っていた。」
都沢、
「投資に失敗してホテル経営からは身を引いた…。…って、どんだけの投資…???…想像付かねぇや。…これだけ…、奇麗なんですけどね~~。」
その声に向かいにいる紫、
「都沢~~。」
体を小さくして都沢、頭をペコリと。
「すんません。」
「いろいろと、あったんすね~~。川峯取締役。…けど、そんな…、投資で失敗したって言うのは…。僕なんか…、川峯さん見ていると、全然想像付かないんですけどね~~。」
尚登。
その声にいきなり海江田、
「えっ…???」
そして阿刀田に振り向いて…。
「えっ…???…そぅ…なんですか…???」
尚登、コクリと、
「えぇ。とにかく、物凄いっすよ。客には笑顔で…。困った客がいるとすぐさま。気付きが鋭いって言うか…。社員以上に気配りが…。」
その声に杏樹、
「常務が…、それ…、言います…???」
その声に尚登、頭を低く、そして右手を振って、
「いやいやいや。僕なんて、とても、とても…。…でね、聞く話によると、あの人がいるからこのホテル好きって。…くらいに…。お客様自身から聞いた話なんですけど…。そんな風に言われるって、嬉しいですよね~~。…それに、とにかく、このホテル、奇麗な女性が多い。」
瞬間、海江田、
「なるほど…。そぅ…言われてみれば…。」
都沢、笑いながら、
「うんうん。僕も最初っから、そんな風に、思ってましたよ。」
また紫、
「あのねぇ、都沢~~。」
尚登、
「社長だって、ねぇ~~、スラリと…。杏樹さんなんて…、美人アナウンサー。…いや…。美人…ピアニスト…。」
いきなり杏樹、
「常務~~。揶揄わないでくださ~い。」
そして、
「続けます。」
ツンとして。
尚登、そんな杏樹に、
「あっ。あ、はい。」
「そんな生活をしていての川峯取締役。ある飲食店で、ひとりの男性と偶然…、数年ぶりに…、会ってます。」
葉子、杏樹を見て、
「ひとりの男性…。数年振り…。」
杏樹、
「えぇ…。その方が、宮越耀司(みやこしようじ)さんと言う方で、弁護士をやっていらっしゃる方です。」
葉子、左手親指を顎に…、
「宮越耀司…、弁護士…。」
杏樹、4人に、
「その方と偶然に会い、そして、その時の生活ぶりやら…。数年ぶりにその方といろいろと話したそうです。そういう縁があって…。その宮越先生から、私の紹介で、日本で働いてみないかと…。その伝手で…。当ホテルに。」
海江田、いきなり体を起こして、
「そういう事か~~。合点。」
葉子、杏樹を見て、
「…と、言う事は…、もしかして…。…その、宮越先生って…、こちらの…???」
杏樹、顔をコクリと、
「えぇ。」
美琴、
「えぇ、そぅ。横浜トランキルマンヘブンズホテルの、顧問弁護士。…と、言うか…。」
美琴、4人を見て、
「あっ。そぅか~~。みなさんは、ご存じない…訳…よね~~。宮越先生。宮越耀司先生。このホテルの顧問弁護士でもあり、そして、百貨店扶桑の顧問弁護士でもあるんです。」
その話に海江田、目をパチクリと、
「えっ…???…うそ…???…じゃ~~。…と、言う事は…、前会長の天春宗謙の頃から…の…。」
海江田の声に美琴、
「えぇ。はい。そうなります。」
3人が一斉に、宮越耀司を検索。そして、4人が同時に、
「あっ、あった。」
けれども…。また、4人、
「…堀蔵(ほりくら)法律事務所、シニアパートナー。」
美琴、
「元々、天春前会長が堀蔵先生とは懇意にしてらして…。」
こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~ vol,088. 杏樹、続ける。
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