小野倉、そんな理沙に、
「瑞樹さん、バスケ、初めてなんだってね~~。おかあさんから聞いたけど…。」
理沙、小野倉に、
「はい。」
「今までは…???」
少しずつ息遣いも収まり、理沙、
「今までは…、中学で、剣道…。…んん。はぁ…。高校では…、バレーボールです。」
小野倉、
「へぇ~~。剣道…。凄いね。…で、今は、車椅子バスケ。」
理沙、
「はい。」
そして理沙、
「私…、事故でこんな体になっちゃって…。…でも…。」
チラリと将輝の顔を見るが、将輝は車椅子のメンバーたちに目が…。
「私の友達からの勧めもあって…。」
そして、ハッキリとした目で。
「私~~。性格的に…、動いていないと、嫌なんです。」
その言葉に和奏、思わず、
「ぷっ。」
その笑いに小野倉、
「えっ…???おかあさん…???」
和奏、少し可笑しがって、
「いえ。実は…、この子、子供の頃から、とにかく負けず嫌いで…。」
その声に小野倉、
「えへぇ~~。」
理沙、和奏からタオルを受け取って顔を拭く。
小野倉、
「負けず嫌い…かぁ~~。」
将輝、ボールをその場でバウンドさせて。数メートル離れたリンクにシュートを打つ真似。
そしてまた戻して、理沙の顔は見ずに、
「理沙さん、いい感じじゃん。」
その声に理沙、
「えっ…???」
将輝、その場でボールを使ってのフットワーク。
腰を低く、そしてドリブル。ボールを股の下、前から下から。小刻みに…。
それを見ていた小野倉、
「へぇ~~、やりますね~~。」
和奏、
「鴻上のポイントガード。凄いですよ、将輝君。」
小野倉、将輝に、
「ねね、ちょっと、シュートして見せてよ。」
その声に理沙がドキン。
将輝、
「えっ…???」
いきなり顔を明るく、
「いいんですか。」
「あぁ~~。今、そっちのコート、使用してないから、好きなだけ、いいよ。」
将輝、お辞儀をして、
「や~~り~~。あざっす。」
そして将輝、タンタンとボールをバウンドさせてコートのセンターまで。
そしてまたタンタンとドリブルしてスリーポイントラインに。
するとボールを顔の少し上に。そして頭の上に、右手が伸びる。
ボールは綺麗な放物線を描いて…。
リンクに吸い込まれるように…、ネットに、「ザシュッ。」
小野倉、
「おわっと~~。いきなりスリーポイント~~。」
その声に周りの車椅子の人たち、その男性に視線を…。
和奏、ニッコリと、
「ふふん。」
理沙も同じく、
「ふふん。」
将輝、リンクの下に。そしてドリブル。小さく一回りをしてジャンプ。
ネットが大きく揺れてボールはネットの中、一周したかのように、そして床に落ちる。
またそのボールを取って、今度はボールを好きな様に操って…。
その頃になると車椅子のメンバーは各々コートに近づいてくる。
将輝、小刻みのドリブルから素早くゴール手前でジャンプ。
シュート、かと見せ掛けて、今度は右の手から左の手にボールを、そしてバッグシュート。
瞬間、何処からともなく、
「凄ぇ~~~!!!!」
そして拍手。
将輝、今度はスリーポイントラインをドリブルしながら走り、
そこから全速力でゴールめがけて大きくジャンプ。
右手が真っすぐに伸びる。そのままボールをリンクに押し込む。
和奏、
「ナイス~~。イェイ。」
拍手。
その場がいきなり拍手で包まれる。
将輝、その拍手が初めて耳に入ったようで、
「えっ…???」
小野倉、
「かかかか、凄ぇ~じゃ~~ん。」
将輝、その声にいきなり照れながら、
「あっ…。」
頭を掻きながら、
「すいません。つい夢中になっちゃって。」
「大したもんだよ。」
けれども小野倉、
「えっ…???あれ…???…ってぇ~事は…。瑞樹さんの…友達って…、つまりは…、彼…の…、事…???」
その声に和奏、
「はい。」
それと同時に、理沙、
「いいえ。」
とは、言ったものの…。理沙、母親を見て、
「あっ。」
和奏、理沙を見て、思わず、
「ぷっ。」
理沙、瞬間、顔を赤らめて、
「あっ、いえ…。あ、はい。」
小野倉、思わずにっこりと、
「そっか~~。彼の影響か~~。バスケ~~。」
和奏、
「えぇ…。」
ニッコリと…。
理沙、そんな母親に、顔をグンニャリと。
小野倉、
「そうですか~~。」
そして、
「今日の、車椅子バスケの教室は、午前中で終わりなんです。もし良かったら、事務所の方で、日程と時間割、お渡しします。」
和奏、
「ありがとうございます。」
小野倉、理沙に、
「どぅ…???やれる…???」
その声に理沙、元気に、
「はい。」
そして、将輝を見て…。
信じて…良かった。 vol.107. 「私の友達からの勧めもあって…。」
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庄司紗千 きっと大丈夫
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