そんな理沙を見て流美、慌てて、
「あっ、ごめんなさい。私…つい…。…一番…。いえ…、整理…つかないのは…、理沙さんだもの。そんないきなり、こんな事…言われても…。」
一拍置いて、
「体は…、着いては来ないものです。」
そして…、
「時間は…、掛かるものです。…だから…。」
数秒の沈黙。
理沙、布団の上に両腕を…。そしてまた下を向いて…。
和奏、そんな理沙に、
「理沙…。」
理沙は黙ったままで…。
麗亜、悲しそうな顔をして…、
「お姉ちゃん…。」
流美、
「さっ、私たちはそろそろ…。」
麗亜の右肩に左手を…。そして将輝の左肩に右手を…。
将輝、まだわずかにしかめっ面のままで…。
流美、和奏と蒼介に小さくお辞儀を…。
蒼介、
「わざわざありがとうございます。」
椅子から立ち上がり…。
「理沙も…、もう少し、時間…、掛かるかな~~。」
和奏は、まだ下を向いている理沙を見ながら少し困惑して…。
病室の窓際で腕組みをしている栞奈、口をへの字にして…。
流美は将輝と麗亜を引き連れて病室のドアに…。
和奏は3人を見送る。
ドアが閉まる。
その瞬間、栞奈、
「ぷっ。」
そして、
「な~~に、だんまり、続けてんだか~~。おぃ、こら。」
そんな姉に理沙、いきなり、体を捻じ曲げて、枕を栞奈に、
「うるっさい、お姉ぇ。」
途端に蒼介、
「おぃおぃ。理沙~~。」
栞奈、
「…ったくもぅ~~。…もぅ…、大概、本音、言ったらどぅよ~~。負けず嫌いのあんたが…、いつまでも、ぷ~たれてる訳…ないっしょうが~~。」
その声に蒼介、
「えっ???…そうなの…、理沙…???…お姉ぇ…???」
「…って言うか、その証拠に、もらった本、捨ててないし…。」
枕を理沙の頭の後ろに、そして栞奈、
「とうさんは…、気づかなかった…???」
栞奈の声に蒼介、
「…???…えっ…???」
ドアが開いて和奏。
その前を栞奈、ぐるりと。オーバーテーブルの上の数冊の内の一冊。
「おっと、これ…。」
和奏、栞奈を見て、
「…???」
理沙に、
「何…???どしたの…???」
栞奈、父親に、
「はい。ここ。」
蒼介、そのページを見て、
「ん~~~???」
そして、
「わぁ~~~。ははははは~~。」
和奏、
「えっ…???」
蒼介、
「うんうんうん。いいんじゃな~~い~~。」
そして蒼介、その本を…。ページを開いたままで…、
「かあさん…。」
理沙の上を手渡しで一冊の本が、左から右に…。
和奏、
「ふん…???」
そして、ページを見て、
「車椅子…バスケ。」
和奏、瞬間、目を右左に…、
「…???」
けれども、すぐに、
「うそ…???…理沙…、あなた…。」
栞奈、ベッドをぐるりと、
「そゆこと~~。何々、この子が…いつまでも、ウジウジしてる訳、ないじゃ~~ん。考えても見てよ、この3週間、殆ど…、毎日よ、見舞いに来てくれてる、学校のみんな…。…担任の八倉先生だっけ…、沢村一樹に似てる先生。ここの看護師さんなんて、もぅ~~。人気の的になってるしぃ~~。」
和奏、それを聞いて、
「うそ…。」
栞奈、
「…ってか、ここの看護師に、物凄い、話しやすい看護師…いんのよ。看護師になって、まだ2年目…らしいけど…。」
蒼介、
「へぇ~~。」
その声に理沙も、
「えっ…???うそ。そうなの…???」
栞奈、
「ふん。」
ただ、顔を傾げて、
「そんな…、風には…、言ってたな~~。」
そして、
「それより、バレー部の子なんて、毎日、入れ代わり立ち代わり~、見舞い、来てるんでしょ。」
和奏、
「えっ…???そうなの…???」
「学校、終わってから、そして部活…終わってから…。…ん~~、だから、母さんがここにくる前には…、みんな…帰ってる…みたい…らしいけど…。」
蒼介、
「へぇ~~。そりゃ、知らなかった~~。」
「だから…。」
栞奈、
「みんな…、見てるんだよ、その本。」
蒼介、数回、頷いて、
「へぇ~~。」
和奏、
「…ん…???あっ。へぇ~~~。」
蒼介、
「何…、かあさん…???」
和奏ページを捲りながら、
「うん…。あの…、これ…もしかして…、私の…。考えすぎかなって…思うんだけど…。」
「うん。」
「なんか…凄い。ページの…端が…、少し…、依れてる…って言うか…、既に、新しい本ってイメージじゃ…。」
その声に蒼介、
「えっ…???」
そして他の本も…。
「わっ。」
理沙、
「みんな…、珍しいって、すぐに本に噛り付くし…。」
栞奈、途端に手を打って、
「かっかかかかか。」
信じて…良かった。 vol.026. 栞奈、「な~~に、だんまり、続けてんだか~~。おぃ、こら。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。