小説★決めた心は 沖縄に 3 | みみぴちがってみみぴいい

みみぴちがってみみぴいい

どってことない日常を どってことあることにする
ブログ

恋人からの連絡、メールと電話、どっちがいい? ブログネタ:恋人からの連絡、メールと電話、どっちがいい? 参加中
本文はここから



こちらの 続編となっとります  決めた心は沖縄に 1   2 






携帯の電池を外す。



もっと 早くこの勇気を出せばよかった。



むすびは 散歩途中に見つけた公園の がじゅまるの木の下で 深呼吸をした。



がじゅまるは 木の枝から 無数のひげを生やし 時間をかけて ひげを根にする。



枝から地面に向けて伸びた根は 地面を捕まえると 勢いよく地球を巻き込む。



枝は根の強さを信用してるのだろう。 上へ上へと枝も葉も 伸ばし続ける。 



空へ空へと伸びる がじゅまるの枝と 下へ下へと伸び続ける枝の間で



むすびは 自分の居場所を考え続けた。  






両親に大事の育てられたむすび。 人の心と心を結べる人間になるようにと 



祖母がつけてくれた 変わった名前の むすび。 名前のおかげで 友達の間でも



ちょっと風変わりなポジションにいた気がする。  むすびちっく と言われながら。





悲しそうな人を見ると 見過ごせなくて つい 声をかけてしまう。



名前の使命を果たすのが くせになったのかも しれない と時々思う。



城所が 悲しそうだったのは 生れたばかりの子供が 病気を持っていると



悲しんでいるときだった。 一人の娘として 生まれたてほやほやの父親を 励ましたかった。




その始まりが いつしか 男女の恋情になってしまったのは 運命でもなんでもない。




寂しかったからだわ。 彼もワタシも。  そう思える。






病弱な子供の母親として 突然 立ち上がってしまった妻との 家庭内の温度差に



苦しんでいた城所。 父親になりきれず くすぶり続けていた 喪失気味な自信に



むすびは 同情した。





むすびは イラストを描いて暮らしたいのに 夢で食べることから逃げ 社会と言う



現実に飛び込み 自分と未来のハザマで 立ち往生していた。



苦しんでいる城所の心と 苦しみさえ見ないようにしていた 自分の心を 結んでしまったのだ。






未来へ根を張る勇気より 目の前の苦しみから 逃れるために



見せかけの花を 咲かせることばかりに 時間と体力と気力を注いでたんだよな。



がじゅまるを眺めながら むすびは 半日かけて 城所との2年の時間を 昇華させていった。



心を縛りがちな 携帯が ホテルの部屋で バラバラになって 休息してると



思うだけで 心の底の濁りが 透き通るような気がした。




にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ
にほんブログ村


がじゅまるが 懐かしい 笑