小説★過去と夫と子供 6 | みみぴちがってみみぴいい

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『ここが一番 千奈美の条件にあってるかなーーー』


年上とはいえ 家庭の流れや動きの舵取りを 妻に譲ることが多い夫に


千奈美は 微笑んだ。


『いいよね。金額的にも ベストじゃない?』


開業医の小児科があり 救急病院があり 耳鼻科も産婦人科も車で15分以内にある。


公園があり 学校があり スーパーがある。


3人で暮らすのに 充分な面積と環境がある。


若かった千奈美が 笠原に見せられたN市とは 違う一面を浩輔に見せ付けられる生活。





笠原が常宿にしていた あのホテルも 店も 今の千奈美には必要がないのだ。


切なさより 安堵感が千奈美を包んだ。


悲しみより 愛おしさが 笠原に向けられた。






笠原の籠の中から出ようと決めたあの日の自分を 心の底から褒められる。


不器用で 無粋で 鈍感だけが際立って見えた浩輔が 頼もしく思える。


家族を捨て 自分を捨て 未来も過去も振り返らなかった両親へのわだかまりが


シャボン玉のように ふわふわと 舞い上がっていく気がする。





契約を交わしている夫を不動産屋の事務所に残し 千奈美はマリアと外に出た。


『マリア。 ママさー新しいお家で がんばれるかな?』


『がんばれるよハート


『ここでさ マリアは幼稚園行って 学校行って 大きくなるんだよ。』


『マリアは おねえちゃんになるんだよーーーLOVE

 ママと ずーーーーーといっしょね。 ずーーとよねキャハハ


もちろん!! そう答える代わりに マリアの小さな手を ぎゅっと握り締めた。


握り返された掌のエネルギーを 千奈美は全身に流し込んだ。



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あとがき


ワタシには 憧れの母親像 があるの。


甘さと 優しさを はき違えることなく 本当の愛を注いでいる母。


煩さ(うるささ)と 厳しさの区別が きっちりついた接し方をしてる母。


手塩にかけ 愛情で包みながら 母親として凛としている母。



今回 描きたかったのは そんな母です。


誰にだって 母になる前に いろんなことがあっただろう。


その自分を 全て飲み込んで 女としての情念を 子供に愛情として注ぎ続ける女。




同性として 尊敬してるんだ。


母親と言う仕事は 難しいことも 大変なことも 嫌になることもある。


それを ごくんと飲み込んで 『幸せハート』 って言い切れる母親を見かけると


惚れます。 そんな母親である女性を 描いたつもりです。