オカマ劇団に入団した 処女乙女 美紀のラブストーリーです。
気付くと シルビアの顔を じっと見ていた。
はっとして 眼を逸らすが 眼の焦点がシルビアの輪郭を捉えてしまう。
レイラが 続いた沈黙を破った。
『人ってさ、 時に 引き合うことがあるじゃない。 解る?美紀。
優しさに 共鳴した心と心なら 誰もがほっとする展開になるわよね。
それが たまたま 悲しみと共鳴しちゃったとする。 お互いの傷を労わりあう。
それが 同情だったり 身内への愛情だったりするのに 恋愛と勘違いすることも ある。』
美紀は はい と声に出して 返事をした。
慣れない仕事で疲れていたし 決して気楽とはいえない環境での夜明かしで 極限なほど
頭が冴え冴えとしていた。 その自分を確認したくて 声を出してみた。
『この子の兄貴の婚約者はさ、 不在がちで忙しがり屋の兄貴からの寂しさを
この子に求めちゃったのよ。 もちろんこの子は 応えてないわ。 でも 無視もできなかった。
そしたら 兄貴は 怒りと言う感情に犯されたのね。 もうね どうにもならなかったの。
健一自身に悪いとこだって たくさんあったのに そこには 眼を向けられなかった。
誰の意見も アドバイスも聞き入れることが 出来ないほどに 凶暴になっちゃったのよ。』
美紀は またシルビアを見つめていた。
タバコ吸ってくる と座っている居間から立ち上がり
キッチンの換気扇へ 消えていったシルビアに 美紀は悲しさの共鳴をしていると 動揺した。
このシンクロは きっと陽のエネルギーでは ないんだ。
もっと ポカポカの陽だまりみたいな 暖かい共鳴が シルビアを救えるのだろう。
けれど シルビア自身が その暖かさを求めていないことも 美紀には理解できた。
『あんたは 優しい子だわ、美紀。
なんでわかるかって? あら そういう顔して きょとーーんとしてるわよ。 間抜け面ね!
あのね 心って 隠してるかもしれないし 表に出そうとしてるかもしれないけど
感じるものなんだよね。 こう見て欲しい なんていうのは ニセモノだ。
でね オカマってのはね その辺の心の触覚が 鋭いやつが多いんだわ。
そのみんながあんたを受け入れてるんだってこと ちょっとは誇りに思ってよね。』
大人になってから 初めて 面と向かって賛美の言葉を与えられた美紀は
いつもより 頬が赤らんだが 心は素肌を絹のスカーフで包まれたように 心地がよかった。
『シルビアはね 兄貴への罪悪感やら 美弥って言う婚約者への責任感をさ
人一倍感じちゃう 優しい奴なのよ。 だから オカマの真似までして
自分の仕事の夢を犠牲にしてまで もぉさ こっちが 苦しくなるほど
責務を遂行してるわ。 だけどさ そろそろ この呪縛から 解き放ってやりたいのよ。』
レイラの苦しみも 美紀には理解できる気がした。
悲しすぎる兄弟愛を きっと 黙って見守ってきたのだろう。
言いたいことを ずっと堪えてきたのだろう。 そう思えた。
引っ張っておりますが そろそろ終盤です。
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