小説★突然の休み | みみぴちがってみみぴいい

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急に明日から10日間の休みを与えられたら? ブログネタ:急に明日から10日間の休みを与えられたら? 参加中
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『お前 停学??』


蓮が校長室から戻ると クラスの連中がわらわらと集まってきた。


『しらねーー。 学校始まって以来のことだから 決定できねーんだって。』


教室の空気が 膨張したようになり どっと 歓声が上がる。 



『ほんとのとこは どうなのよ?お前がやったの?』


『しらね。 ってか まぢこれ なに?』


蓮は 他の生徒に話をするな といわれたことを 忠実に守るか とため息を吐いた。


それくらいの約束は 守らないとな。 なんせ 俺がしでかしたんだもんな。






大学受験が終わり 受験生という立場から 新大学生 浪人生とに分れ


それぞれが 開放感に浸っていた。


期待に夢 膨らませる者。 終わりのない絶望感に浸る者。


それぞれが 一同に集まる教室は 博愛主義者の蓮にとって 地獄絵図のように見えた。


はしゃぐ奴らが キチガイに見え 沈む奴らが 被害妄想の旅人に・・・





あと数週間の我慢だ と思うのに 蓮はこの状況が いたたまれなかった。


その話を いとこのボタンに 電話で話した。


『そっかーーー ならさ 私が盛り上げてあげよう!!

 最後の思い出として 一肌ぬいぢゃろ。 いくぜ 蓮!!!』



ボタンは 10代の中頃からティーンモデルとして活躍し 今ではミュージシャンだった。


けして 美人ではないのに 人目を惹きつけるナニカ は新生児の頃からあったと


親戚たちは みな 自分が発掘した スカウトマンばりに 自慢しているが


ボタンにあるのは 美貌や魅力より 野心だった。 そして 行動力。




テレビの露出度も高い有名人に そんな暇はないだろうと 思っていたのは


蓮の失敗だった。 ボタンを甘く見すぎていた。





都内でも有数の進学校に 真っ赤な髪に染め 全身に流行を纏わりつけた女が


乱入してきたのは 電話で話した 翌日の昼休みだった。



来るなり 守衛と揉めたが 有能すぎるマネージャーが 通過を可能にした。


そして 校門をくぐり終えると ハンドマイクを取り出し




『れーーーーーーん どこだーーーーーー ボタンがきたぞーーーー』


と 叫びを上げた。


『大学 落っこちた奴ーー 来年があるぞーーーーー


 受かったやつーーーー 留年すんなーーーーーー


 蓮ーーーー お前 どこに受かったか 黙ってるけど なんでんだーーーー』




蓮の学校は 校門に向かって 凹型に 校舎が建っている。


その ど真ん中で 騒ぎまくるボタンの存在感は 一瞬にして 校内を興奮の坩堝(るつぼ)に


陥れた。 ざわめきが 嬌声に変わり始めると同時に ボタンに向かって 全校生徒が


走り出した。 誰もが テレビの取材だと思っていたに違いない。



スタッフや関係者に 止めてもらえると たかをくくったに違いない。 しかし これは



シナリオもなにもない あまりに 無防備な ボタンの悪戯だったのだ。


ボタンは 学生たちに取り囲まれながら もみくちゃにされた。


ハンドマイクを通して 『いたーーーーーーい ちがーーーう』 という声が届いたが


蓮は 助けにいくどころか 人の輪に 近づくことさえ できなかった。





校内放送が響き渡り さらに 避難訓練時のベルが鳴り響き 教師たちが


飛び出してきた。 誰かが 携帯のツイッターや ブログで書き込みをしたのだろう。



野次馬も ボタンの存在を知って 侵入していた。 フラッシュがたかれ ビデオカメラが回った。






ボタンは 靴のヒールを折ったことと その際に軽い捻挫をしたこと。


そして つけまつげが 外れたというのが 被害だと 校長室のソファーで笑っていた。



校長は ボタンに紅茶を出しながら 仕事のことなど話して 和んでいた。


呼び出された蓮は 


『お前 ばかだろ? なにしてんの?』 と 大好きな年上の従兄弟に 悪態をついた。


『今日を逃したら 時間が2ヶ月ないって言われたから 今日 実行したの。』


『何の実行だよ。』


『お楽しみ会』  ボタンが赤い髪をかきあげながら笑った。 


『楽しめた?』 蓮は 吹き出しそうになるのを堪えた。


大好きなボタンだが 無謀すぎるのだ。


渡るなら 石橋を叩いて欲しいのに 川の深さも見ずに 飛び込んで渡ろうとするボタンが


大好きなのだが 心配なのだ。


『太田さんもさ。ボタンを止めるのが仕事でしょう? なにやってんの?まぢで』


有能すぎて ボタンの夢を全て叶えている マネージャーの大田を 睨み付けた。




『だって 蓮が悪いんだよ。 大学どこ受けるかも言わないしさ どこ受かったかも


 内緒にしてるでしょ? こういうの 恋人って いえる?』



2人の話を 遮ろうとしていた校長の動きが ぴたりと止まった。


『幸い ここには 学校関係者が 私だけでしたから・・・ 黙ってますけどね。』


そうしてください。 と大田と蓮が 頭を下げた。





6時限目が終わったとき 担任から職員室に呼び出された。


校則もさほど 厳しくない。 古風なバンカラ気質が 根強くある学校なので


生徒と教師は 対立しているとも思わないのだが 職員室には 行きたくない。


足取り重く ドアをノックすると 数人の教師が 色紙を持って 立っていた。


目礼して それを受け取ってから 担任の前に行くと



『どうする? お前のことだから 処罰くらったほうが 楽だろ?』 と言った。


『まぁ そうですね。 今回の騒ぎの原因は 俺ですから』


『三日 ってとこか?』


『いや どうせなら 一週間。 相当 重い停学ですよね? それって』


学年主任が 笑いながら近づき 『2人の計算をあわせて 10日だ。』


と 肩を叩いた。


『お前のせいではない。だが 噂と 浮き足立った興奮を冷ますには 俺たちに時間が要る』


と。 蓮は 黙って頭を下げて 学年主任からも 色紙を受け取った。





ボタンの声が 聞こえてきそうだった。


『全員分 ただでサインするから 10日間 ずっと一緒にいて!!!』


それもいいかな と思いながら 蓮は教室に戻った。



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なんか コバルトシリーズとか 少女マンガみたいな ストーリーね 笑

明るくげんきなのにしよって思ったら こんなんなちゃったわん


これは まったく 経験を書いてません 笑