小説★朝と昼と夜の願い 3 | みみぴちがってみみぴいい

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予定外に連載してます。  できたら こちらから・・・


朝と昼と夜の願い 1     2   








その日以降 忍は夜 帰宅しなくなった。



朝になると マンションに戻り さくらが用意した朝食を取り 着替えをした。




帰宅しない理由を



『彼とは会っていない。結論が出せるまで どちらとも距離を置きたいから』



と話した忍は みるみる やつれていった。






さくらは 帰宅しない忍の心と身体を案じながら 相手の男性にも同情していた。



世界で一番 憎むべき相手だとも思うのに 心が近い存在 のような気がした。





愛する男性から 距離を取られて 同じ孤独を味わっている。



愛する男性を 愛で苦しめ どうにもならない結論を出させようとしている。



愛する男性を 手放せない同志なのに 譲り合うこともできない。


世界で一番 似ている魂を持つ 人間のような 奇妙な親近感・・・





さくらは 自分が女なのだと 身も心も女なのだと 自分自身に刻み付けたくて



通りすがりの男と 寝てみた。



肉体的快楽を味わえば 忍への執着が薄れるのだと 信じたかった。






それなのに 心が弾き出す答えは 女として忍に寄り添いたい自分 しか見つからなかった。



初めての男に抱かれながら 忍の筋肉や 忍の声



忍の愛撫の強弱を思い出そうとする自分に さくらは身体も心も 疲れ果てた。







ソファーに身体を横たえ 天井を眺めると 見慣れた部屋が 旅先のように思える。



この部屋は 愛の巣箱だと思っていた。



結婚と同時に購入した 3LDKのマンションで 平凡で穏やかな生活をするのだと。



それ以外のことは 考えたこともなかった。 だけど 現実は穏やかには進まない。





人が知らない 忍の魅力と欠点を発見しながら その全てに微笑んで暮らすのだと



思えていた自分を 取り戻すには どうすればいいのだろう。





そもそも 同性愛であることは 忍の欠点なのだろか。



それとも 単なる特長なのだろうか。



相手が男性であることは ショックなのだろうか 仕方ないことなのだろうか。



男と恋人と 女の妻を選択するとして 何を どこを 選ぶのだろか。



肉体的なこと? 性別的なこと? 性格や相性?



女であることが 自分の欠点だとしたら これから どうしたらいいの?







さくらは 抱えきれない苦しみを 友人知人に言うことも出来ず



三度目の情事を貪った 男にふと 洩らした。



夫の秘密を打ち明けたにもかかわらず その男に近づいたとも 思えず



痛んだ心を抱える 忍が恋しくなっただけだった。





さくらは 朝のひとときが 24時間で一番重要な時間だと 思い始めていた。



何も言わない忍。 何も聞けないさくら。






さくらは 自分の性格や生き方 外見やセンスに 強すぎる自信もなければ



抱きすぎる不安も不満もなかった。



だけど 恋をするたび 不安や自信喪失感は 過敏にたなびいた。



ところが 忍といると 不安も 喪失感も感じることなく いつも深呼吸をしていられたのだ。



親や兄弟といるより 忍といる方が 心の開放感と安心感を得られた。







その大切な相手を苦しめているのが 自分自身なのかと思うだけで 辛かった。



忍を 苦しみから救い出したかった。







『ねえ 私 今日 区役所に行ってこようかと思うんだけど。』



離婚届を示唆して さくらは忍を見つめた。



私にカミングアウトしただけで 充分 苦しんだのだ。もう 解放してあげたい。



『いや それは ダメだ。 ダメなんだ。』



忍が 振り向きざまにさくらの腕を掴んだ。





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