小説★朝と昼と夜の願い 1 | みみぴちがってみみぴいい

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朝、昼、夜、もっと長ければいいと思うのは? ブログネタ:朝、昼、夜、もっと長ければいいと思うのは? 参加中
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携帯のアラームが鳴り響った。


6時か。 ベッドの左側を 手で探るが さくらのぬくもりさえ すでになかった。


主婦の一日が早いことを さくらと出会って知った健太は


ため息混じりに ベッドの上でタバコに火をつけた。




昨夜のさくらの官能の声を思い出しながら 朝の欲望を開放したが


まだ 燻ったような感覚が 下半身に残っていることに いらだった。

たった たった半年 出会うのが早ければ さくらを自分だけの存在にできたのに。


結婚して半年で 破綻する運命だと さくらに伝えられたのに。


せめて 夜のしじまが あと5時間あったら・・・


そう願わずにいられなかった。





マンションの駐車場入り口からこっそり入り さくらは自室の鍵を差し込んだ。


玄関から伝わるニュアンスは 昨日の夕方から何も変わってない。


夫である忍は やはり 帰宅してないのだろう。


もう 知ってるのだから 話してくれてもいいのに。


私との結婚が 同性愛であることへのカモフラージュだったと


両親にさえ 説明してくれたら 全て解決するのに。


それでも 忍の妻でいられる喜びは偽物ではない と知っていた。


忍の妻でいられる 昼の時間が生み出す陶酔感。


そうすれば 夜の孤独を紛らわすための情事など 必要ないのに・・・







忍は シティホテルのモーニングコールで目を覚ましてから 脱いだばかりの


スーツに袖を通し 自宅へと向かった。


着替えに帰ると 自分に言い訳を繰り返しながら さくらの顔を見に行きたいのだ。


さくらを愛してる気持ちに 変わりはないというのに 


さくら同じくらいに愛している同性の存在を さくらに話してしまった


自分の弱さを呪った。


黙っているつらさから逃げ さくらに苦しみを肩代わりさせてるのだ。


何も聞かないさくらに 何も言わない自分。


さくらの聡明さに甘え 自分の罪を忘れられる 朝のひとときだけが


忍の心が休息するときだった。


卑怯な自分を さくらの苦しみで消せる朝。 


時が止まり カプセルに鍵をかけ 二人でどこかに消えてしまえたらいいのに。


さくらといるときの自分が 一番好きだと どう説明したらいいのか


考えあぐねながら マンションの鍵を回した。