薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第36話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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第1話はこちらから → 



このお話に関してはまだ目次がないので、
遡って読まれたい方はお手数ですが、
ブログのテーマ別から選択して読んでやってくださいm(_ _ )m





いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。















うっすらと目を開けば、視界には少しはだけられた着物が入った。



『抱きしめられてる…?』


鼻を擽るのは愛おしい者の匂い。

柔らかな体温に包まれている。


ゆっくりと視線を上げれば、規則正しく寝息を立てる沖田の顔があった。

冴の口元に微かに笑みが零れる。


緩やかに手を動かし、そっと沖田の頬に手をあてる。

微かに動いた長い睫。


次第に開かれた瞳に冴が写る。



「冴…」


掠れた声が耳に届いた。


「…おはよ」

沖田は冴の言葉に眉根を寄せ、くしゃりと顔を歪めながら笑みを零した。


「おはよ。どれだけ寝てるの?待ちくたびれたよ」


「そか…。ごめん」

眉根を寄せ、沖田の言葉にか細い声で応える冴。


沖田は頬に触れていた冴の手を取り、指を絡ませる。


冴に顔を近づけ、そっと唇を寄せた。


触れる部分から伝わる温もりに安堵し、冴の瞳から涙が零れた。



「…おかえり」


「ただいま」

沖田がこつんと額と額を当て、はにかんだように笑う二人。


冴を抱き寄せ、確かめるように抱き合う。




「…私、かなり寝てたよね?」


「そうだね」


「…どれくらい?」


「五日…だね」


「五日も?!」

冴の驚きの表情に沖田はふわりと笑みを浮かべる。


「ずっと…傍にいてくれたの?」


「ずっとではないよ。最初は土方さんに離れるよう命令されてたから」


「そう…なんだ」


「でも冴が僕を呼んだから。それからはずっと傍にいた」


「そ…か。…あ…、隊務は?」


「冴のことが気になって隊務どころじゃないよ」


「…一番組組長なのに」


「いいの。冴の傍にいたかったし、土方さんだって許可してくれたんだから」


「そう、なんだ」

沖田の大きな手が優しく頭を撫でるのがくすぐったく思え、冴の口元に笑みが零れる。


その表情にいとおしむように目を細め、啄ばむように軽い口付けを何度も落とした沖田。





「まだこうやっていたいけど、冴が目覚めたって報告しに行かなきゃね」


「私が副長室に行こうか?」


「いいよ。きっとふらつくだろうし。待ってて、すぐ戻ってくるから」

改めて見つめあい、沖田は眉根を寄せる。


「本当に良かった。冴を失ったら僕は…」

沖田のその切なげな表情を和らげたいと冴は笑みを向けた。


「総司。私はここにいるから。土方さん、呼んできて?」


「うん。…待ってて」


「うん、待ってる」

沖田がはらりと冴の頬にかかってきた髪を優しく耳にかける。


互いに微笑みあう二人。


そっと布団を抜け出した沖田は廊下に出、障子戸を閉める前に冴に視線を向ける。

目を細め、静かに頷いた冴に沖田も頷き返し、そっと障子を閉めた。


廊下の足音が遠のいていく。




冴は沖田の残した温もりに浸りつつも、視線を部屋に泳がせる。



『今は…朝方ではなさそう。夕刻、かな』

揺らめく行灯の火の動きを見やる。


『…五日、かぁ。随分と長いこと眠っていたんだな』

一つ大きく息を吐く。


『身体が気だるい…。五日も寝てたら身体がなまってそう』

天井を見上げながら腕を天井に向けて伸ばし、手を閉じたり開いたりして動きを確かめる。



『…そういえば…傷はどうなってるんだろ』

寝間着の上から刺された腹部にそっと手をやる。


『あれ…、深い傷だったはずなのに…。………痛みが、ない』

思考が上手く追いつかない。


『…包帯すら巻かれていない…』

布団の中で寝間着を肌蹴させ、直接手で傷を探す。


『…ない。…ない。…どうして?』

ガバッと上体を起こし、かけ布団を捲り、身体を行灯の揺れる光の方に向け、寝間着を開いた。


『…どう、して?』

柔らかな橙色に照らされる冴の裸。滑らかなその肌には傷など見る影もなかった。


冴の背中に冷たいものが走る。



『どういう、こと?…私は確かにあの時刺されて…あれは夢?いや、そんなことはない』


記憶を手繰り寄せながらも、自問自答していく冴。



廊下から複数の足音が聞こえた冴は我に返り、急いで寝間着を整え布団の上で姿勢を整えた。





「冴、入るよ」

障子戸が開き、沖田に続いて土方、斎藤、山崎が部屋に入ってきた。

表情を探られまいと冴は俯いた。


「寝てればよかったのに」

隣に腰を下ろした沖田の言葉にふるふると俯いたまま首を横に振った。





山崎が冴の隣に腰を下ろし、脈を計る。


「どこか痛みだったりありますか?」


「…頭がぼんやりする…。気だるい感じ」


「そう、ですか。今は目覚めたばかりだからでしょう。きっとそのうち気にならなくなるかと」


「…そか」

冴は視線を誰とも合わせることなく、過ぎる不安に胸を痛ませた。