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待っていただいてた方、お待たせしすぎて申し訳ありませんm(_ _ )m
最後まで書いてからアップし始めようと思ってはいたのですが、
諸々の事情によりアップを開始しようと思います。
いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
『一、行かないで…』
「殺さ、…ない、で…」
駆け出した背中に搾り出した声は届かない。
伸ばした手も届かない。
崩れ落ちていく私を抱えて、
軽く揺さぶられながら、
今にも泣きそうな顔をしながら私の名を叫んでいる総司が見えた。
山崎くんが真剣な表情で声をかけてくる。
応えたいけど、上手く声が出ない。
お腹の辺りが生暖かく感じる。
総司の歪んでいく表情に
「嗚呼、もうダメなんだ」
そう思った。
ふわりと身体が浮き上がり、総司に抱えられていることを知る。
その総司の着物を掴みたかったけど、上手く力が入らない。
ぎゅっと抱えられ、少しでも振動を私に伝えまいとしてくれる総司。
ずっと掛けられている声が段々と遠くに聞こえていく。
ああ、総司。
私、死ぬのかな?
迷惑かけてごめんね?
こんな死に方、するとは思わなかったな。
人間いつ死ぬかわからないものだね。
沢山の人を殺めた罰だね。
皆、ありがとう。
近藤さん、最期までご迷惑掛けてすみませんでした。
総司、ありがとう。
…愛してくれて、ありがとう。
視界に微かに映る総司に、
私は笑えただろうか。
瞼が重く、
もう上げることが出来ない。
ああ、真っ暗だ。
闇、だね。
どれだけの時間が経ったのか、
ふわりと身体が浮かされた気がした。
何かが喉元を通った刹那、目の前が紅くなる。
何かの衝撃が身体を貫いたような痛み。
身体が、熱い。
沸騰するように、熱い。
震える身体を両腕で抱きしめる。
身体が軋む音を聞いた。
血液がドクンドクンと跳ねるのを感じる。
何だろう。
自分の身体が自分じゃないみたい。
ねぇ、総司。
熱い…。
ねぇ、総司。
怖いよ…。
ねぇ、総司。
…総司…っ!!!
冴に変若水を与えてから、二日が過ぎようとしていた。
斎藤は目の前で眠る冴に微かに反応があったように思い、冴を注視した。
やはり微かな震えを感じ、同じく部屋にいた山崎に視線を移せば、山崎も斎藤と視線を合わせ、静かに頷いた。
「副長に報告してきます」
「ああ、頼む」
山崎が障子戸を開け、静かに閉める。
山崎が気持ち足早にその場を去ると、再び静けさを取り戻す部屋。
「…っ」
微かに冴の口から何かが発せられ、斎藤はそれに耳を傾ける。
「そ…」
「…」
「そ…じ…」
『総司か…』
斎藤の脳裏には、別室で飲まず食わずで冴が目覚めるのを待ち続けている沖田の姿が過ぎる。
何度も微かに呼ばれるその名。
『…総司を呼びに行ったほうがいいか…。いや、もうすぐ山崎が副長を連れて戻ってくるはず。その時に指示を仰ぐか…』
「…そ…じ…」
震えながらも何かにすがるように布団の中からゆっくりと出てきた冴の手。
空を掴むように、何かを探すように伸ばされていく手を斎藤は両手で包んだ。
不意に手の震えが止む。
「…忠司。…俺だ、わかるか?」
「…」
うっすらと開かれる瞳。
その瞳は斎藤を捕らえず、空を彷徨っていた。
「…」
何も言葉を発することなく斎藤は冴を見守っていた。
すると冴の目尻から一筋の紅い雫が流れた。
刹那、冴の手を包んでいた斎藤の左手にとてつもない力が加えられる。
「なっ…っつ!!!」
目を見張れば冴の手が斎藤の手をとてつもない力で握り締めている。
尋常ではないその力に斎藤は自身の骨が軋む音を聞いた。
『これが…羅刹の力なのかっ!』
「忠司、離してくれ!…忠司っ!頼む!!」
あまりの痛みに顔が歪み、額に冷たい汗が伝う。
「ぐっ…!」
『このままでは、折られてしまう…っ!』
冴の表情に視線を移せば、目からは幾筋もの紅い雫が零れていた。
みるみると白くなっていく髪に斎藤は息を飲んだ。
『狂ってしまったか…っ!!』
左手の痛みに顔を歪めながらも、右手で脇差を抜こうと手をかけた刹那。
「ぃやぁぁあああああああああああああーーーーーっ!!!!!」
耳を劈くような声で冴が叫んだ。
見開かれた瞳は紅く光る。
その声を聞き、部屋に駆けつける足音。
ゆらりと上体を起こす冴を痛みに顔を歪めながらも睨む斎藤。
白い髪が冴の白い横顔にはらりと滑る。
『これは狂っているのか…?!もう、殺すしかないのかっ!!』
スパンと開けられた障子戸。
そこには冴を見、目を見開いて息を飲む沖田がいた。
冴の口端から紅い雫が零れる。
冴の紅い瞳はゆっくりと沖田を捕らえ、声にならない声で「そ…じ」と零した。
途端、沖田は弾かれたように冴の元に身を寄せ、きつくきつく抱き寄せた。
「冴、冴、冴…っ!!」
腕の中に冴を閉じ込め、何度も耳元で名を呼ぶ沖田。
斎藤の手を砕かんとばかりに加えられていた力が不意に止まり、ゆっくりと抜けていく。
遅れてやってきた者たちも、部屋にいた斎藤も静かに二人を見守った。
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こんな感じで始まりました~。
『君の名を呼ぶ』第2部。
とりあえず遅筆なので、溜めてた分をアップ出来ればいいなと思ってます。
どうぞ、変わらず拙いですが、お付き合いください。
みふゆ