このお話は私のミスで飛ばしてしまっていたお話となりますm(_ _ )m
外せない話となりますので、アップさせていただきます。
もうね、師走にお話のラストスパートをかけようとしちゃいけないんだなと反省。
でも年内に終わらせる。
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ややこしいことをしてしまって申し訳ないですm(_ _ )m
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いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
お勝手にいた冴と千鶴のところに藤堂が駆け寄る。
「おい、忠司、千鶴!今夜は奢りで島原だってさ。行こうぜ!」
「お前そういうとこ、行かないもんな。酒は呑めなくても料理は中々のもんだ。一度行ってみないか?」
後ろから来た原田もにこやかに冴を促す。
その言葉に冴の顔は曇りがちになる。
「ん…。いいや、私は屯所にいるよ。華やかなとこ苦手だし」
「じゃあ、私も…」
冴の言葉を聞いた千鶴もやんわりと断ろうとする。
「千鶴ちゃんは行っておいで。折角なんだし」
「そう…ですか?」
笑顔で促す冴に千鶴は眉を上げる。
「そうだよ。私は屯所警護があるから。土方さんも皆がいるなら外出許可出してくれるし」
「…じゃあ、行ってきます」
「うん」
照れくさそうに笑顔を零す千鶴に冴も笑顔で応える。
「忠司も行こうぜ~」
「ううん、行かない」
「連れねーよな、忠司」
きっぱりと否定した冴に拗ねたような藤堂は口を尖らせた。
夕刻、廊下で会った沖田と冴。
「…行かないの?」
「うん」
「じゃあ僕も…」
「総司は行っておいでよ」
冴はにこやかに沖田を促す。
「どうして?」
「たまには美味しいお酒呑んで、美味しい料理食べておいでよ。身体にもきっといいし」
うんうんと頷く冴に沖田は眉を寄せて言葉を零す。
「冴、どうしていかないの?」
「…きっと…芸妓さんも付いたりするんでしょ?…。…嫌なの」
自分の気持ちを見透かされたような気がして、少し羞恥を感じながら沖田に応える。
その言葉にクスリと笑う沖田。
「…そか。じゃあ今度二人で美味しい蕎麦屋でも行こうか」
「…うん、それなら行く。総司は優しいね」
口元に笑みを浮かべ、沖田を見上げる冴。
「冴?僕は冴が好きだよ」
「ありがと。私の事は気にせず…ね」
「なるべく早く帰ってくるから」
「だからゆっくりで…」
軽く眉根を寄せる冴の言葉を遮るように左頬を右手で包む。
「早く帰ってきて冴を抱きたい」
「…ん。じゃあ待ってる」
冴は目を伏せ、その沖田の手に顔寄せた。
沖田と別れ、その後姿を見送る。
『華やかな着物を着た芸妓さんに憧れちゃいそうだし…。
皆、鼻の下とか伸ばしてるのかなぁ…。何よりも総司が他の女の人と話すのが嫌なんだろうな…。
私ってこんな嫉妬深い女だったんだ…。やだやだ』
冴は一つ、溜め息を吐いた。
皆が島原に向かった後、冴は広間で静かに井上と夕餉を取っていた。
「…本当に行かなくてよかったのかい?」
「源さんこそ行かなくてよかったんです?」
井上の言葉に眉を上げたものの、クスリと笑って応える。
「何かあったのかい?」
「…何か自分でヤだなと思って」
静かに茶碗と箸を置く冴。
「芸妓さんとか綺麗な人とか着物に憧れちゃいそうで。…でも綺麗な着物なんて私には似合わないから」
軽く苦笑いを浮かべて井上を見つめる。
その表情を見た井上は申し訳なさそうに言葉を零した。
「…年頃の娘なのに苦労をかけてしまっているね」
「そんなことないですよ!この新撰組に身を置くことを決めたのは自分ですから」
静かに首を横に振り、自分に言い聞かせるように吐いた言葉に頷いた。
そんな冴を眩しそうに見つめた井上。
「…総司の隣で白無垢を着る君は綺麗だと思うよ?」
「…っ!源さん…」
思わぬ井上の言葉に途端に顔を赤らめ、俯いた冴。
井上はそんな冴をにこやかに見つめた。
「失礼します!!」
スパンと開けられた戸の向こうには焦りの色を浮かべた山崎がいた。
「どうしたの、山崎くん」
「報告します。羅刹になったうちの7名が暴れています!」
「っ!」
部屋に一瞬にして緊張が走る。
眉間に皺を寄せた冴は口を開く。
「山南さんは?」
「ご無事です。今はお一人で食い止めようと戦われています」
山崎の言葉に頷く井上と冴。
「松原くんはここにいなさい」
立ち上がる井上に冴もすぐさま立ち上がる。
「いえ、行きます。止めないと…。山崎君、伊東さんは?」
「外出されています」
「よかった。じゃあ行きましょう」
三人は視線を合わせ、頷く。
「山崎くんは島原の皆に報告を。松原君、無理はするな」
「はい!」
井上の言葉に力強く頷いた山崎と冴。
暗闇の中、井上と冴は急いで暴れている場所へと向かう。
近づくにつれて奇声や物を壊す音が近くなる。
2体の羅刹は既に心臓を刺され、その場に倒れていた。
刀を握りつつも、フラフラと立っている山南に駆け寄る。
「山南さん!」
「大丈夫ですか?」
「すみません。この人数大丈夫かと思ったんですが、何分吸血衝動で力が倍増されてますから…っ!」
眉間に皺を寄せる羅刹状態の山南。
その様に息を飲む冴。
羅刹が3人を見つけゆったりと身体を向ける。
「「血をぉ…、血を…寄こせぇ…」」
「「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」」
狂った声と奇声が耳を劈くように辺りに響く。
眉間に皺を寄せ、奥歯をグッと噛んだ冴。
素早く抜刀し、山南に飛び掛ってきた羅刹に山南を庇うように間に入る。
「くっ…!!!」
『強い…っ!!!』
鍔迫り合いでギリギリと押される冴。
白髪と赤い瞳の羅刹を睨みつける。
羅刹は口から涎を垂れ流しながら嬉々として冴に力を押し付ける。
『…っ!!!この人は…10番隊にいた…』
見開いた冴は無意識に力を弱めた。
羅刹がグッと冴を押しつける。
「…っ!」
『意識が…戻るなら…早く戻ってきて!!!』
そんな冴に怒号が飛ぶ。
「松原君っ!迷うな!心臓をっ!!」
井上の言葉に冴は更に奥歯を噛み締めた。
『駄目だ…やらなきゃ…やられる』
額から流れる汗が頬を伝う。
羅刹は変わらず狂喜の表情を浮かべ、冴に力を加えていく。
「ごめんなさい!!恨むなら…」
『…恨むなら…誰を…恨めば…いいの?』
自分の零した言葉に息を飲む冴。
「恨むなら…私を…恨んで?」
冴の目の端から雫が零れた。
力を流して、体勢を崩した羅刹に心臓に向けて後ろから刀を突き刺した。
倒れた羅刹を肩で息をしながら放心した状態で見下ろす冴。
「松原くん!後ろっ!!」
「…っ!!!」
山南の言葉に咄嗟に後ろを振り返れば、襲い掛かる羅刹の間に井上が入り、冴を庇う。
「大丈夫か!!」
「源さんっ!」
「残りを…頼む!」
食い止めながら声を絞る井上。
「…はいっ!!」
頷いた冴は残る羅刹の元に駆け出した。
静けさを取り戻した屯所内。
山南と井上、冴は辺りを見回す。
「終わりましたね」
「ああ」
山南の言葉に応える井上。
「松原くん?」
「…は、はい!」
井上の言葉にビクっと身体を震わせた冴。
着物に血を大量に浴びて佇む冴を見やる。
「随分と派手に浴びてしまったね。着替えておいで?」
「…はい」
冴は小さく頷きその場を後にした。
『羅刹とは言え…、仲間を…殺した…』
廊下を歩きながら眉根をきつく寄せ、目を固く閉じた。
部屋で着替え終えた時、廊下を駆けてくる足音が耳に届く。
「冴?!」
「総司?」
障子戸をスパンと開け放ち、冴に駆け寄り抱きしめる。
「……怪我、ない?」
少し息を切らせながら、冴の首元に顔を埋める沖田。
「…うん、ないよ」
冴は沖田から伝わる温もりに強張っていた身体がほぐれていくのを感じた。
「…よかった」
「急いで戻ってきてくれたの?」
沖田の顔を見ようと顔を上げれば沖田も顔を上げ、冴を見つめる。
「…うん」
「ありがと」
眉根を寄せながらも笑みを浮かべた冴は耳を沖田の胸に押し付け、その心地いい音を聞く。
沖田の身体が強張り、咳き込む。
冴は背中に手を伸ばし、その背を撫でた。
落ち着いた沖田は冴に優しく微笑み、唇に口付けを落とした。
「…土方さん、帰ってきた?」
沖田に髪を梳られながら、沖田に問う冴。
「うん、そろそろ着いてるはずだよ」
「…じゃあ、報告に行かなきゃ。総司は休んでて?後で部屋に行くから」
「わかった」
沖田は名残惜しそうに冴を腕の中から解放した。
土方の部屋で報告をする井上と冴。
井上が事の詳細を説明した。
土方が視線を移し、冴を見やる。
「松原、報告は以上か」
「…はい」
「どうかしたのか」
「…いえ」
静かに首を振る冴。
「…疲れたか。部屋に戻って休め」
「…失礼します」
頭を下げた冴は静かに部屋を出た。
沖田の部屋に向かっていると帰ってきていた原田と藤堂に出会う。
「忠司じゃねぇか。羅刹が暴れたんだってな。怪我なかったか?」
「…はい」
原田の問いに静かに応えた冴。
「忠司なら大丈夫だって!それよりさ~、忠司!千鶴が島原で上等な女物の着物着せてもらってさ!
すっげぇ可愛かったんだよ!また忠司も行って、着せてもらお…」
「…」
冴が切なげに眉根を寄せて藤堂の話を聞いていた時。
「いってぇえええええ!!!何すんだよ!左之さんっ!!!」
藤堂の耳をぐっと引っ張る原田。途端に叫ぶ藤堂。
「忠司、引き止めて悪かったな。疲れてそうだし、部屋に戻って休めよ」
原田の言葉に口元に笑みを浮かべた冴は、小さく頷き立ち去った。
「いってぇって!!左之さん!!!」
左之を睨みつけながら耳を触る藤堂。
耳から手を離した原田は軽く藤堂の頭に拳を置く。
「馬鹿野郎。…もっと気ぃ遣ってやれ」
「はぁ?」
藤堂が原田を見上げれば、原田は冴の後姿を見送っていた。
藤堂もつられるように視線を冴に向ける。
「…アイツが羅刹を斬ったのは初めてだ。…ましてや、仲間に手を下したのも初めてだ」
「あ…」
藤堂はその事実に息を飲んだ。
「あいつは強いが…脆いんだよ。お前が思ってる以上にな」
藤堂を見下ろした原田は踵を返し、歩みを進めた。